●第2回定例会 中村しんご区議の一般質問  2005
【目次】
1、障害者「自立支援」法案について
2、介護保険について
3、子育て支援について

 先の通告にしたがい区政一般質問を行ないます。
 まず、障害者「自立支援」法案についてです。
 今国会に、この法案が上程されましたが、法案は障害者の生活に重大な影響を及ぼすものであり看過できません。
 障害への社会的支援は、「マイナスからの支援」であり、「応益」の論理は通用しません。本区の障害者施策推進計画でも、計画策定の目的に、ノーマライゼイションの思想をあげ、障害者の人間としての尊厳を謳い上げています。

 障害者の制度としては、2003年4月から、支援費制度が導入されたばかりで2年しか経過していません。この支援法案は、支援費制度の十分な検証のうえに提起されたものとは思えません。
 この法案は、これまでの障害関連法ー身体・知的障害者福祉法・精神保健福祉法などの自立支援の各種福祉サービスを一元化すること、規制緩和により社会資源を活用すること、手続き基準の改定、これまでの応能負担から定率負担へ、さらに自己負担の導入の法整備であります。
 介護保険のように障害の程度をコンピュータでの1次判定し、区市町村審議会による二次判定で三種類の障害区分を設定し、障害者の収入にもとづき、生活保護、低所得1、低所得2、一般と4種類に区分、自己負担と定率負担を設定し、各種サービスを限度額の範囲内で選択するというものです。

 法案の最大の問題点は、障害者とその家族に大幅な負担増を求めるものになっていることです。しかも、食費・水光熱費も自己負担とされ、公費負担医療も原則として1割に引き上げられるというものです。
 法案では一応、低所得者のための上限設定などの配慮や激減緩和措置がとられることになっています。しかし、それ自体が、大幅な負担増になることの証明であります。
 しかも、障害が重く、多くの支援を必要とする障害者ほど大幅な負担増を強いられることになります。
 たとえば、月83000円の障害基礎年金受給者が、重度知的障害で自閉症の治療を必要として施設入所している場合、現在の負担額は、48900円ですが、法案が通ってしまうと、自己負担額は82600円となり、年金の残りはわずか400円になってしまいます。
 1割負担となる医療費は別にかかりますから、通院もできません。
 これは生存権の侵害ではありませんか。
 また、自宅から作業所に通う比較的軽度で所得区分が「一般」の場合、今は、利用料負担は無く月に数千円の工賃を受け取っていますが、法案が通ってしまうと、数千円の工賃のために30340円の自己負担が必要となります。こんなことが許せるでしょうか。
 医療費の原則1割負担も深刻です。
 精神保健法の通院医療費公費負担制度は、障害者にとってなくてはならない重要な制度です。この制度は、かつては利用者負担はありませんでしたが、現在、5%の負担となり、今でも受診抑制が問題になっています。
 ある障害者団体の理事長は、1割負担は、精神障害者のさらなる受診抑制をひきおこし、そうなれば服薬を中止した患者は症状が悪化し「自殺者がでることになる」と警告しています。
 また、「全国心臓病の子どもを守る会」の試算では、20日間入院して心臓手術を受ける場合、18才以上は、所得に応じて2300円から14670円の自己負担が、法案が通ると、115490円支払わなくてはなりません。なんと50倍の自己負担額の増となるのです。

 「同一生計」による判断も障害者の自立に反し、問題です。
 「障害への支援はあくまで個人への支援にしてほしい」というのが障害者の長年の要求です。これに反して「同一生計」つまり障害者をもつ家族の収入を加えてサービスの料金を設定することは支援費と比べても重大な後退であります。

 法案の背景には、財政論があります。
 支援費制度によって全国的にも、また、本区でもサービスの利用が促進されました。
 厚生労働省では初年度から財源不足となり、あわせて、「三位一体の改革」で施設整備費補助金の廃止など二重の財政圧迫の中で、介護保険との統合を打ち出しましたが、国民の反発が強まり統合案は退けられました。
 こうして昨年十月、「障害保健福祉施策の今後の在り方〜改革のグランドデザイン」を打ち出し、今年、二月十日に、この法案が上程されました。
 この間、制度変革の内容も明らかにされず、関係者の意見も反映せず、いきなり、ゴールデンウイーク明けに、国会審議が始るという異常な経過をたどっています。
 しかも、この法案による制度移行は、2006年度ですが、定率負担・自己負担については、今年10月から、先行して実施しようとしています。
 すでに、東京都を通じて改定の骨子が本区にも伝えられていると聞き及んでいますが、これだけの制度改定なのに、負担増だけは先行して実施することなど許されません。

 ここで、質問いたします。
 これだけの制度移行が行なわれると、本区の基本計画はもちろん障害者施策推進計画、保険医療計画の推進にとっても障害が発生すると思うがどうか。
 本区の障害者施策推進計画でも位置付けられているノーマライゼーションの考え方と障害者支援に「応益負担」を持ち込むことは相容れないものと思うがどうか。
 それならば、政府に対して、障害者「自立支援」法案を直ちに撤回するよう求めるべきと思うがどうか。
 現状でも充分とは言えない、障害基礎年金の増額こそ国に求めるべきと思いますが答弁を求めます。
 
 次に介護保険についてです。
 3月に区の「高齢者実態調査」報告書がまとまりました。この調査は「特養ホームの入所希望する要因となった問題点の分析と、その解決に必要な施策の把握」を目的としておこなわれ、入所を希望している区民874人、入所を希望していない65才以上の区民4998人を対象にしています。
 まず入所希望者についてでありますが、7割を超える方が「お風呂で体を洗う」「浴槽に入る」ことが一人でできない、また日常的に「買物に行けない」「掃除ができない」と答えています。
 また、健康状態も一年前に比較して「少し悪くなった」「悪くなった」を合わせると約7割になっています。
 特養ホームに入所したい理由で一番多いのが「24時間介護が受けられる」ことで、3割の方が「すぐ入所したい」と答えています。
 しかし、入所申し込み日を見ると「H14年3月以前」が24、5%で3年以上たってもまだ入所できない実態も浮き彫りになっています。
 介護者の介護の期間は「3年以上」が73、9%と非常に高く、その身体的負担は7割、精神的負担は8割を超えます。
 区長、介護保健施設の整備率で23区では1〜2位を争っていると言われましたが、特養ホームに「すぐ入所したい」という声にどう答えていくのか、ここが大事ではありませんか。 
 区は、これから3年間で3ケ所350人の特養ホームの整備がされるとしていますが、待機者1159名の3割でしかありません。平均年令82才で要介護4・5の重度の方が過半数を超えている状況で、展望ある増設計画が必要です。次期介護保険事業計画で明確にすべきと思うがどうか。

 施設への入所希望者の収入についても大変深刻な状況にあることがわかります。
 5万円未満が18、6%、5万円〜10万円未満が20、4%で合わせると10万円未満が39%です。「調査」では、入所希望者の28、4%、在宅高齢者の38、5%が保険料が「高い」と答えているが、23区で保険料の減免制度の未実施は葛飾区と杉並区だけとなっています。保険料減免を実施すべきと思うがどうか。また、利用料の減免制度も拡大すべきと思うがどうか。

 同時に入所できるまでの在宅サービスを充実させなければなりません。
 「調査」では、小規模多機能型居宅介護サービスや地域夜間訪問介護が提供された場合、「利用する」は5〜6割にもなっています。
 例えば要望の多い24時間の訪問介護は事業者が展開しやすくするために補助金の創設など行うべきと思うがどうか。
 ショートスティの確保は緊急課題であり緊急時のショートスティの確保は区が責任をもつべきと思うがどうか。
 介護者の身体的・精神的負担の軽減を図る為に、介護手当てを創設すべきと思うがど うか。
 また、住宅改善も求められます。
 「調査」では「段差がある」が41%、「手すりがない」が32、8%ですが、「費用の都合がつかない」で改善できない方は4割を超えています。実態がわかった所からでも住宅改修を奨励すべきと思うがどうか。その際、現状の限度額を引き上げるとともに、非課税世帯及び生活保護世帯は免除に戻すべきと思うがどうか。
 国は今年10月から居住費と食費を全額自己負担にしようとしています。
 そうなると入所できた場合でも負担が収入を超えてしまう方がでてきます。
 たとえば、年金80万〜266万円の場合、個室で95000円、相部屋で55000円になります。
 したがって先程のべた年金受給額10万円以下の方が39%ですから、これらの方々は個室をあきらめ相部屋に入るしかありません。
 しかも重大なことに、その内の月額5万円未満の18、6%の方は、相部屋さえ入所できなくなります。区は、この実態を国にきちんと示すべきです。
 在宅高齢者では、もっとも利用されているのはホームヘルプサービスで36、4%です。そして4割を超える方が「サービスを利用し在宅で暮らす」ことを求めていますが、5割以上の方がサービスを増やすうえでも「費用が増えない」ことを望んでいます。
 在宅で暮らしていくためには利用料の軽減が求められています。
 ホームヘルプサービスについては、今、国会で大問題になっています。
 要支援・要介護1の軽度者の約8割を予防給付に移行させ、ホームヘルプサービスを原則廃止にしようとしているからです。その理由として「サービスを利用しても状態が良くならない」というものですが、この理由の根拠が崩れました。
 厚生労働省の「介護給付費実態調査」によるとホームヘルプサービスを利用している要支援の68、8%が状態を維持し、要介護1では84、4%が維持・改善をしているという調査結果がだされ、軽度者の利用する在宅サービスには効果がないどころか、効果があることが実証されました。
 国に対して、施設入所者への居住費・食費の全額自己負担と軽度者のホームヘルプサービス廃止の撤回を求めるべきと思うがどうか。

 次に、子育て支援についてです。
 子育て支援の最重点課題として三点について質問します。 
 第1に、子育ての負担軽減についてです。
 今年4月から本区でも、中学3年生までの入院費の助成がはじまりました。
 しかし、我が党が行なった区民アンケートでも通院費への助成は切実です。
 先日、子育て中のあるお母さんが、診療所の窓口で、「港区・品川区・台東区のみなさんへ。小学生以上の医療費を助成します。というポスターを見ました。葛飾区はどうなってるのですか」と質問されました。
 すでに23区内でも、通院費助成を小学3年まで広げたのが大田区、世田谷区、小学6年までが品川区、さらに中学3年までが港区、台東区です。
 多くの人口をかかえる世田谷区や大田区で拡大されたことは、注目に値します。
 この流れはいっそう広がっていくことでしょう。
 区長は、「子育てなら葛飾で」と言われているのですから、傍観はしていられません。
 通院費についても助成対象年齢を広げ助成すべきと思いますがどうでしょうか。
 もう一つの負担軽減は、保育料です。
 渋谷区では、中間所得層の保育料を50%から30%に引下げをしました。これは、子育てに経済的負担を感じることに対して実施したものです。
 区長、子育て支援として保育料の値下げを行なうべきではありませんか。
 すでに近隣市では、第3子の保育料は無料です。本区でも検討すべきと思いますがどうでしょうか。それだけではなく第2子の保育料の免除率の拡大や無料化も考えるべきと思いますが、答弁を求めます。

 第2に、保育所の待機児解消ついてです。
 待機児の解消、保育の充実も、子育て世代の強い要求であります。
 しかし現状では、保育所の待機児数は、4月1日現在で公私立保育所を合わせて153人です。認可保育所に入れず、やむなく認証保育所、保育室、家庭福祉員を利用している方数も合わせると300人以上にのぼります。
 それなのに子育て支援行動計画では「待機児解消」のための目標が2009年までに認可保育所の定員を305名増やすのだ書かれています。
 すでにいっぱいではありませんか。
 これまで新しい認可保育園をつくり、また定員を増やしているのだけれども、それ以上に保育園を希望する方が増え追い付かない、その結果、待機児が増え続けると言う悪循環をたちきるための計画策定でなければなりません。
 今一つ、申し上げたいのは、この計画には、認可保育所をいくつ作るのかが書かれていないのです。
 保育の質を確保するには、国基準を上回る人員配置が不可欠であり、だからこそ都も区も独自の支援策を行なってきました。定員枠拡大だけの目標があって、保育所を増設する目標がないのは、保育の質を低下させる危険があります。
 子育て支援計画の認可保育所の受け入れ人数を拡大すると共に、認可保育園の増設も計画化すべきと思うがどうか。

 第3に、30人学級の早期実現についてです。
 すでに東京都とある県をのぞき45道府県で少人数学級が行なわれています。
 少人数学級を主張しているのは、わか党だけではありません。
 「45人学級から転換してすでに20数年たっている。これだけ時代が変化しているのにこんなに多い、早く30人学級まで引き下げなければならない」「定数法が弾力的になってきているわけだから、その対応を強化せよ」これは、横浜市議会の民主党議員の発言です。
 「学級編成の弾力化が必要である。41人でスタートしたクラスが、転校等で39人になった。2学級を1学級にせなあかん。現場が大変なんだ。それを弾力化して35人なり、30人なり、もっと25人にするなり、色んな工夫があっていいだろうと思います」これは、大阪府議会での公明党議員の委員会発言であります。
 「30人学級を再三要望してきたなかで、大変財政難の折、着実に教育行政を進めていただきまして、今回全国初の市独自予算でこのような施策をうたれたことを大変うれしく思いますし、大いに評価してます」これは、京都市議会の自民党議員の代表質問であります。
 全国的には、各党が、少人数学級を評価し、その実施を積極的にもとめています。
 ところが、5月26日の都議会文教委員会で、35人学級を求める請願を自民、公明、民主の反対多数で不採択としました。
 しかし事態はいっそう変化しています。
 さる5月10日に開催された文部科学科大臣の諮問機関である中教審義務教育特別部会では、公立小中学校の学級編成基準(現行40人)を見直すために有識者による検討することを決めました。
 この会議では「少人数学級には学力改善や不登校減少といった教育効果があるので推進すべき」「学習面でも生活面でも大きな効果」など、少人数学級の導入を求める声が相次いだためです。ついに、国が少人数学級編成を実行する方向で動き始めました。
 こうした動きをふまえて、あらためて本区の30人学級実施への御見解を伺います。