●第2回定例会 高橋信夫区議の一般質問  2005
【目次】
1、大型店出店から中小商店とまちを守るとりくみについて
2、中小建設業の擁護と育成について

 私は、日本共産党区議団を代表して区政一般質問を行ないます。
 最初に、大型店出店から中小商店とまちを守るとりくみについてです。
 まず、イト−ヨーカドーショッピングセンターのペデストリアンデッキの問題です。
 4月28日、亀有地区センターにおいて、区都市整備部主催で、亀有3丁目環七香取神社前に大型横断橋(ペデストリアンデッキ)を設置するための説明会が開かれました。
 このペデストリアンデッキは、山田酒店の前からエスカレーターを立ち上げ、イトーヨーカドー・ショッピングセンターに直接入るという構造になっています。
 区は当初、この地域の開発を「亀有駅前との回遊性を確保」するとか、「既存商店街との共存共栄及び地域商業の活性化を図る」としてきました。
 しかし、このペデストリアンデッキ計画では、共存共栄どころか、イトーヨーカ堂の利益を露骨に優先するもので、商店街への回遊性は全くうまれないと言わざるを得ません。このまま設置されれば「まち壊し」そのものになってしまうものです。
 このように特定の企業の利益の計画を、区が説明会を開き、住民を説得しようというのは、本末転倒ではありませんか。
 住民からは、「何にも住民の意見も聞かずに図面ができているのはどう言うことか」「駅前からイトーヨーカドーヘの回遊性でしかない」とか、「136号線側につけるべきだ」、そして、「香取神社側の区道に降りられるようにしてほしい」など、様々な意見が相次いだのです。
 当然のことながら説明会は紛糾し、時間切れにとなり、住民の合意を得られたとものとは言えません。
 このペデストリアンデッキ計画は白紙に戻すべきであります。答弁を求めます。
 今、亀有のまちづくりで大事なことは、にぎわいのある商店街と住民が暮らしやすい「まち」をどうつくっていくのか、真剣に考えていくことではないでしょうか。
 私は、先きの定例会の代表質問で、大店法廃止のもとでも有効性をもつ「商調法」を活用すること。また大型店から町を守る「まちづくり条例」を制定することを求めました。
 この私の質問に区は、商調法は「紛争解決等のための緊急避難的な措置を規定しているもの」との理由で、東京都に適用を求めないとの答弁でした。
 しかし、その後、私は商調法を何度も読み返してみましたが、運用の仕方では、「大店法」と同じ効果をもつと判断できる内容になっているものです。
 現に、これまでも、商調法の適用は16件あります。
 近年では東京都書店組合が、東京都に調整を申請し、都が仲介にはいり、話し合いで計画の変更が合意されたという事例も出ているではありませんか。
 商調法は、業種別組合や商店街振興組合などが、「中小商店が、著しく悪影響を受ける」として、知事に申し出をし、知事がそれを認めれば、東京都が調査し、その上で大型店の事業規模縮小の勧告、計画の一時停止、それに従わなければ罰金まで課すことができるものであります。
 葛飾の商店は、89年の6,867店に対して、02年では5,234店と、実に、三軒に1軒の廃業という事態になっています。
 ある商店街振興組合の会長さんからは、「大型店の相次ぐ出店に何らかの有効な手だてがないのか」という率直な声が寄せられています。
 そこで、伺います。東京都は、さまざまな理由をつけて、商調法が申請・活用できないような対応がされていますが、区が貫くべきは、区内商業者の立場にたって、大型店出店の際、地域の求めに応じて商調法を適用し、協議が行なわれるよう、都に求めるべきです。答弁を求めます。
 さて、中心市街地活性化法、大店立地法、改正都市計画法の、いわゆる町づくり三法が制定されて6年となります。
 大型店の相次ぐ出店は、地元商店に壊滅的打撃を与え、地域経済を疲弊させ、まちのコミュニテーまで壊しており、先き程来から指摘している通りです。
 大型マンションの建設は、各地で良好な住環境を壊し、学校や保育園などの公共施設受入れ困難を生み出し、良好な地域コミュニテー形成の阻害となっています。そして、購入したマンション居住者にとっては、大型であればあるほど、大規模修繕や将来の建替えでの合意づくりの困難性など、新たな問題となっています。
 このように、まちづくり三法で、今や、「町づくり」どころか、「町こわし」が急速に進んでいることは、だれの目にもあきらかになっています。
 本区でも、工場跡地は、揃いも揃って大型マンションに大型ショッピングであります。
 今後も、こんなまちづくりで良いのでしょうか。
 日本商工会議所をふくむ中小企業4団体は、04年7月に「まちづくり三法」の抜本的な見直しを要求する「要望」を出しました。今年の2月、政府はやっと重い腰を上げて、大店立地法のみの「指針の見直し」を決定致しました。
 しかし、その程度の見直しでは不十分であります。区は、国の動向を「見守る」という消極論でなく、区内商業者と地域住民の立場に立って、積極的に三法の見直しを国に求めるべきであります。
 同時に、三法の見直しまで、座して待つことなく、自治体として、住民の声を生かしたまちづくりとするために、葛飾区に相応しい「まちづくり条例」の制定をすべきと考えます。
 前回、紹介をした金沢、長野にひき続いて仙台市、尼崎市、そして福島県でも、「まちづくり条例」の具体化のための検討会を立ち上げ、県レベルの規制・調停を始めています。
 区長は、本区では、「葛飾区地域産業活性化プラン」があるから、町づくり条例を「制定するつもりはない」と拒否しましたが、本気でこのプランで大型店などの横暴な町壊しから町を守れると考えているのでしょうか。
 大型マンションや大型店が出店する際は、商店街や住民生活の環境にたいする影響評価を行わせ、住民や自治体との合意を得る仕組みづくりは最低限の課題であり、町の活性化計画に支障をきたす出店は原則禁止するくらいの規制は必要であります。
 すでに全国の自治体では、大型マンションや大型店の立地と事業活動、道路交通や駐車場、商店街・商業集積のあり方を盛り込んだ「まちづくり条例」の制定づくりなどがすすんでいます。葛飾でも、葛飾にあった「まちづくり」条例の制定をすべきであります。
 三菱製紙跡地開発は、これまでの延長線上の大型マンション・大型スーパーが先にありきの計画ではなく、住民の声にもとづき根本的に見直しをすべきです。それぞれ、答弁を求めます。

 次に中小建設業の擁護と育成について質問いたします。
 現在、建設業は、長期の建設不況の中で大変なところにおります。私のところにも、建設労働者や中小工務店の方から、仕事が激減している問題や、賃金や単価の切り下げ、不払いなどの相談がきております。倒産が相次ぎ、なかには自殺する人もでていると言われております。
 もともと建設業は、公共事業に依存する部分が多い産業です。そこへ90年代に国が失業対策として公共事業を拡大し、建設就業者をふやしてきました。しかし、96年を境に公共事業が減少したため、産業全体が危機とも言える状態がつくりだされました。
 わが区の普通会計決算で見ても建設事業費の割合は、バブル絶頂期の91年で31・2%のピークに達し、その後、徐々に減少し、96年を境に激減し、今では8%にまでなっています。
 もちろん、無駄な公共事業は必要ありませんし、財政危機が言われているとき公共事業の見直しはさけて通れない課題です。
 同時にそれが直接、建設業に影響をおよぼしているのも事実です。そこに行政が、擁護・育成しなければならない理由がありますし、他の産業とは違った性格をもったものでもあります。
 そこで、私は幾つかの課題で提案をし、区長の見解を求めるものです。
 第1は、耐震改修助成制度を利用者にも建築事業者にも使い勝手よくすることです。
 木造住宅の耐震工事助成は、わが党が10年前から提案をしてきたものであります。
 これまで区は、「個人資産形成」だと拒否してきましたが、その態度を改め、実現したことは大変評価します。
 この制度を知った区民からは歓迎の声が寄せられております。しかし、「誰に頼んだらいいか」「改修結果の効果はどの程度なのか」という質問にあわせて、「この年になって高額な改修はしたくない」とか、「うちは、違反建築なので関係ない」と言った否定的な声も寄せられています。
 違反建築の改修は、今回提案の事務手数料条例の改正によってクリアできるという説明ですが、それ以外のことについては、これからの課題になっております。
 横浜市のように最高限度額が450万円もあれば、かなりのことが可能ですが、わが区のように50万円では、できることは自ずと限られてきます。
 しかし最低の基準として、「建築物等の倒壊による圧死をふせぐこと」「せめて倒壊しない程度の耐震補強」は必要であります。
 その際、利用者も工事施工者も、どの程度の工事が、どのくらいの値段でできるかを想定できるようにすることが必要になると思います。
 私は、先日、静岡県地震防災センターに行ってまいりました。そこには建築中をイメージした実物大の家が展示されて、筋かいによる耐力壁の増設、腐食した柱と土台の入れ替え、天井や壁を壊すことなく補強する準耐力壁、筋かいと柱・土台を接合する筋かいプレートなど素人のわたしにも大変わかりやすいものでした。
 特に、工事実例と値段が表示されているパネルは印象にのこりました。わが区でも、区民ホールや地区センターホールを利用して耐震改修の実例展示やパネル展示コーナーを設けることは有効であると考えますが、いかがでしょうか。
 耐震改修をするには、耐震診断が前提であります。わが区の耐震診断の実績は、01年が8件、02年が10件、03年が20件とあまり進んでいません。
 実績をのばすには2つのことが必要です。1つは、診断士をふやすこと。もうひとつは、診断を無料でおこなうことであります。
 中野区では、建築士等を対象に講習会を実施し、木造住宅耐震診断士として認定していますし、横浜市も建築士・建築施工管理技士を対象に講習会をおこない認定し、いづれも無料で派遣しております。
 その結果、中野区の耐震診断実績は、昨年1年で85件といわれています。横浜市では、手もとにある資料が01年7月31日現在までしかありませんが約半年で709戸と、わが区とはけた違いです。
 また、信頼できる施工者をふやすことも大事であります。
 中野区では、区内在住の大工や工務店を対象にした講習会を実施して、耐震改修工事施工者として登録し、区民の要望に応えています。横浜市では、講習に加えて「誠意をもって良心的に業務にあたる」ことを宣誓させて、登録しております。
 わが区でも中野区や横浜市に学んで、耐震診断士を思いきっリ増やす制度を作るとともに、耐震診断を無料にすべきではないでしょうか。また、区が講習会を実施して、区内の大工、工務店、建設事業者を耐震改修工事施工者として登録・公表すべきと思いますがいかがですか。
 中野区では、家具転倒防止助成として、登録施工者を派遣して補助をしております。わが区でも実施すべきと思います。
 さて、より安心な耐震改修をすすめるのは、50万円の助成を起爆剤にしてどれだけの工事をするかで実効性が決まります。区は利用者が少ないことを理由に住宅修築融資あっせんをやめてしまいましたが、助成とあわせて融資制度はどうしても必要です。
 耐震改修融資および住宅リフォーム助成を新設せうべきですが、見解を求めます。
 第2は、官公需における中小企業の受注機会の拡大です。
 わが区議会は一昨年の第一回定例会で全会一致して、「区内業者育成にかんする請願」を採択しました。しかし、建設事業費の縮小もあって改善をされた感じはありません。
 そうした中で、昨年7月に「中小企業者に関する国等の契約方針」が閣議決定されました。大手ゼネコンが、縮小した官公需のパイのシェア拡大をねらって官公需法の見直しが求められているとき、この閣議決定は大きな意味をもっていると思います。
 とくに、中小企業者の受注機会の増大のための措置をとるようもとめ、分離分割発注の推進をうたい、その中で、新しく加えられたものに、分割発注の理由の公表、分割発注のための人材の育成、外部人材の活用等をもとめています。
 また、技術力のある中小企業者の受注拡大もうたっています。
 わが区の官公需もこの立場で見直してみる必要がありますが、どうでしょうか。
 とくに、近年、分割可能な事業も効率化や低価格化を理由に怠る傾向が見られています。これでは、区内中小企業育成に役立ちません。
 また契約方針では、とくに中小建設業者に対する配慮として、「共同による請負の一層の活用」「地元建設業者、専門工事事業者等の中小建設業者の活用」をあげています。
 中小企業同士のJVによる大規模工事への参入の促進、区内業者優先が求められています。区のお考えをお聞かせください。
 葛飾は他区に比べて他区の業者の参入に寛大すぎるという声も聞かれます。改善が必要であります。
 近年の地方自治法の改正やPFI法の制定によって入札の仕方が大きく変わろうとしております。そうした中で、葛飾建築協会が、今年4月から「PFI勉強会」を毎週おこなっていると聞いております。
 わが党は、PFIによる公共施設の建設や、指定管理者制度には基本的には賛成しておりません。だからと言って、実施にあたって無手で傍観するものでもありません。
 民活事業を大手企業に独占させるのではなく、区内中小企業が参入できるよう区が適切な支援をはかることを求めるものです。
 私は、横浜市の十日市場小学校整備事業のPFIで、地元グループが入札価格で優位にたったものの、提案審査で敗北し、結局大手の大成グループが落札をしたというニュースに注目しております。
 新聞報道の範囲ですが、地元グループは、企画・提案力で不足が目立ちます。また、応募する際の経費負担も膨大で、このまま受注できない応募を重ねると、「先行投資」が経営を圧迫しかねない心配があります。
 民活事業に地元中小企業が参画できる方策を、資金面も含めて研究しなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
 以上で、私の質問をおわります。