2006年第1回定例会代表質問 質問者 渡辺好枝
【目次】
1、国の税制改悪のもと区民生活を応援する区政を
2、2006年度予算案の問題点
3、介護保険料の値上げに反対、利用料助成、施策の拡充を

 私は、日本共産党区議団を代表いたしまして区長に質問いたします。
 
(1、国の税制改悪のもと区民生活を応援する区政を)

 今、小泉構造改革により、あらゆる分野で矛盾が広がり、区民生活は深刻です。
 マンション等の耐震強度偽装事件、米国産牛肉輸入問題、ライブドア事件は、規制緩和をあおり、もうかりさえすれば何をしてもよいというモラルハザードをもたらしました。その一方で、本来メスを入れるべき天下りを黙認し、防衛施設庁の官製談合事件が発覚、結局は税金の浪費を放置してきたのであります。
 矛盾の拡大は、格差社会の広がりという形でも表れています。
 政府は、大企業を中心に利益が増大していることから、景気回復を強調しています。
 しかし、貧困が拡大しています。生活保護が急増し、全国で100万世帯を突破し、本区でも十年間で倍増しました。貯蓄ゼロ世帯も急増し、90年代は5%程度で推移していたものが、2005年には、22.8%に拡大しました。
 また、雇用の形が正規から非正規に大規模に変わり、勤労者の所得が減り続けています。業務請負、人材派遣、パートなどの労働者はすでに3人に1人にまで上昇し、若者の半数が非正規雇用で、働きたくても働けないのが実態です。
 加えて、いま、多くの国民が連続して展開される増税と社会保障改悪に、深刻な不安をつのらせています。
 例えば、65才以上の単身者で年金収入180万円の場合、これまでは非課税でしたが、所得税・住民税で2万3,000円増となります。それに加え、国民健康保険料も均等割と介護保険料カの値上げ、国保料は所得割が新たに加わり2万3,000円程増え、逆に厚生年金が5,000円ほど引き下げられ、年間5万円の負担増が強いられます。
 45才で夫婦子一人サラリーマン世帯で年収700万円の場合、定率減税の半減で所得税・住民税で5万1,000円の増税、生計同一妻の均等割非課税措置の廃止の影響、社会保険料が9月から値上げされ、約8万円の負担増で13万3,000円の負担増となります。
 こうした負担増は、07年度に定率減税の全廃、高齢者非課税限度額の廃止で激変緩和措置がなくなり、影響額は、雪だるま式にふくれあがります。
 私は、さらに深刻だと思うのは、生活保護基準以下の収入で生活している多くの方々の存在です。私どもの所にも様々な相談が寄せられますが、例えば「都営住宅に入居したい」「医療費が高い」などの相談です。よくよく聞いてみますと生活保護を申請した方がよいという判断となります。
 私は、生活保護受給者の多くは、その水準以下の厳しい生活の後に、最後のセーフティネットとしての生活保護を選択せざるをえない方々が多いと言う事です。
 そこで伺いますが、生活保護や就学援助、扶助費の増加とその原因は区民生活の深刻さを示すものとの認識はありますか。また、一連の税制改革は、区民生活に深刻な影響を与えるものであり、国に対して区民生活を守る立場からハッキリともの申すべきと思いますが、答弁を求めます。
 こうした時に最も区民に身近な自治体としてなすべき事は何でしょうか。
 国政が、格差を拡大する間違った方向にある今こそ、地方自治体が政策的に所得再配分機能を発揮する、それが地方自治の本旨である「住民の安全・福祉をまもる」ことではないでしょうか。
 ところが、発表された予算概要では、「経常収支比率の悪化」「扶助費の伸びが顕著で依然高率で推移」しているなどと、区政の所得再配分機能を敵視しています。
 予算案では、特別区税の税収が05度比で、22億6,000万円増であり、その内訳は、定率減税の半減で約10億円で課税者は、19万人にも及び、老年者控除の廃止で2億6100万円、公的年金控除の引下げで7,400円などで、16億円余です。つまり、区の税収増の大半は、区民のくらしの犠牲によるものではありませんか。
 それどころか、区長は事務事業の見直しで約6億円削ったことを成果としています。その詳細は介護老人保健施設建設費助成、女性福祉資金貸付、高齢者借上住宅家賃助成の廃止等、額にして86%が福祉関連で、まさに、福祉を削った結果であります。
 そこで、新宿区の予算案は、注目に値します。
 「区民のくらしを支える」ために、税制改正等影響緩和策が講じられ、例えば、紙おむつ購入費助成として自己負担免除対象の拡大、通所介護等食費助成、高齢者や精神障害者のホ−ムヘルプ利用者の負担軽減などを実施するものです。
 新宿区でも、私立幼稚園保護者に対する支援が拡大されますが、税制改正の影響を緩和するために、支給額が減額しないように上乗せ措置が講じられます。本区でも確かに増額の措置がとられましたが、納税額によっては、助成額が減額されてしまう家庭もあるではありませんか。
 ここで伺います。新宿区のように、税制改正よって助成額が削減されたり、サービスが打ち切られないようにすべきと思うがどうか。
 さて、そのための財源はどうでしょうか。
 まず、補正予算は、基金の積立ばかりが目立ちます。87億円規模の補正予算は、なんと78億が基金積立であります。加えて、来年度当初予算では、21億円以上が基金積立であり、都合100億円となります。
 区民の痛みをやわらげるための財源はまだあります。
 都区戝調主要5課題の協議は、1月の決裂から一転合意となりました。
 到底受け入れ難い内容であることは、いうまでもありませんが、今年度の財調再算定で812億円、来年度の再算定で、およそ600億円にくわえ200億円の特別交付金が交付されます。本区では、少なく見積もっても、100億円以上の財源が交付される事になります。これらの財源を区民のために活用すべきと思ますが、答弁を求めます。

(2、2006年度予算案の問題点)

 さて、来年度予算案についていくつかの特徴にそって具体的に質問します。
 来年度予算には、わが党も要求し続けてきた私立幼稚園保護者負担軽減の増額や立石駅のエレベータ設置などの前進面もあります。
 しかし、これまで述べてきた点からみると、これでいいのか、と言わざるをえません。
 予算案は、どの捕ェ野でも区民的反撃が始まっています。
 まず、くらしの破壊が進行しています。
 国保料も介護保険料も値上げで、国保料は7年連続の値上げとなりました。全額医療費を払わなければ医療を受けられなくする「資格証」の発行は、23区内でもベスト3で、近隣江東5区では、断然トップになっています。国民健康保険制度がもつ社会保障の側面が崩される事態が進んでいます。隣の江戸川区は、発行ゼロです。
 社会保障制度としての国民健康保険の役割をあらためて見直し、有害な資格証の発行を抑制すべきと思うがどうか。
 保育園の民営化方針も重大です。
 この間、待機児解消のために民営化すると説明していますが、どうして民営化すると解消できるのですか。保育所設置のピッチをあげなければ待機児が増えるのは、自明の理ではありませんか。
 予算案では、歳入で1億円ほどの保育料の増を見込んでいます。ほとんど、増税の影響によるもので、とりわけ、配偶者特別控除の廃止による影響です。増税で収入が低下し、その上保育料が上がるのは、ダブルパンチです。その影響を取り除くために04年の水準にもどす改善策を実施すべきと思うがどうか。
 予算案では、新規事業として、「若者の自立支援」という事業が盛り込まれています。
 これまで、本区では若者対策をことごとく廃止してきました。青年寮の廃止、水元高校については、生徒、関係者が存続のための運動をしているのに、廃止を前提に「フィットネスパーク構想」とは何ごとでしょうか。
 この「若者の自立支援」とは、中学2年生に5日間の職場体験をさせるものです。
 本区では、夏休みを短縮してまで授業時間を確保したというのに全く矛盾しています。
 予算概要では、「就職しない若者が大きな社会問題となっている」ときめつけ、無権利、低賃金の不安定労働を拡大させ、若者が就職したくても就職できない状況について、企業の責任、国の無策を免罪し、その責任を若者におしつけて、その精神をたたきなおそうという、誠に恥ずべき発想です。
 若者の雇用促進をかかげるならば、30人学級の実現で若い教職員の採用や保育園の増設で若者の新規採用を拡大する等、夢のある雇用対策を進めるべきですが、答弁を求めます。
 第2に、小泉構造改革に忠実に従い、国の規制緩和方針を先取りしてまで、自治体が自治体でなくなる方向性に進もうとしています。
 PFI手法による立石図書館や保健所の建替は、PFI先にありきで、まともな検討が行なわれていません。これまでの「従来方式」が、最もコストがかかると結論付けたいために、公設公営の改善策を全く検討せず比較しているからです。
 市場化テストは、小泉構造改革の目玉として登場したものです。
 この「市場化テスト」法案は、先月法案の骨子が明らかにされた段階で、いまだに国会で法案が提案されていない段階です。それなのになぜ導入前提なのでしょうか。
 この「市場化テスト」とは、公共サービスの提供について行政と民間営利企業とが入札競争するものです。これにより、民間営利企業が公共サービスを担う事を促進するのがねらいです。そうなれば、公共サービスがビジネスの道具とされ、住民参加や議会の監視は後退し、まさに、自治体の主人公を民間営利企業に置き換え、単なる利用者・顧客にしてしまうもので、これこそ自治体破壊であります。
 指定管理者制度の導入では、文化国際財団の廃止という結論に導き、その結果、深刻な事態を招いています。
 指定管理者に一括して管理する方式をとったために、シンフォニーヒルズのレストランの社員約30名が失業という事態になっています。
 指定管理者制度を採用するのは区の意思として行なう事ですが、だからといって何の罪もない労働者を解雇させて良いと言うものではありません。
 文化国際財団をなくすのは区の都合であり、親会社にあたる区が責任を取るのは当然の事です。事実、文化国際財団の固有職員の不当解雇の訴訟が維持できなくなった際に区が和解金を払ったではありませんか。
 子会社が倒産した場合、その子会社の労働者の雇用や補償に親会社が責任を果たすことは当然とされています。
 シンフォニーヒルズのレストラン社員等の雇用を守るために、区として責任をもつべきですが、答弁を求めます。
 第3は、理念なき無策なまちづくりです。
 まず、防災対策についてはショッキングな数字が明らかになりました。
 先日、東京都防災会議の中間報告では、首都直下型地震の被害想定で、マグニチュード7.3の場合、本区では死者674名、火災による消失棟数も3万4千棟と最高になっています。
 今年度から始まった、耐震補強工事・建替助成制度は、いっそう強力に推進しなければならない事業です。これまでも、わが党は、助成件数をもっと増やすべきだと主張してきました。ところが、予算案では、実施計画の74件からじつに15件に後退させてしまいました。
 反省するとともに、耐震補強工事・建替助成を少なくとも実施計画どおりに戻すこと。さらに増額すべきと思うがどうか。
 二つ目に、立石の再開発です。
 再開発の中止を求める陳情が4000を超える署名をつけて区・都及び国に提出されました。同時に、立石駅の交通広場の都市計画を白紙撤回することを求める陳情署名も提出され、三千五百人余の署名が添付されています。
 立石駅前に4000平米のバスターミナルはいらないという明確な声が表明されました。2000年の都市計画決定がいかに無謀だったかを証明するものです。いまや、駅舎の北側は最大の矛盾になっており、再開発に固執する事が、連続立体交差事業を遅らせかねない事態となっています。
 立石駅周辺の再開発は交通広場計画も含め、抜本的な見直しをすべきと思うがどうか。
 第4は、学校つぶしです。
 予算案では、小中学校の統廃合のための「適正配置検討」をもりこみました。全国的な流れになっている30人学級になれば、むしろ教室は不足することに背をむけ、効率化を最優先して学校数を減らす事だけを目的にしたものです。学校統廃合の根拠にする「適正配置検討」は中止すべきと思うがどうか。
 第5は、あいかわらずのムダ遣いです。
 時代遅れの同和予算にしがみついている事に加え、駐車場事業特別会計に税金投入という最悪の事態となりました。
 このことは以前からくり返し指摘し、打開策としてイトーヨーカドーに応分の負担を求める等の提起をしてきましたが、聞き入れず、この事態をまねいた責任は重いと指摘しなければなりません。
 亀有パーキングリリオの利用者の70パーセントがイトーヨーカドーの客であり、ここに税金投入することは特定企業への税金投入であり、区民に説明がつくものではないと思うがどうか。また、税金投入回避の方策を探究すべきと思うがどうか。
 
(3、介護保険料の値上げに反対、利用料助成、施策の拡充を)

 次に、介護保険について質問をいたします。
 介護保険がはじまって、もうすぐ6年です。「介護の社会化」とか、「選択の自由」を旗印に施行されましたが、実際は、はじまって以来、今日まで利用限度額に対する平均利用率は、4割程度にとどまり、未利用者も20%に及んでいす。
 利用料が1割の定率負担とされたため、費用負担能力によって介護サービスの量が決まるしくみ、すなわち、どの位のサービスが必要かでなく、いくら払えるかによってサービスの内容を決めざるをえなくなっています。
 たりない部分は、家族介護にゆだねられるか、本人が我慢するかになっています。
 区長は、介護保険のはじまる前、「たとえ重度であっても、安心して住み慣れた町で過ごせるようにする」と言っていましたが、その言葉とはほど遠いものであります。
 最大の原因は、国が介護費用における国の負担を半分に引き下げたことにありますが、同時に区もそれに加担していると言わざるをえません。
 私は、第三期の出発にあたって、区が、当面、やるべき緊急課題について求めるものであります。
 第1は、保険料負担についてです。
 今回の諮問では、平均値上額を3,613円とされています。現在積み立てられている給付費準備基金13億円のうち9億7千万円を活用したとされております。
 しかし、残る3億3千万円も、第1号被保険者のものであり、値上げ幅をもっと押さえることや、利用者の負担を軽くするために活用すべきものです。
 先程も述べました通り、税制改悪の影響で、保険料段階が上昇するひとが16・1%、6人にひとりの割合で保険料があがることになっています。
 今回の事業計画で緩和策として現行6段階を8段階にしましたが、それでも現在の2段階の人が新5段階になると、月額2,324円が4,064円となり、保険料が2倍近くになるという過酷さです。
 収入が一切増えないのに保険料だけが引き上げられるということがないよう助成制度をつくるべきであります。区長の見解を求めます。
 第2は、利用料の減免です。
 昨年の10月から施設の居住費、食費が介護保険給付からはずされ全額徴収となりました。その負担があまりにも大きいために、住民税非課税世帯を対象に「補足給付」をおこなうようになっています。
 しかも「補足給付」は、特別養護老人ホーム、老健施設、療養型医療施設等に限定され、デイサービスやグループホームには適用されません。
 今までも低所得者にとっては、重い負担だった利用料がさらに過重となり、利用が抑制されようとしています。
 すでに千代田区では、デイサービスについて、利用者が420円の負担増となるところを200円を補助しました。さらに、特養老人ホームの利用者や補足給付対象外の区民にまで補助の幅を広げています。
 荒川区では、デイサービスとデイケアの食費について、非課税世帯を対象に補助をしています。
 わが区でも、低所得世帯を中心に食費の減免をすべきと思うがどうか。
 また、グループホーム、小規模多機能型居宅介護を低所得が利用できるように居住費、食費の補助をすることを補助をするものです。
 今回の介護保健法の改定では、認知症の痴呆ケアを重視したとされています。これまで介護保健事業は、「身体ケア」に重点がおかれ、「痴呆ケア」が後方におかれてきました。そのため、家族がいればその負担は家族が負い、ひとり暮らしであればヘルパーと近所、知り合いが負うという状況が野放しにされてきたと思います。
 そうした中で、認知症対応型グループホームの役割は大きいものです。
 認知症患者にとってグループホームは、家庭的な雰囲気の中で、住み慣れた地域の中で生活を継続していくので効果的であると言われています。
 また、同じ理由で、今回新たに追加された小規模多機能型居宅介護も、その効果が期待されます。
 しかし、これら施設が介護保健のサービスに加えられたものの、居住費、食費が補足給付の対象になっていないため、非課税世帯の人は利用しようにも利用できない状況にあります。
 区が思いきった助成策をもうけて、国民年金受給者であっても利用できるようにすべきと思いますがどうでしょうか。
 第3は、施設建設の見直しです。
 介護保健のはじまる前の年の特別養護老人ホームの待機者は、270人でした。
 それが、昨年秋の決算委員会資料によると1,154人とふくれあがっています。この5年間で待機者が大幅に増えてしまいました。
 区は、今年1月、優先入所基準を見直しました。その結果、一定の改善が進みました。しかし、それでも12点以下の人たち、60%を占めるひとが入所できない基準です。
 しかも、この基準をみると同居者の状況を最高8点にしてありますが、どう計算しても8点になりません。この点を委員会で、わが党の議員が質問いたしましたが、はっきりした答弁が返ってきませんでした。
 介護保険法では、特養老人ホームの入所資格は要介護1以上となっています。最初から、資格のある要介護1の人を除外してしまうというのは、どう見ても瑕疵ある基準といわなければなりません。改める必要があると思いますが、答弁を求めます。
 同時に、待機者が激増するというのは、それだけで、建設が追い付いていない何よりの証拠です。特養老人ホームの建設計画を待機者に見合った数に引き上げることを求めます。
 また、特養不足は、ショートステイが特養代わりにされてしまっていることは、すでに指摘したとおりです。申し込みを開始する3ヶ月前にまたたく間に定員がうまってしまうと言われております。
 これでは、在宅介護をささえるというショートステイの役割が果たせなくなってしまいます。
 区が一定数のショートステイ床を買い取って確保すべきと思うがどうか。

 以上で、質問を終わりますが、答弁いかんによっては再質問させていただきます。