●第4回定例会 中村しんご区議の一般質問 2005 |
【目次】 1、増税路線、自治体破壊の国の悪政とたたかうこと 2、23区最低となった福祉をもとに戻せ 3、立石、四つ木のバスターミナルなどのむだづかい 4、小中学校の統廃合、少人数学級、就学援助 5、マンションの強度偽造事件の発覚に関連して 6、PFIや指定管理者制度のもつ危険性について 7、社会教育館、敬老館の廃止などの公共施設見直しを糾弾 ●増税路線、自治体破壊の国の悪政とたたかうこと 日本共産党葛飾区議会議員団を代表して、区政一般質問を行ないます。 今年は、都議選、総選挙、区長・区議選が連続的に戦われました。これらの政治戦の結果は、それぞれ区民生活に大変大きな影響を及ぼします。 総選挙では、自民党が議席を伸ばしました。自民党は、郵政民営化を最大の争点とし、国政上の大問題を覆い隠し、一方で、サラリーマン増税はやらないと公約しました。 ところが、選挙直後に定率減税の廃止を発表し、来年度予算編成をすすめています。 小泉総理は、定率減税の廃止は、自営業者も増税になるからサラリーマン増税ではないと言いましたが、こうした公約違反、国民だましが許されるでしょうか。 小泉内閣の構造改革によって、貧困と社会的格差の広がりが社会問題となっています。生活保護世帯は、全国で100万世帯を突破し、本区でもこの十年間でほぼ倍増しました。就学援助を受けている児童の割合は、全国平均12.8%に対して、本区では、30,7%で大きく上回っています。 わが区の、都立高校に通う生徒の授業料免除の割合も全都平均のほぽ2倍であります。この数字は、本区には、所得が低く、生活困難な区民が、非常に多いと言う事を示しています。 このようなときに定率減税の廃止は、区民に重大な打撃となるものと思いますが、区長の見解を伺います。また、こうした公約違反の横行は、異常であるとお考えになりませんか。区民の代表として、政府に対し、定率減税の廃止を中止するよう働きかけるべきではあります。答弁を求めます。 いま、国政と地方政治の対立も激化しています。 国が、三位一体改革と称して、いっそうの地方への負担の押付けようとしているからです。生活保護費の国庫負担率の引き下げは見送られるものの、住宅扶助などを一般財源化、義務教育国庫負担金や児童扶養手当の負担率も引き下げが提案されています。 国と地方の主張にはいまだ大きな隔たりがあり、予断を許さない状況です。 国の横暴とたたかうべきと思いますが、その決意を伺いたいと思います。 ●23区最低となった福祉をもとに戻せ こうした悪政が続いている時だからこそ、最も身近な自治体として区政が果たすべき役割が重要であります。住民の福祉、健康、安全を守るためにあらゆる努力をはらわらなければなりません。 そこで、区長、区議選での論戦もふりかえりつつ、緊急に求められる区政の課題について質問します。 わが区では、「行財政改革」を理由に、冷たい区民いじめが進められてきました。 福祉タクシー券は23区で最低の制度となりました。障害者の社会参加を制限する仕打ちです。 オムツ支給事業も改悪され、非課税世帯のみで、かつ、要介護4、5に限定したために半減し、約1000人からオムツを奪うことになりました。常時失禁状態の方からオムツをはぎとると言うことは人間の尊厳を踏みにじる行為であります。 国保の六年連続値上げは、収納率を低下させる原因となりました。未納者には「資格証」を発行し、これが受診抑制を引き起こし、重症化し、医療費を高騰させる悪循環をつくり出しています。 一連のこうしたやり方は、区民犠牲も甚だしいものであり、いまこそ、反省すべきです。今からでも遅くはありません。元に戻すべきですが、答弁を求めます。 ●立石、四つ木のバスターミナルなどのむだづかい こうした区民いじめの一方で、ムダ使いが横行してきました。 例えば、新柴又駅前バスターミナルは六億円かけて整備しましたが、一台もバスが入ってこない、六億円のムダ遣いになりました。 これに対して、区長陣営は、法定二号で、「バス会社が10月26日にバス路線変更を陸運局に申請した」と反論しました。しかし、昨年春から1年半の間、なぜ申請してこなかったのかは一言もふれられていません。わが党のビラをみて、あわててバス会社に頼み込んだというのが真相なのではないでしょうか。 亀有の区営駐車場についても、毎年赤字だと言うことには反論がありません。 真面目な指摘に対して、「ウソつき」よばわりこそ品性のないやり方で慎むべきです。 現区政は、駅をみるとどうしてバスターミナルをつくりたくなるのでしょう。その中で二つの忠告をしておきます。 第一は、立石駅前です。 4000平米のバスターミナルをつくる都市計画決定、それを前提とした再開発計画は地権者の支持をうけていません。 バスターミナルをつくるために区の公共施設整備負担金の100億円の支出は異常であり抜本的な再検討を求めるものです。答弁を求めます。 第二は、四つ木駅です。 四ツ木駅前にも同じくバスターミナル計画です。 四ツ木駅の周辺の整備は、住民の悲願であり、私も様々な提言を行なってきました。 区の計画は、四ツ木街道の拡福と同時に駅前にバスターミナルをつくると言うものです。 関係住民は、今後の営業や生活に深刻な不安を抱いています。 現地測量がようやく終わり、都市計画の線形が示されたのは今年9月でした。そして、12月8日から公告縦覧の手続きをおこなって、翌9日に説明会を開催し、来年2月には、都市計画審議会で計画決定をしようとしています。 立ち退きをふくめ民家を約150件壊すと言う重大な計画なのに、地権者、周辺住民には十分な説明が行なわれていない段階で都市計画決定という乱暴なやり方であります。 地元では、この計画を撤回してほしいという声が渦巻いています。 白紙撤回を求めます。答弁を求めます。 また、これに、そのままつきすすめば、区政の屋台骨をぐらつかせる程の打撃となって本当に区財政は困難になるでしょう。勇気ある決断、方向転換してこそ切実な区民要求は実現できます。 選挙戦のなかで、わが党が要求してきた、今やるべきことは「子どもの医療費の無料化」を通院費についても小中学生に拡大すること。 「新たな介護支援手当の創設・介護保険の減免制度の充実」、不足している介護福祉施設、保健施設、小規模多機能型居宅介護の整備をレベルアップすること。 「中小企業予算の倍加」など、中小企業や地域の商店の置かれた状態を少しでも改善する事です。 ●小中学校の統廃合、少人数学級、就学援助 関連して、小中学校について質問します。 第一に、これまでの、葛飾区教育振興ビジョンにもとづく「教育改革」についてです。 葛飾区教育振興ビジョンでは、子どもの学力の向上、健全育成、ゆとりなどかかげてはいるものの、実際に行なわれてきた事は、官僚的発想の管理教育、いっそうの競争激化、差別・選別教育の推進であります。 その目的は、この間、作成された「葛飾区基本計画」及び「公共施設見直し検討委員会報告書」で示されている小中学校の統廃合、いっそうの効率化であることが浮き彫りになっています。 まず、最初に取り組まれたのは、学校選択制でした。 そして、翌年から学力定着度調査を4年生以上の小中学生に実施しました。 その結果をクラスごと、学校ごとに公表し、子ども間の競争だけではなく、教職員間、さらには学校ごと競争させる仕組みにしました。 今後、小中学校が隣り合わせている学校を小中一貫校として優先的に整備し、学校間の格差を意図的につくる。すなわち「選ばれる学校」と「選ばれない学校」をつくり、「選ばれない学校」は、統廃合というシナリオなのでしょう。 ここには、学校の主人公は子どもたちであり、子どもの権利条約に掲げられている「最良のものを子どもたちに」という考えはみじんも感じ取れません。 そして、中学校の「夏休みの短縮」に突き進みました。「夏休みの短縮」によって、部活動の交流試合が中止になった、家族旅行を変更せざるをえなくなった、何よりも子どもたちの不満が鬱積しています。 先の定例会では、区長と教育長は、「夏休みの短縮で英語の授業時間が確保できた」という同じ答弁をハンをつくかのごとくくり返しましたが、子どもたちがかわいそうだとは思いませんか。 私自身、中学一年生の娘を持つ父親の一人ですが、「夏休み短縮」は弊害のほうがはるかに上回る間違いだと確信しています。 いま、急がれているのは、少人数学級の実施であります。 区教育振興ビジョンも区基本計画でも、また公共施設見直し検討委員会報告書でも、今後、十年間、少人数学級を実施しない前提で、学校の中にさまざまな公共施設を併設することを目指しています。 これは、現状でもすでに教室が不足している学校もあり、少人数学級実現の障害になる考え方です。効率化のみを目指す考え方を改め、少人数学級を実施すべきと思うがどうか。 第2に、就学援助の申請についてであります。 来年度の「施策推進の基本的考え方」には学校事務職員配置の見直しとして、就学援助事務の集中処理とあります。 これまで就学援助の申請は、書類を学校から児童・生徒に渡され、担任の教職員に提出されています。これを提出先を区役所に一本化しようというものです。 冒頭に紹介しましたが、本区の就学援助は、30,7%にも及び、児童・生徒の家庭と教職員、学校との緊密な連携が必要です。提出の窓口を区役所に一本化は、その連携を希薄にするものです。 就学援助の窓口一本化は実施すべきではないと思うがどうか。 ●PFIや指定管理者制度のもつ危険性について 次に、新自由主義的NPM「行革」手法によって区民に何がもたらされ、今後、どんな事態になるのかという問題であります。 政府の「官から民へ」をかけ声にしたがって、葛飾区政も葛飾版「経営改革宣言」を連発し、行政評価システムを導入し、区民にとってはあまり意味があるとは思えない数字がちりばめられた「葛飾区基本計画」を作成しました。 そして、新「経営改革大綱」にいたっては「民間でできるものは官がおこなわない」として、すでに、あらゆる民営化、民間委託、公共施設の運営について指定管理者制度を導入、今後、PFI方式で公共施設の建設、運営まで実施しようとしています。 こうした行政運営を誇らし気に自慢していることこそ、区民にとっては深刻な事だと言わなければなりません。 なぜなら地方自治体としての本来の役割を否定し、自治体を営利企業化させ、区民サービスの低下をもたらすものだからです。 しかも、すでに様々な「ほころび」が表面化しているではありませんか。 第一に、指定管理者の公募で不透明な実態が浮き彫りになりました。 東京新聞が11月16日付で、文化国際財団が所管している文化会館と亀有リリオホールの指定管理者の公募について、報道記事を掲載しました。 詳しくは述べませんが、事実上の受注調整もどきが行なわれ、一般の入札であれば、なんらかの法律に觝触するような行為があった。最初の公募で一位で通過した企業が、突如辞退した後、ルールを変更して「追加公募」が行なわれたと言うものです。 これ自体、大問題であります。同時に、こうした混乱を招いた背景には、指定管理者制度の導入にまともな検討も加えず、ひたすら制度の導入だけが目的化されていると指摘しなければなりません。 文化振興という部門は、きわめて採算性になじまない分野であるとともに、多様な価値観に基づいて発展させるべき分野であるだけに、各自治体の様々な試行錯誤を見て取ることができます。 事実、足立区では、西新井の文化会館を直営としました。 台東区では、おおむね施設ごとに指定管理者を指定する方式となっています。 墨田、江東、目黒、豊島、文京などの各区では、文化会館の運営はむこう3年間ないし5年間、財団、公社などに随意契約としています。 ところが、本区では、「効率」を最優先させた一括の指定であり、最も乱暴なやり方であります。ここに混乱の最大の原因があるのではありませんか。 プロポーザル方式の入札は、以前から指摘してきましたが、政・官・財の癒着を容易に生み出す制度であり、ましてや指定管理者制度の選定は、入札と異なり、議会は選定することのみ権限があたえられているだけです。 そこで、公共施設の管理・運営は、直営とすることを原則とすべきと思うがどうか。 導入する場合は、自治体としての政策を反映させるべく、施設ごとに分割発注を優先させるべきと思うがどうか。 管理の代行状況、サービスの提供状況などについて、議会に必要な報告、情報提供を徹底すべきと思うがどうか。 そして、癒着の構造をたちきるために、特別職や議員の兼職禁止規定を設けるべきと思うがどうか。 ●マンションの強度偽造事件の発覚に関連して 第2に、マンションの強度偽造事件は、「官から民へ」の弊害を如実に示しました。 姉歯建築設計事務所が「構造計算書」を偽造していた事件であります。 この事件の背景は「官から民へ」のかけ声のもと、1998年に建築基準法が改正され、建築確認業務が民間に開放されたことによるものです。 当時の国会でわが党は、「改正案による建築確認、検査の民間まかせであり行政のチェック体制が不十分で公正性、中立性が確保されない」として反対しましたが、この指摘が的中してしまいました。 そもそも、建築確認業務の民間への開放は、マンション等の住宅関連企業の要請にしたがって推進されたと言う背景があり、効率化とコストダウンが高じて、国民の命と財産まで「丸投げ」にされた結果であります。 いま、急ぐべきことは全ての建築関係者や建物に対して徹底調査を行ない真相の糾明と、再発防止であります。 本区でも民間による建築確認業務は年々上昇し、昨年は、849件、32%で、今年は年度途中ですが、約900件、70%に及んでいます。その内問題の「イーホームズ」の検査は、本区では、この2年間で約400件行ないました。 この事件による区民の不安は大変大きく、この不安を取り除くことが何より求められています。 まず、国に対して、建築確認業務の民間まかせの中止を求めるとともに、行政の関与を強化する方向で建築基準法の改正を国に迫るべきと思いますがいかがですか。 二つ目に、チェック機能を強化することであります。 今年六月に最高裁判所が、現行制度に警告を発する決定をしました。横浜市のマンション住民が民間の検査機関がおこなった建築確認について市の責任が問えるかどうかが争点になった訴訟で、最高裁は「民間の検査機関による建築確認事務は地方公共団体の事務である」つまり、民間会社は市の事務を代行したもので責任は市にあると決定したのです。 この判例に照らすならば、本区でも、この役割を果たすために条例や規則など制定が必要と思うがどうか。 また、監督、チェックするためには相応の職員体制が必要です。先程も述べました通り、民間による7割の建築確認を監督するとなれば現行体制では無理があります。民間が行なった建築確認を区が監督するための体制について答弁を求めます。 3つ目に、調査と対策についてです。 本区では、現在、「強度偽造で倒壊のおそれあり」の建物はありませんが、イーホームズをはじめ民間が確認を行なった構造計算書、竣工図等に問題がないか調査する必要があります。これこそ住民の生命のかかった問題ですから、民間まかせであってはなりません。答弁をもとめます。 11月29日の朝日新聞では、「耐震改修に減税検討」とあります。マンションなどの耐震強度偽装問題で、政府は被害者の経済的負担の軽減措置の検討を始め、その後、解体の費用の助成も報じられています。 本区には、現行制度としてマンションを含めた耐震診断の事業がありますが、耐震補強の助成制度ありません。今年、木造住宅に対する耐震補強工事・建て替え助成制度をスタートしましたが、マンション等にも同様の制度を検討すべきと思うがどうか。 また、防災に強いまちづくりとして、マンション耐震ドアへの改修、エレベータ対策、家具等の倒壊防止対策もきめ細かく対応すべきと思うがどうか。 ●社会教育館、敬老館の廃止などの公共施設見直しを糾弾 第三に、公共施設見直し検討委員会報告書についてです。 保育園の民営化、学童保育とわくチャレを統合しようとする大間違い、保田養護学校の廃止も諦めない、日光林間学校、あだたら高原学園の廃止などがあからさまに記されています。 なかでも今、社会教育館の全廃の方針は良識ある区民の間で怒りが大きく広がっています。 社会教育事業は、豊かに生きるための手立てを国民みずから学ぶ現代的人権の基本であります。社会教育を公的に保障するためには、施設に教育的、文化的機能をもたせることや自主性と社会参加が不可欠です。 今度の社会教育館全廃は、これを真っ向から否定することです。 だからこそ、11月11日に四つの社会教育館利用者協議会会長が、連名で嘆願書を提出しようとしたのではないですか。 嘆願書案は、「区民あっての区政という観点からふさわしくない」「社会教育館のような生涯教育施設を充実することこそ区の最重要課題」と述べています。 この声にどう応えるのですか。答弁を求めます。 敬老館についても同じです。敬老館の運営について、区自らが、風呂の廃止、運営費ゼロ状態とし、常駐職員も撤退させました。利用者を遠ざけてきた区の責任は重大であります。敬老館は廃止ではなく、風呂を復活させ、運営費をきちんと予算化するなど改善すべきです。全館でパソコン教室や介護予防事業と連携するなど、魅力ある敬老館となるよう努力すべきと思うがどうか。 これまで区が進めてきたこうした一連の新自由主義的「NPM行革」は、財界の要求であると共にアメリカが要求する日本社会のグロ−バル化をすすめるためのものです。 しかし、現実に世界で広がっている事は何か。アメリカが要求するグローバル化に反対する動きが加速しています。ヨーロッパ各国の選挙の結果、中南米での相次ぐ政権交替、アジアでも新たな地域連合体の模索がつづき、経済的な力関係は大きく変動しています。 区長は、この間の行革の成果を誇り、さらに加速させようとしていますが、このままではやがて、自治体が自治体でなくなる深刻な事態になりかねません。 憲法で明記された地方自治は先人の努力で拡充されてきたものであります。その土台を堀崩す自治体の破壊、存在の否定は「時代遅れ」となるでしょう。 こうした自治体破壊の動きには、今後も正面から対決することを表明して質問を終わります。 |