●第1回定例会 渡辺好枝区議の一般質問 2005 |
【目次】 1、学校給食の民間委託について 2、保育所について 3、マンション問題について 私は、先の通告にしたがい、区政一般質問を行ないます。 まず、学校給食の民間委託についてであります。 区教育委員会は、1月13日の文教委員会に、「17年4月から300食未満の小規模校から学校給食調理業務の民間委託を実施していく」と突然発表しました。はたして経済的効率だけで、学校給食の民間委託を押し進めてよいのでしょか。 第一に、学校給食は何のためにあるのでしょうか。 いうまでもなく学校給食は、子どもたちの心身の発達期にバランスのとれた栄養豊かな食事を提供することにより、健康の増進と体位の向上を目的に教育の一環として実施されてきました。「学校給食法」では、義務教育諸学校の設置者が、自らの責任において学校給食を実施することを義務付け、児童・生徒の心と体の健康を作っていくことを国や行政の果たす役割として明確にしています。自治体がその責任を放棄し調理部門を民間の会社に任せてしまうということは、自治体の姿勢が大きく問われます。 第二に、民間委託は、何をもたらすかという問題です。 民間委託の最大の動機は、コストの削減であります。学校給食を自校方式で行なう場合、食材の購入等は、委託されませんから給食を調理する作業のみの委託となり、つまり、人件費の削減が目的となります。 民間営利企業は、コストを下げるために人件費を徹底して削減するために、熟練した労働者が排除され、不安定なパート、アルバイトを最大限導入し、そのうえ、利益をあげようとします。 そのしわ寄せは、働く人々にもたらされ、そして、子どもたちにも及び、その結果、最良の学校給食はとても望めるものではありません。 実際、ある区では、委託料の引き下げを求めた際、一部の学校では、人件費の節約のため、パートの数が減らされたり、働く日数がすくなくなり、収入が減って暮していけないということでやめる作業員が続出したとのことです。 また民間委託は、コスト削減どころかコスト増になりかねません。 委託を請け負った企業の要請にしたがって、年々委託料が高くなっていくからであります。このことは、民間委託を実施している各地の自治体で起こっていることです。 同じ企業でも入っている学校によって食単価がまちまちで、小規模校ほど一人当りの食単価が高くなっている実情もあります。 しかも、民間委託が次々と進んで全校民間委託化になりますと、委託会社に支払う委託料を財政難を理由に削減することになります。足立区では2年間に10%カットしました。 その結果委託会社側は、さっそく、「野菜は手切りから機械切りに変更」「ドロつき野菜は使わないでほしい」「献立の組み合わせを考慮してほしい」など区教委を通じて栄養職員に要求してきたと言います。また、実際に調理員の人数を減らし、献立の組み合わせに配慮せざる学校もでてきたということです。 第三に、民間委託で栄養職員の職責がはたせるのかという問題です。 子どもの肥満・生活習慣病・アレルギーなどの増加するなかで、子どもの健康を守るために食に関する専門知識の発揮の必要性が、いっそう高まっています。栄養職員が食に関して、また「教育としての学校給食」を押し進める中心的役割を果たしていくことが以前ににもまして期待されています。 しかし、民間委託になると、栄養職員が直接の指導や指示、工程を管理することができません。何故なら職業安定法第44条の法律に違反することになります。これでは栄養職員の職務の本来の役割が果たせなくなってしまいます。 さて、委託するまでの間の直営校の調理業務の体制も新たな問題となっています。 委託校でない学校が委託化になるまでの間は、現行の体制で行なうというのが文教委員会での説明でした。 ところが、文教委員会の説明とは異なり、直営校の調理業務の体制を正規職員2名から1名に削減し、非常勤職員の組み合わせで、この4月から試行として10校で行なうと言うのです。 いつ、どこで、そうした事が決められたのか、議会には全く報告すらありませんし、説明が違うではありませんか。 現行の非常勤職員との組み合わせの試行体制の検証すら行なわれていないのに、朝令暮改のごとく突如こんな方針は絶対に認められません。 この根底にあるのは、安く上がれば、「何でもあり」という、およそ学校給食を向上させようという意欲の欠如でしかないといわなければなりません。 そこで質問いたします。 第1に、学校給食が定める子どもの心身の発達を保障するという教育としての学校給食を実現するために、自治体の責任において、実施されるべきであります。自治体がその責任を放棄し、民間に任せてしまう民間委託化は撤回すべきと思うがどうか。 第2に、民間委託になると栄養職員が直接の指導や指示、工程を管理するなど、栄養職員本来の役割が果たせなくなると思うがどうか。 第3に、直営校の正規職員を2名から1名に削減し、非常勤職員との組み合わせで、この4月から試行として10校で行なうと言うが、現場の実態から見ても逆行するものであり、撤回すべきと思うがどうか。 次に、保育所について質問します。 2005年度予算案では、認可保育園2園が設置されますが、待機児対策として、わが党も一貫して要求していたものであり、歓迎するものです。 しかし、その運営については問題があります。これまで認可保育園の運営主体は、直営か、営利を目的としない社会福祉法人が運営してきました。 その事が葛飾区の保育の質を維持し、高める力となっていました。 ところが、来年度設置する認可保育園の内、旧小谷野小学校内に設置する「小谷野しょうぶ保育園」は、本区で始めて営利企業に運営をまかせるというもので極めて重大であります。しかも、この営利企業の親会社は、自ら全国展開している予備校の宣伝で「不当表示」をして公正取引委員会から排除命令がだされていた企業です。こうした営利企業に大事な認可保育園をまかせてよいのでしょうか。 契約にも問題があります。 ある社会福祉法人の理事長は、「この条件ではとても参入できない」となげいていました。このプロポーザルは、最初から企業参入に道を開くためだったのではありませんか。 この「小谷野しょうぶ保育園」は、看板は公立保育園でありながら、中身は営利企業にまかせる、看板にいつわりありです。 営利企業が参入することで保育所は2つの点で大きく変化をします。 第一に、保育士の雇用形態の変化です。企業である以上、収益を求めます。 そのためには人件費の削減が不可欠です。 人件費の削減は、職員を正規職員から非正規職員へ置き換える事によって進められます。このことによって保育士の専門性が十分発揮できなくなるという変化です。ですから徹底したマニュアル保育になります。 ある企業では、送り迎えの時の親との対話を重視しています。 要するに子どもための保育についてではなく、親からの評価をどう高めるかという所にマニュアルの中心があります。 マニュアル通りに子どもが育つほど単純とは思いません。子育てには専門的な知識・経験が不可欠なのです。 福島大学の大宮勇雄先生は、ある保育専門誌の中で、アメリカ等の研究成果を紹介すると、『安定した保育士から、質の高い保育を受けた子どもたちの発達は知的にも、社会的にも、言語的にも良好であった』と紹介しています。 保育は人件費削減や、効率性を対象としては成り立たないものだと言う事を示しています。 第二に、市場原理の導入でもたらされる変化です。 営利企業参入をすすめるためには、さらに保育料の自由な設定、運営費の使途を限定しない、利用者との直接契約などすすめ、企業の利益を保障する方向に突きすすまざるを得ません。 この方向は、東京都がすすめている認証保育所制度への移行をすすめると同時に認可保育園制度を根底から崩すものに他なりません。 現在、区は公立保育園の運営について「支弁経費内の運営」という事をさかんに言っています。 これは結局、企業参入をすすめるための口実ではありませんか。 区は「支弁経費内の運営」をすすめるための試案を作っているようですが、これを見ますと正規の保育士は現在の半分にし、あとは非常勤に代えるものとなっています。 まさに保育士の専門性を否定し、安上がりの保育行政に質的に後退させるもので、自治体として自殺行為だと言わなければなりません。 今、公立保育園で必要なことは、保護者ニーズに応えるための施策の充実です。さらに支弁経費内でも苦労して保育の質を守っている私立保育園に対する手厚い支援こそ行うべきではないでしょうか。 そこで質問します。 第1に、来年度開設する「小谷野しょうぶ保育園」の運営は、営利企業ではなく直営でやるべきと思うがどうか。 第2に、支弁経費内の運営は、安上がりの保育行政に質的な後退をさせるもので、撤回をすべきと思うがどうか。 第3に、私立保育園に対する支援を強めるために、東京都に求めるとともに、区独自の施策も充実すべきと思うがどうか。 次にマンション問題について質問します。 今日、大型マンションを含めたマンション建設は、増加の一途をたどっています。2001年3月、「葛飾区住宅基本計画」の現時点の戸数は不明ですが、策定の際の三階建て以上の共同住宅は全体の43%と一番多くなっています。 そして、基本計画で掲げているように、「誰もが良好な住宅、住環境、コミュニティのもとで住めるまちづくり」という視点の具体的対策が重要になっています。 東京都の「分譲マンション維持・管理ガイドブック」によれば外層補修、屋上防水・取替、屋内給水管・更生、フェンス取替等など、築15年前後にして様々な大規模改修が必要のときを迎えています。 基本計画は、「適切な維持管理、更新がなされなければ、個々の住宅の問題を超え、スラム化など周辺環境の悪化を招く恐れがあります」と指摘しています。分譲マンションは確かに個人の住宅です。しかし、戸建て住宅とちがって、マンションは多くの共用施設を抱えています。たとえば集会所やポケットパーク、または防火貯水槽など地域住民にとっても利用できる、あるいは防災の点で役に立つさまざまな設備を整えています。このようにマンションの共用施設というのは居住者のみならず周辺住民にとっても公共性がある施設です。 しかし、その設備の維持・管理は、マンション居住者の責任とされており、その負担は大きなものとなっています。 そこで、区としても、近隣住民にも公共性のあるマンションに対して、単に「個人の財産」とするのではなく、出来うる限りの援助をおこなう事が必要です。 第一に、区内分譲マンションの実態を日常的に把握することが大事であります。 2000年の調査以降、実態把握のための「マンション誕生カード」を提出させているということであります。これは、評価できるものですが、カードが十分生かされているのかどうかであります。聞くところによると、年一回の夏の「マンション管理セミナー」の案内に利用している程度とのことです。「計画修繕についてどうとりくんでいるのか」「資金の積み立て等問題はないか」など積極的に働きかけ、把握していくことが必要ではないでしょうか。答弁を求めます。 第二に、相談窓口の設置であります。 千代田区には「マンション支援課」が設置されていますが、本区では、昨年4月から「住宅課」から「住環境整備課」と名称を変え、「住宅」という名前すらなくなってしまいました。せめて「マンション相談コーナー」など設置し、マンション住人や管理組合からの相談にのれる窓口をきちんと設けるべきです。そこには法律にもとづくマンション管理士も常時置くべきと思いますがいかがでしょうか。 また、区がマンション住民に対して身近な存在になるためにも、年に一回のセミナーではなく、回数を増やす事や板橋区のように管理組合同士の自主的なネットワークを支援するとりくみをおこなってみてはどうでしょうか。 第三に、バリアフリー、リフォーム、耐震診断への積極的支援について伺います。 身近な自治体として相談をしたのち、次に必要になるのは、実際に実行するための具体的支援策です。江東区では、マンションの建物診断費用の3分の1を区が補助するという制度を実施しています。また、住宅金融公庫の「共用部分リフォームローン」にたいして、東京都と江東区からそれぞれ1%、あわせて2%分の利子補給がおこなわれ、管理組合は低利で融資を受けることができます。千葉市では、共用部分のバリアフリー化に対する利子補給制度、浦安市などでは、スロープや手すりだけでなく、エレベーターの設置にも費用の半額補助、松戸市では、自治会として集会所を所有する場合の新増改築補助をおこなっています。本区でも、共用部分改修などのための支援制度を実施すべきです。1981年以前に建てられた、いわゆる「旧耐震」のマンションを中心に耐震対策が急がれています。神戸市や横浜市では、簡易診断を無料でおこなっています。本区の耐震診断制度はどうでしょうか。制度はあるものの、十分周知もされておらず、限度額も低く利用されていません。 本区でも、簡易診断は無料で実施するとともに、限度額を上げる等抜本的な改善が必要と思いますがいかがでしょうか。 以上で、私の質問を終わりますが、答弁いかんによっては再質問をさせていただきます。 |