●第4回定例会 中村しんご区議の一般質問  2002.11
【目次】
1、区民の暮らしと中小企業支援について
2、「児童館・学童保育クラブの再構築指針案」について
3、大気汚染問題について

【答弁】

 日本共産党葛飾区議団を代表して、区政一般質問を行います。
 はじめに、区民の暮らしと中小企業支援についてであります。
 区長の冒頭あいさつでも、11月の月例経済報告が、景気の現状について、1年ぶりに下方修正したと述べまられました。いま日本経済は「景気腰折れ」に転ずる可能性が高まっています。
 東京商工リサーチによる区内の企業倒産件数は、昨年83件でしたが、今年は9月時点ですでに70件、このままの推移では昨年を超えることも予想されます。
 葛飾民商の経営実態調査では、売上が5割り以上も減っている業者が18.8%、3割減が32.9%など、深刻であります。  
 もとより景気対策は、国政での取り組みが決定的であります。しかし、自治体としても最大限の対策を講じて行くべきです。
 区長は、先程「多数の中小零細企業の集中する本区にとって、実に厳しい経済基調である」と強調されました。しかし、残念ながらどのように区として打開するのか、「具体的方策」は示されませんでした。
 これは、今回だけではなく、今年の6月議会でも、9月議会でも、全く、中小企業振興策の表明をされていないのであります。
 区が現在行っている施策で良いとお考えなのでしょうか。
 経済は生き物であり、その時々の諸情勢や中小業者の置かれている事態も直視して、適時適切な実効ある手だてを打つことが不可欠だと思います。
 まず、国政に対する対応であります。
 国民と中小企業に「激痛」を押し付ける小泉流「構造改革」は重大です。
 医療、介護、年金など、3兆円もの負担増、配偶者特別控除などの廃止・縮小、消費税の免税点の引き下げ、外形標準課税の検討などの増税路線、そして、「不良債権処理」の名による中小企業つぶし政策であります。
 これら国民と中小企業に「激痛」を押し付ける国の悪政の転換を、まず要求すべきだと思いますがいかがでしょうか。
 国の金融政策についても、明確にモノを言うべきです。中小業者のまち葛飾の声が国政に届いていないからであります。
 小泉内閣の強引な不良債権処理によって、中小企業への金融の道は、ますます狭められ、苦境に立たされています。とりわけ金融検査マニュアルによって、都市銀行による金利引き上げや貸しはがし、貸し渋りなど目に余る事態が起こっています。
 東京商工会議所の調査では、金利引き上げでは6割の企業がそのような要求をされたとされ、そのうち75%が都市銀行によるものだというのです。
 そして、金融庁による信金・信組つぶしです。
 破たん信金・信組の大部分は、譲渡先となる「受け皿」金融機関に営業が引き継がれますが、しかし、きちんと返済を行なっていても、赤字経営が続いていたり、返済が少しでも過去に遅れがあった借り手は、整理回収機構に送られて、強引な回収が迫られ、倒産に追い込まれる事態になっています。
 そこで、区としても、区内金融機関による金利引き上げや貸し渋り、貸しはがしの実態をまず調査すべきと思いますがいかがですか。
 金融政策に対しては、行政も議会も区内産業界と一緒になって、以下の点について改善を求める必要があります。
@銀行に公共的責任を果たさせ、中小企業への貸し渋り、貸しはがしを直ちにやめさせ、貸出を緊急かつ意識的に増やさせること。
A借り手の中小企業が、たとえ債務超過や赤字であったとしても、まじめに返済を続けている限り、整理回収機構に送らず、「受け皿」金融機関に引き継がせること。
B信用保証協会の保証のついた自治体の制度融資には、積極的に応じさせること。
C中小企業融資を拡大するために、信用保証協会の基金の上積みなど必要な支援を求めるとともに、経営危機に陥った中小業者にたいする信用保証協会の「セーフティネット保証」制度を、実態に即した利用しやすい内容と運用に改めさせること。
 以上ですが答弁を求めます。
 さて、こうしたもとで、自治体の資金融資は、極めて重要です。
 その第一は、不況対策緊急資金の本人負担利率の引き下げです。
 各区が同趣旨の制度を実施していますが、本区の本人負担利率は0.7%であり、わが区より本人利率が低いところは、いまや多数派となっております。
 千代田区の0,1%をはじめ、中央区の他2区が0,2%、港区の他3区が0,3%などすでに16区が本区よりも低利で実施しており、本区でも、本人負担利率の引下げに踏み切るべきです。いかがですか。
 第二は、「直貸しの融資」の実施であります。
 緊急資金融資などの制度融資は、融資決定までに、2?3ヶ月かかり、急場に間に合いません。また、信用保証協会の保証を受けられない中小企業の資金が途絶えています。江戸川区は、これらの解決のために区が金融機関に損失補償をしたうえで融資を保証する「景気対策資金融資」を創設して成果をあげています。
 本区でも、区が直接貸付ける「直貸し融資制度」をつくるべきです。答弁を求めます。
 第三に、東京都がこの年末に向けて2000億円の借換制度やつなぎ融資制度を実施しましたが、この制度の活用のためにも区としての利率上乗せ措置なども実施すべきと思いますがいかがですか。
 さて、深刻な不況のなかで、本区としては、何をなすべきでしょうか。
 わが党は、これまでに繰り返し「不況対策本部」を設置することを求めてきましたが、今こそ、野党の提案でも良いものは良いと実行してはいかがでしょうか。
 例えば、中央区では、本年10月1日、区長を本部長に「地域経済活性化」のための「景気対策本部」を設置し、本格的事業を開始しました。対策本部の設置について次のように述べています。「商工業のまちとして発展してきた本区にとて、いきいきとした事業者の活力はまさに生命線といえる。長引く景気の低迷の中で、・・・区民生活にも深刻な影響が出ている。こうした現在の状況から脱却し本区の活力を取り戻すために、景気回復対策本部を設置する」「全庁あげて、新たな発想のもとに区としての地域経済活性化に向けた施策の充実や国、東京都などに対する提言や働きかけを総合的、多面的に検討」し、「都心から全国に景気回復のうねりをつくり出す」という意気込みであります。
 そして、融資の大幅拡充、実態調査や共通買い物券の追加発行や中小企業の受注拡大、国や都へに対して、減税や金融対策などであります。
 区長、本区でもこういう意気込みで、不況打開のための総合的、全庁的取り組みを「不況対策本部」を設置すべきではありませんか。
 中小企業問題の最後に、悉皆調査ついて伺います。
 わが党が再三求めてきた区内事業所の悉皆調査が、ようやくの実施することになりました。その調査方法は、緊急地域雇用交付金を使って、委託するようであります。しかし、この際、区幹部職員も積極的に入って実施すべきだと考えます。
 区としての全庁的中小企業振興策を講じるには、区幹部職員などの意識改革が必要であります。自治体が何故、区内中小企業を支援しなければならないのか、幹部職員が現場にでかけて行って、経営者の話を聞き、自らの目で見、肌で感じて把握する。このことが、葛飾に相応しい生きた政策に発展し、そして、産業振興だけでなく、例えば、保健所行政でも、中小企業の経営者とその従業員の健康をどのように向上させるのかの新たな視点が生まれるでしょうし、学校教育で言えば、区内産業を子どもたちのどう伝えて行くかなどの問題意識にもなり、区役所行政の隅々まで、中小企業支援のための施策検討が広がるのであります。
 墨田区や東大阪市など、優れた産業振興策を展開をしている自治体では、幹部職員を先頭にした地道な訪問調査が基本になって、その後、その自治体にあった産業振興策が策定され前進しているのであります。
 区長、今こそ、悉皆調査は幹部職員を先頭に本格的に行なうべきではありませんか、その決意を伺います。

 次に、「児童館・学童保育クラブの再構築指針案」についてです。   
 今日、少子・高齢化、核家族化、共働き家庭が増加する中、また、学校5日制をはじめとする教育諸制度の改編や子どもたちを取り巻く社会環境の大きな変化の中で、ますます子どもに対する施策の充実が求められています。
 先程、区長は挨拶のなかで、「再構築指針案」について、「子どもの居場所や遊び場のより一層の充実を目指す」と言われましたが、この指針案は、葛飾の児童福祉の全面改悪であり子育て支援に逆行するものです。
 第一に、行政責任の放棄という点です。
 指針案では、児童館18ケ所、学童保育クラブで38ケ所の民間委託・民営化を打ち出しました。これは、子どもの健全育成にまでコスト論にもとづく効率性や競争性を持ち込む重大問題であります。
 児童福祉法の第2条は、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」と公的責任を明記しています。この法の趣旨を達成のためには、子どもの健全育成の諸事業が継続的にかつ安定的に行なわれなければなりません。ところが、これが民間委託、民営化になると、この「継続性」と「安定性」が危ぶまれるのであります。
 介護保険と同じように、儲かる事業はやるが、儲らないと、事業の「継続性」とか「安定性」などはお構いなしで撤退することになりかねません。かつて、区内でも、民間学童保育が一方的に閉鎖してしまった実例が2ケ所もあるではありませんか。
 児童館や学童保育は、事業の「継続性」と「安定性」が保障されなければ、子どもたちはその場所を自分の居場所として安心して過ごすことはできませんし、指導員や仲間達など、人と人との関わりあいも豊かにはなっていきません。
 第二は、学童保育の法制化に逆行していることです。
 東京の学童保育は、全国の先進を歩んできました。即ち、国としての制度がない中で、革新都政のもと、都独自の施策として出発して、充実・発展してきました。
 葛飾では1955年に、青戸地域の父母たちによる共同保育、青戸学童保育の会の運動からはじまり、この取り組みが全都的運動になり、1969年の指導員の非常勤化が実現し、1972年には児童館事業の一貫として位置付けられて、指導員の常勤化が実現しました。 そして、1975年に区長公選制に合わせて、区に移管され、東京の学童保育の充実が、全国に波及し、遂に、1998年、待望の学童保育の法制化となったのであります。
 その後、全国的には、父母による共同保育などが公設公営へと広がっています。
 まさに、児童館、学童保育の民間委託、民営化は、この法制化に至る歴史的発展に逆行したものであり、児童福祉の後退であります。直ちに撤回を求めます。
 第三は、学童保育の非常勤化などを打ち出していることです。
 指針案には、「今後、区立学童保育クラブの効果的・効率的運営を図っていくには、正規職員の配置・運営に捕われることなく運営していくことが必要」と書かれています。
 これは、午前中の業務をなくし非常勤の対応で行なうという乱暴なやり方であります。
 この方向は、これまでの区の主張と矛盾するものであります。
 1997年6月に学童保育職員をめぐる監査請求がありました。
 区は同年の8月に、「葛飾区職員措置請求監査結果」という文書を出しました。
 その中で、学童保育の業務などについて、次のように述べています。
 「事務関係業務は、措置状況報告の作成、間食費の清算、前鍍金の清算など・・・午前中だけで処理するのは困難である。また、学童保育クラブは、健全育成の役割も担っている。そのためには、児童が飽きることのないよういろいろな行事を適時設定し、しかも、毎回趣向を凝らしていかなければならない。したがって、時間をかけての周到な行事準備が必要となり、行事前日の児童が帰宅した後の作業が多くなる。」と午前中の準備では足りなく超過勤務の必要性まで強調しているのであります。そして、学童保育の運営時における常勤指導員の必要性も強調しているのであります。
 このように、児童館や学童保育クラブは、子どもたちに魅力を与えるための時間的保障や専門的知識が求められるものであり、そのためには、指導員の身分・雇用が安定していることが必要で、安易な非常勤化は行なうべきではありません。答弁を求めます。
 加えて、公立の学童保育の非常勤化は、民間の学童保育の運営にも及ぶのではないですか。そうなれば、葛飾の児童福祉全体の水準を引き下げることになるではありませんか。あわせて、答弁を求めます。
 いま、最優先して取り組むべき課題は、学童保育不足のために児童定数を上回って入所させている過密解消策であり、土曜保育の実施であります。直ちに、学童保育クラブの増設の計画をたて、土曜保育を実施すべきです。いかがですか。
 第三は、学校開放型児童健全育成モデル事業についてであります。
 指針案は、学校開放事業が学童保育事業と「共通性」があるとして、整理・統合するとしていることは問題であります。
 学童保育は、言うまでもなく働く父母の就労と子どもの放課後の生活を保障するための施設であり、学校開放モデル事業とは全く異なる事業であります。
 大体、この学校開放モデル事業を開始する際、「学童保育とは性格が異なる事業である」と明言したではありませんか。
 川崎市では、いま、この異なる事業の統合を巡って大問題になっていると報じられています。厚生労働省からは、この川崎市の統合事業は、「学童保育事業の国庫補助金の対象にはならない」として、申請取り下げの指導をしていると言うのです。
 本区でも、同じようなことを強行するのですか。子どもたちの健全育成に逆行した学童保育と学校開放モデル事業の統合の構想は撤回すべきです。
 第4に、区民への説明責任の問題です。
 この指針案は児童館、学童保育クラブの根幹に係わる問題であり、自治体としての説明責任のもとに、区民参加による説明会や意見聴取を、時間も保障し、民主的なルールにもとづいて行なうべきであります。
 区民への説明はと言えば、広報で保育時間延長などみんなが同意できる面だけを紹介するのみで、意見聴取の期間も半月で、一番心配されている民営化などについては全く触れられていない不十分なものです。
 11月中に指針を策定することは撤回して、時間をかけて、区民の意見をよく聴き、実施にあたっても、区民の合意ですすめることを求めますがいかがでしょうか。
 最後に、学童保育の来年度募集についてです。
 来年4月から民営化を強行するために、学童保育の募集が一方的に延期されています。
 新一年生になる子どもたちも保護者も胸をふくらませています。しかし、いっさい説明がないままです。
 民営化となれば指導員が全員替わること、保育方針も変わるなど重大なことです。民営化問題を理由に募集を遅らせることは不当なことです。
 今すぐ、来年度の学童保育クラブの募集を行なうとともに、父母や関係者に十分な説明を行ない、意見を聞くべきであります。答弁を求めます。

 次に、大気汚染問題について質問します。
 さる10月29日、東京大気汚染裁判の判決が東京地方裁判所で言い渡されました。
 私にとりましては、誠に感慨深いものがあります。ちょうど1年前、この問題の請願が厚生委員会で審議され、私に懲罰問題がふりかかったからであります。
 判決は、私の主張と数多くの一致点がありました。
 第一に、大気汚染の原因について、ディーゼル車などの排気ガスが健康被害者をつくり出したと、尼崎、名古屋などに続いて5度目の断罪を下しました。
 そして、国や首都高速道路公団、東京都に、損害賠償支払を命じたのであります。
 第二は、未認定被害者に対する救済を支持したことです。
 1988年に、「日本の公害は終わった」として、公害健康保障法にもとづく新規認定を打ち切りましたが、これが全く不当なことであると断罪しました。 
 第三に、自動車メーカーの責任問題です。
 自動車メーカー7社への損害賠償は退けられましたが、メーカーに対して1973年には大気汚染被害を予見できたと指摘し、社会的責任を明確にしました。
 本訴訟の原告団には、約40名の葛飾区民も加わっております。私は、この歴史的な判決を原告の皆さんとともに東京地裁前で待ち、勝訴の旗を目の当たりにした時は、目頭が熱くなり、体が震ました。
 6年前からはじまった本訴訟では、原告団518名のうち57名が亡くなっており、早急な解決が求められています。
 ところが、国、首都高速道路公団は控訴するという暴挙にでました。
 そこで、区長に伺います。この判決をどう評価をされているか。そして、ディーゼル車などの排ガスが、健康被害を生み出したという認識をお持ちでしょうか。
 また、被害者救済制度の確立のために国、都などに実効ある行動をとるべきと思いますがいかがですか。
 都は控訴断念しました。これは当然の決断です。
 従って、都は加害者として、被害者に対して真摯に償いをすべきであります。
 ところが、都は、判決後の原告団との面会の際、原告・被害者に対する謝罪拒否、未認定の救済は自ら実施しない、そして、大気汚染をひどくする三環状道路の建設促進をすすめるなど、加害者としての自覚が欠如しています。
 都に対し、三環状道路建設をはじめとする道路行政の抜本的な見直しを求めるべきと思いますがいかがですか。
 その一方で、都は国の規制に先駆けて、ディーゼル車規制にのりだています。
 しかし、排ガス減少装置を付けるのに数十万円から百数十万円の費用がかかり、ユーザーに大きな負担をかけるものです。今、中小運送業者をはじめ、ディーゼル車を所有する業者から悲鳴があがっています。深刻な不況が続くなか、運送会社などは激しいダンピング競争が続き、ギリギリの経営であり、この規制によって、倒産に追い込まれかねないという状況にあるのです。
 私は、国とメーカーの責任で規制される全ての車両に排ガス減少装置装着の全責任を負わせるべきと考えます。
 都に対して、除去装置の設置補助制度・融資斡旋の改善を求めるとともに、財源確保のために、区としても、東京都と協力し、自動車メーカーに対して費用負担の追及をすべきと思うがどうか。
 さて、本区として大気汚染から区民を守るため、最大限の取り組みを実施すべきです。
 その第一は、大気の観測体制の強化であります。
 判決では、損害賠償の対象を首都高、大型幹線道路沿道の50メートル以内限定しましたが、東京の大気汚染は、この沿線だけでなく面的に広がっていることは明白です。
 本区の大気環境測定は、水元、都の測定局の二ケ所、排気ガスの測定局は、たつみ、新宿、堀切、この三ケ所は浮遊粒子状物質(SPM)が調査対象にしていません。 
 大気環境測定、自動車排出ガス測定局を増やし、すべての測定局でSPMも調査項目に加えるべきと思うがどうか。
 第二に、区の幹線道路建設の見直しです。
 判決では、公害被害者を生み出す道路行政の在り方が断罪されました。自動車中心の道路をつくればつくるほど、排ガスが増えるのは当然です。
 区の都市計画道路も見直すべきではありませんか。
 第三に、区としての有害物質除去装置の支援策です。
 経済産業省は「排ガス除去装置に一部補助や低利の融資を行うことを検討」と表明し、都も補助制度、融資斡旋を実施するとしていますが、補助は一部に過ぎません。
 しかも、国や都の補助、融資はいずれも3.5トン以下の車両は除外されています。
 国や都の「除去装置の補助や低利の融資」を実施する際、3.5トン以下の車両も対象にするよう求めるとともに、区独自の補助、融資制度を新設する必要があると思いますがいかがでしょうか。
中村議員の一般質問に対する答弁
(区長答弁)
 中村議員の御質問にお答えをいたします。
 はじめに、中小企業支援についてお答えいたします。
 先ほども申し上げましたが、区内の中小企業をとり巻く経営環境は、長期にわたる日本経済の落ち込みによって大変厳しい状況にございます。
 こうした状況を踏まえまして、区といたしましても、先はど石井議員のご質問にお答えいたしましたとおり、中小企業の厳しい資金繰りを助けるため、平成13年度には2度にわたり特別不況対策資金融資を実施いたしましたが、平成14年度には、不況対策融資に借換制度を導入するなど、中小企業融資の充実に努めているところでございます。
 また、受発注の増大や新たな販路を拡大するため、見本市への出展助成や受発注情報交換会を開催するなど、販路拡大支援事業を実施し、区内、区外からの受発注の増大を図っております。
 さらに、技術開発支援といたしましては、新技術・新製品開発助成や技術改善試験検査委託費助成など、自社製品の付加価値を高め、他の企業と競合できるモノづくりへの支援の充実にも努めているところでございます。
 今後の対応策とては、知的財産権確保のための特許権取得支援、新産業に取り組む起業家へのSOHO事業、さらには信用保証協会の保証の必要のない国民金融公庫の経営改善資金融資の利子一部助成、製造業データベースの充実を図るための企業情報の収集など、新たな産業振興策を検討しているところでございます。
 今後とも、区内の産業振興につきましては、産業関係者や議会の意見をお聞きするとともに、企業経営の状況や景気の動向を把握して、適時、適切に対応してまいりたいと考えております。  
 つぎに東京大気汚染裁判判決の評価およびディーゼル車の排出する有害物質と健康被害についてのご質問にお答えいたします。
 判決は主要・幹線道路の50メートルの範囲内で自動車の排気ガスとぜん息等の疾病との因果関係を認め、都や国の道路設置管理責任を認めました。区はこれまで窒素酸化物や粒子状物質などの大気汚染の元凶の大半が自動車などの移動発生源によるものであるとの認識をもって、窒素酸化物や粒子状物質を削減するためにディーゼル車を含めた自動車公害対策の充実・強化を図るように、毎年区長会を通じて国に要望して来たところでございます。今後とも国に対して、今回の判決を重く受け止めて自動車公害対策の充実強化を図るよう要望してまいりたいと考えております。その他の御質問につきましては、所管の部長より答弁いたさせます。

(地域振興部長)
 次に、中小企業を対象とした悉皆調査についてございますが、国の緊急地域雇用創出特別補助事業を活用し、委託により企業概要や所有する機械設備などの情報を収集いたしまして、製造業データベースの充実を図ることを目的に、現在、検討を進めているところでございます。
 区幹部職員による区内中小企業の実態把握につきましては、産業関係者との振興会議や懇談会を通して企業経営の現状を聞くとともに、必要に応じて区内中小企業を訪問し経営の現状把握に努めているところでございまして、区幹部職員による悉皆調査への参加は考えておりません。
 次に金融政策の変換要求に関する御質問でございますが、現在、国では、経済を活性化するため、不良債権処理、デフレ対策など、様々な対策が進められており、今後の推移を注意深く見守ってまいりたいと考えております。
 つぎに、貸し渋り、貸しはがしに対する実態調査を実施すべきではないかとのご質問でございますが、区が実施している制度融貸をあっせんする際や経営相談などで、中小企業診断士が面接指導を行っており、そうした中で、貸し渋りや貸しはがしなども含めて、実態把握に努めるとともに、その実態を踏まえ特別不況融資など必要な事業を行っているところでございます。従いまして、現在のところ、改めて実態調査をする考えはございません。
 次に、金融政策に対しまして国に働きかけるべきとのことですが、8月に特別区長会を通じて国・都に対し、中小企業に向けて円滑な資金供給が行われるよう、金融機関等への指導・監督並びに支援の強化を講じられたいとの要望を行い、借り手の中小企業に対する適切な対応が図られるよう働きかけたところでございます。また、銀行に対して、信用保証協会の保証の付いた自治体の制度融資につきましては、十分に実施されておるものと認識しております。さらに、セーフティネット保証の十分な保証枠の確保及び中小企業金融安定化特別保証に係る借入金の償還について、返済企業の実情を把握し柔軟に対応することについても区長会を通じて要望しているところでございます。
 また、不況対策緊急資金の本人負担率につきましては、一般融資の2.0%に比べ低率で実施しておりますので、引き続き現状の0.7%で実施してまいります。なお、直貸し融資につきましては、万一の場合に区の予算から直接金融機関に損失補償する制度なので、区のリスク負担が大きいなど、課題も多く、実施する考えはございません。
 都の融資制度に利率上乗せ措置についてですが、区でも本年度から借換制度を実施しており、都の融資制度の利率上乗せ措置は考えておりませんが、両制度を区内企業が必要に応じて活用できるよう窓口等でPRに努めてまいりたいと考えております。
 次に、「不況対策本部」の設置についてお答えいたします。
 これまでも、区内の経営状況を見極め、昨年度2度にわたり特別不況対策資金融資を実施するとともに、本年度も引き続き借り替え融資制度を導入するなど、不況打開に向けた事業に適時、適切に取組んでいます。
 今後とも関係業界との会議等から的確な情報を集め、経済状況の変化を機敏に捉え、知的財産権確保のための特許権取得支緩事業や小規模事業者を対象とした経営改善資金融資の利子一部助成など、必要な事業についても新たに検討してまいりたいと考えております。
 従いまして、当面、不況対策本部を設置する考えはございません。以上でございます。

(子育て支援部長)
 児童館・学童保育クラブ再構築指針素案に対するご質問にお答えいたします。  
 まず、児童館・学童保育クラブの運営体制及び運営主体についてでございますが、今後、児童館及び学童保育クラブ事業を充実させていくためには、事業の展開や指導時間等を踏まえた効果的かつ効率的な運営体制を構築することが不可欠であると認識しております。そのためには、常勤職員だけでなく、非常勤職員等を活用した運営体制を図っていくことが必要であると考えております。この考え方は、民設民営の運営主体に対する補助要綱の職員配置基準においても、同様の方針でございます。
 また、運営主体につきましても、児童館及び学童保育クラブの機能や事業展開を踏まえて、公営にこだわることなく、より適切な運営主体を選択することにより、子どもの居場・遊び場づくりや子育て家庭への支援の充実を図ってまいりたいと考えております。
 次に、学童保育クラブの増設及び土曜保育の実施並びに学童保育事業と学校開放型児童健全育成モデル事業との関係についてのご質問にお答えします。       
  
 学童保育クラブにつきましては、現行の定員を勘案しますと、地域的には待機児が発生しているところもあり、一方では、現行の定員を大きく下回っているところもございます。
 今後、児童館、学童保育クラブ及び学校開放型児童健全育成モデル事業につきましては、「子どもの居場所、遊び場を積極的に提供していく」という機能の共通性に着目したうえで、それぞれの事業の再構築を図っていくことが必要であると考えており、その再構築が図れるまでの間につきましては、現行の学童保育クラブに対する区民の需要に適切に応えていく必要があると考えております。
 具体的には、児童の健全育成を図るという事業の目的を十分に踏まえ、施設規模や出席児童数等を勘案して、真に必要な地域に対しては、このたび補正予算を提案しておりますとおり、学童保育クラブを増設することなどにより対応してまいりたいと考えております。
 また、土曜日の学童保育クラブ事業につきましては、「子どもの居場所づくりの充実に向けて(素案)」にお示ししましたとおり、既存の児童館及び学童保育クラブ事業の再構築を図ったうえで、実施に向けて対応してまいりたいと考えております。
 次に、平成15年度の区立学童保育クラブの募集についてのご質問にお答えします。
 区立学童保育クラブにつきましては、「子どもの居場所づくりの充実に向けて(素案)」において、「最適な運営主体を選択していく。」との考え方を示しているところでございます。
 したがいまして、平成15年度の入会児童の募集につきましては、素案の方向性が一定程度明確になった時点で募集をしたいと考え、平成15年1月14日から1月31日までを募集期間としたものでございます。
 なお、募集期間は例年よりも遅れることになりますが、入会の決定につきましては、例年どおりの時期に行ってまいります。
 この募集期間変更の周知でございますが、公・私立保育園及び公・私立幼稚園の各卒園生につきましては、各施設の長を通じてお知らせするとともに、広報紙にも掲載し周知してまいります。       
 最後に区民の合意についてですが、「子どもの居場所づくりの充実に向けて」の素案について、現在、広く区民に対してご意見をいただいているところでございます。
 今後、いただいたご意見を踏まえて、区としての取組方針を決定するとともに、可能なものは15年度から取り組んでまいります。その際には議会にご報告するとともに、具体的な事業の推進にあたっては、利用者等のご意見を伺ってまいりますので、この再構築の案の取組みを撤回する考えはございません。以上でございます。

(葛飾保健所長答弁)    
 未認定公害被害者救済制度の確立に向けた行動をとるべきとのご意見についてお答えします。
 公害健康被害補償制度については、都市型複合大気汚染の現状に適合したものを設けて、健康被害者の保護及び救済の充実を図るべきであり、環境行政の後退につながることのないように引き続き努力するよう国に要望して参りたいと考えております。以上でございます。 

(建設部長答弁)
 都に対し道路行政の抜本的な見直しを迫るべきとのご質問にお答えいたします。
 都市における道路整備の促進は、防災の強化、生活の向上、環境の改善、経済の活性化など極めて重要かつ多様な役割を担っております。
 東京都のデータによりますと、幹線道路を整備することで、渋滞が綾和され、自動車の排出ガスによる大気汚染物質量を、大きく削減できるとされております。
 また、三環状道路については、放射道路を相互に接続し、都心方向に集中する交通を適切に分散させるとともに、都心に起終点を持たない交通をバイパスさせる役割を担っており、必要な事業であると考えております。
 この様なことから、現在区としては、東京都に対し、「道路行政の抜本的な見直し」を求めて行くことは考えておりませんが、国や都の実施する環境対策などに、積極的に協力してまいりたいと考えております。
 次に、区の都市計画道路建設を見直すべきとのご質問にお答えいたします。
 本区は、住工が混在した木造密集地域が多数存在するなど、災害に対して脆弱な都市構造となっております。また、都市計画道路の整備の遅れから、区内各所では慢性的な交通渋滞が発生し、生活道路への車の進入など、様々な問題が生じております。
 このことから、都市計画マスタープランでは、国、都が担う主要幹線道路、区が担う地域幹線道路や生活幹線道路などと道路を役割ごとに区分し、地域格差のない道路網の形成を段階的に進めていくことを目標としております。
 本区としては、この役割に応じて地域に密着した道路整備を進めているところであります。
 今後とも区民のご理解とご協力を得ながら、一歩一歩着実に都市計画道路の整備に努めて参りたいと考えております。以上でございます。

(環境部長)
 大気汚染問題についてのご質問にお答えいたします。まず初めに、東京都及び国の助成制度についてでございます。 
 本区は、東京都に対し、特別区長会を通して、現在都が行なっている粒子状物質減少装置の装着等に係る助成制度については来年度も引き続き実施するとともに、内容の充を図ること、及び低公害車の導入に係る融資あっせん制度については、更なる充実を図ることを要請しております。
 また、合わせて、低公害車の導入や粒子状物質減少装置の装着に係る助成措置について、国に更なる拡充を図るよう要請することを都に要望しております。
 次に、区独自の排出ガス除去装置への一部補助や低利の融資制度の新設についてでございますが、来年度予算編成作業の中で検討してまいりたいと考えております。
 次に、自動車メーカーに対する費用負担の追及についてお答えいたします。
 東京都は、ディーゼル車の排出ガス規制に当たり、自動車メーカーに対して、規制適合車や粒子状物質減少装置の供給拡大を要請しております。
 今回の「東京大気汚染訴訟」第一審判決におきましては、自動車メーカーの責任は認められておりませんが、区としましては、今後の裁判の動向を注視しながら、東京都とともに自動車メーカーの費用負担について研究してまいりたいと考えております。
 次に、大気環境測定、自動車排出ガス測定局の増設と、すべての測定局でのSPM(浮遊粒子状物質)の調査についてお答えいたします。
 区では、現在、一般環境大気測定局を1カ所、自動車排出ガス測定局を3カ所設置しております。また、東京都も、区内に、一般環境大気測定局を2カ所、自動車排出ガス測定局を1カ所設置しており、定期的に相互の測定結果を交換し、大気汚染状況の把握に努めております。
 SPMにつきましては、区が1カ所、都が3カ所の測定局で測定を行なっておりますが、区では、こうした測定体制を補完するものとして大気環境測定車を導入し、環七をはじめ首都高速道路、蔵前橋通り等主要幹線道路沿道において定期的にSPMの測定を行なっております。
 また、国土交通省におきましても、水戸街道沿いの2カ所に測定局の設置を計画しており、この2カ所の測定局でも、SPMの測定が予定されております。
 区内の大気汚染の状況については、これらの測定体制により十分把握できますので、区の測定局を増設する必要性はないと考えております。また、区の測定局でのSPMの調査につきましては、国や都の測定局の配置状況を踏まえ、今後、区の大気環境測定車及び測定局のあり方、配置等を見直す中で検討してまいりたいと考えております。以上です。