2007年第1回定例会代表質問 質問者 渡辺好枝
自治体としての役割は、区民のくらしを守ること

【目次】
1、区民の生活実態をどう認識しているか・予算案について
2、「女性は子どもを産む機械」厚生労働大臣は直ちに罷免すべき・子育て支援について
3、まちづくりについて
4、教育について
5、亀有駅前駐車場への税金投入は問題・指定管理者制度について
6、NECとの契約について

 日本共産党葛飾区議会議員団を代表して質問いたします。

(区民の生活実態をどう認識しているか・予算案について)
 まず、2007年度予算は区民生活に重大な影響を及ぼすものとして到底容認できるものではありません。
 その根本には、区長の景気動向の認識と区民生活の実態との間に乖離があるからです。
 内閣府が発表した「日本経済2006-2007」いわゆる「ミニ経済白書」では、「過去に比べて回復に力強さが欠けている」としています。名目経済成長率は、「いざなぎ景気」の場合、年平均18・4%増だったのに対し、今回の回復局面は1・0%増にすぎません。名目賃金にいたっては、「いざなぎ景気」の場合、期間中の物価上昇率を大幅に超える12・8%増でした。 ところが、今回は名目賃金がマイナス0・1%。景気回復といわれても、賃金が減ってしまっているのです。
 賃金の動向について白書は、小規模事業所で減少が続いていることに警戒感を示しました。従業員規模三十人以上の事業所と三十人未満の事業所の賃金指数の伸びを比較し、「二〇〇六年に入ってから規模が大きい事業所では給与の増加に転じたのに対して、小規模事業所の給与は減少している」と指摘しています。
 景気回復の中で賃金を押し下げる方向に作用した要因として白書は、非正規雇用の拡大に注目し、その賃金は低い水準にあり、企業内でも非正規雇用者比率が高まることは平均賃金水準を押し下げることになると指摘としています。
 大企業が史上最高の収益を上げる一方、働いても働いても貧困から抜け出せないワーキングプアが社会問題になっています。
 その主因は、非正規雇用の拡大です。今回の景気回復は「貧困と格差の拡大」が共存していることが、白書の分析からも浮かび上がってきます。
 加えて、これまでと今後の増税、医療費の値上げ、年金改悪などの社会保障改悪が、区民のくらしを直撃しています。 
 わが党議員団は、先月から区民アンケートを実施していますが、既に、前回の2倍近くの1300通の返信があり、そのうち「以前より生活が苦しくなった」と回答した方は62%に達しました。
 一方で、「良くなった」と言う方は、わずか1,3%です。
 寄せられた声は、「結婚をひかえていますが、お互い専門職で帰りは22時から23時です。子どもを預けられる親戚もないため、生むことはあきらめなければなりません」20代の女性です。
 「一度正社員をやめたら、もう二度と正社員になれません。あらゆる資格をとりましたが、ワーキングプアになることは確実だ。努力しても報われない事を改めて知りました」三十代の女性の声です。
 また、「年寄りをばかにしたような低賃金の仕事しかない。働ける場を確保してください。食う事が先です」60代の男性の声です。これらはほんの一例ですが、深刻な声があふれています。
 ところが、区長は所信表明で、「月例経済報告書の各種統計発表によりますと・・・景気は回復基調にあり、企業部門も持続する好調さが家計部門に波及して、国内民間需要に支えられた景気回復が続くものと見込まれる」といいましたが、区長の認識と区民の置かれている現状とは、かけ離れているではありませんか。
 区長が紹介した現状認識と区民の生活実態とに大きなズレがあると思いますが、答弁を求めます。

 2007年度の区予算案では、特別区税が約57億円ほどの増となっていますが、これは主に税制改正の影響によるものであります。
 住民税がフラット化され、本区は、納税者22万人の61%、13万人への増税額が33億円ほどです。
 これは、あとに述べる、国保料と第二号被保険者の介護保険料にはね返かえり、大きな負担増となります。 
 定率減税の全廃による増税が11億円であり、その分はまるまる増税でありこの二つの増税により57億円の増税の約8割を占めています。
 区民の収入が増えて増収になるのではなく、多くの区民が増税と負担増を強いられることについて区長の見解を伺いたいと思います。 

 一方、区長は、挨拶の中で、今後の懸念も示し、義務的経費の中で、「扶助費」は依然として高い水準で推移するものと考えられていると言及しています。
 扶助費が高まることを敵視する事こそ偏った見方であります。
 ましてや、今後も、一部の「勝ち組」と多くの「負け組」を生じさせ、格差社会が拡大しようとする国策が明らかだからです。
 今、自治体として果たすべき役割は、区民のくらしを守る事に徹するべきであり、とりわけ、低所得者から吸い上げた増税分、負担増分は、医療、介護などくらしにかかわる制度の改善にこそ充てるべきではありませんか。
 2007年度予算には区民による運動、わが党も議員提出議案・予算修正も繰り返し行い、子どもの医療費の無料化が中学3年まで拡大された事、障害者自立支援法による負担増などの問題点に対し、障害者自身が命がけの運動を広げ、わが党としても本会議で改善を求め、負担軽減の制度拡充をかちとられた事など前進面もあります。
 しかし、区民のくらしを守るためには区が取り組むべき課題は山積しています。

 まず、増税から区民を守ることです。
 そのために、特別区税条例の改正を求めます。
 これまでも紹介してきた通り、自治体の権限で独自の住民税の減税が行われています。
 2007年度から始まった区民税のフラット化は、税の累進制を全く否定するもので税の民主制に反するものです。自治体の権限で、低所得者や、また、税の軽減が必要な区民を救済する必要があります。
 区税条例を改正し、低所得者などへの軽減を行うべきと思うがどうか。

 二つ目に国民健康保険料などの軽減についてです。
 わが党は繰り返し抜本的な改善を要求しましたが、結局、均等割の1800円の大幅な値上げをはじめ、低所得者ほど負担増の割合が重くなり、逆に所得の高い層では安くなると言う逆転現象が起きる結果となりました。
 介護保険料も、住民税方式に固執し、その結果、第二号被保険者の値上げが行われます。
 国民健康保険料に対する区独自の軽減措置を実施すべきであり、介護保険の第二号被保険者に対する軽減も実施すべきと思うがどうか。

 三つ目に、障害者自立支援法による施策について、さらに改善を行う事です。
 障害者作業所で工賃を上回る利用料の問題も解決しなければなりません。 
 昨年の第四回定例会で、「利用者の負担が工賃を上回るケースがあることから、利用者の就労意欲の低下を防ぐための方策が必要」と区は答弁しました。
 この四月から確かに国は、利用料軽減の是正をおこないましたが、依然として、利用料が工賃を上回るケースが残されています。
 これを解消するには、応益負担の撤回しかありませんが、区独自に補助制度を創設し解消すべきと思うがどうか。
 また、支援費制度やそれ以前の制度と同様に給食費については、全額公費負担の制度を創設すべきと思うがどうか。答弁を伺います。

 07年度当初予算では、特別区税が、先程申し上げた通り57億円の増は主に増税によるものです。一方で、積立金の合計は60億円で、増収分をそっくり積み立てるなどとんでもありません。
 06年補正予算では、129億円を積立て、合計584億円でバブル期の額に達しているではありませんか。
 この財源を区民施策にまわすよう強く指摘するものです。

(「女性は子どもを産む機械」厚生労働大臣は直ちに罷免すべき・子育て支援について)
 以後、個別のテーマにそって質問します。
 第1に、子育て支援についてです。
 私自身二人の子どもを育てましたが、感謝されることがあっても、「機械よばわり」されるいわれはありません。 
 厚生労働大臣が「女性は子どもを産む機械」と発言した事は、私は人間として、女性として絶対に容認できません。
 一刻も早く、総理大臣が柳沢厚生労働大臣を罷免べきと思います。
 そこで、この発言に対して「葛飾区男女平等推進計画(第三次)」の精神にてらし、区長のお考えについて答弁を求めます。
 さて、母子家庭への支援について質問します。
 あえて母子家庭への支援を述べるのは、この層にワーキングプアなど格差問題がとりわけ集中しているからです。
 世界経済協力開発機構の直近の調査では、OECDによる基準の貧困率では、日本のひとり親家庭世帯の貧困率が57.9でダントツのトップだという恥ずべき結果が公表されています。
 わが党がおこなった区民アンケートにもその一端が伺えます。ある母子家庭のお母さんからは「とにかく自己管理してがんばった分収入が増えて、児童扶養手当の支給がとまりました。そしたら水道代の補助もひとり親医療証もストップするのですね。あわててしまいました。手当を必要としないことは喜ぶべき事なのに、反面不安でいっぱいです。」また別の方からは、「補助が18才で打ち切りになるので大学進学は経済的に大変です」と訴えています。
 そもそも、児童扶養手当支給の所得基準が低く設定されている事自体が問題です。
 こうしたときに母子家庭の「命綱」となっている児童扶養手当を大幅に削減し受給が5年を超えたら最大で半分にまで減額することや生活保護を受けている母子世帯の加算を来年度から廃止しようとしています。
 本区では、ひとり親世帯で、児童扶養手当を受給、また、生活保護を受ける母子世帯はおよそ4000世帯ほどと推定されます。
 貧困であるがゆえに教育を受ける事ができない事態を打開するためには、母子世帯の「命綱」を断ってはならないものです。
 国に対して、手当の削減、生活保護の母子加算廃止の中止を求めるとともに、区独自の対策も実施すべきと思うがどうか。

 次に、保育園の増設と延長保育についてです。
 基本計画に示されている増設計画では、待機児を解消することはできないと指摘してきました。
 増設しても増える需要に追いつかず毎年三桁以上が待機となっています。
 増設計画の改善を要求します。答弁を求めます。
 延長保育については、公立保育園で現在、23園、来年から5園増えますから、延長保育未実施の区立保育園は、あと15園となりました。
 職員団体からも、全園で実施すべきとの声も上がっています。本区では、認可私立保育園は3園をのぞき延長保育を実施しています。
 必要な職員を採用し、公立保育園全園で延長保育を実施すベきと思うがどうか。
 また、民営化を計画している保育園の延長保育を見送ったのには、なにか訳でもあるのかどうか。答弁を求めます。

 学童保育については、区長は挨拶で「待機児童を発生させないようにつとめる」といいました。
 しかし、この間、入所できる児童定数40名、例外として55名という概念を完全に放棄し、年ごとに60名、70名以上と際限なく入所者数を拡大し、ついには100名を超えるクラブまであらわれました。
 「待機児童を発生させない」というどころか、入所希望があれば、条件を満たしていない子ども以外はすべて「詰め込んでいる」のが実態ではありませんか。
 入所児童定数を決めて、施設の増設を求めます。答弁を求めます。

(まちづくりについて)
 第2に、まちづくりについてです。
 まず、高砂の開かずの踏切対策にかかわることです。
 高砂の開かずの踏切対策は住民の悲願です。そのための連続立体交差化事業は必要な事業だと思っています。
 連続立体交差化事業の準備として、07年度20億円に続き、08、09年度にそれぞれ30億円積立て、合計80億円を積み立てると言うもので、それが国に対して優先順位をあげるためにも有効だとの説明です。
 その80億円は、国庫負担を前提とした区の負担分だとの説明も受けています。
 そうであるならば、高砂駅の連続立体交差化事業の概要について明らかにしてください。答弁を求めます。
 高砂駅の開かずの踏切対策としての緊急課題と長期の課題の整理が必要だと思います。
 来年度南側にエレベータが設置される事は歓迎しますが、同時に、新しい階段通路は南側だけではなく、北側にも設置すべきと思うがどうか。
 エスカレーターやエレベータを階段に設置し、自転車でも往来できるよう改善策に投資するのも住民にとって歓迎されるのではありませんか。答弁を求めます。

 次に、新小岩駅周辺のまちづくりについてです。
 いま、わが党区議団が実施している「区民アンケート」では、新小岩駅周辺のまちづくりの要望や意見の多くは、新小岩駅南北自由通路の実現、北口駅前広場の環境整備、新小岩駅南口交差点の歩道橋下に横断歩道設置を強く求めています。
 07年度予算案では、新小岩駅南北自由通路の実現化に向けて用地測量等や北口駅前広場の環境整備を進めていくとしています。
 長年にわたり、住民のみなさんと新小岩駅南北自由通路の実現に向けて、署名行動をはじめ、区への要請、JR東日本千葉支社への要請を繰り返し、やっと用地測量までこぎつけたというのが実感です。
 そこで伺いますが、工事着工までのスケジュールについて明らかにしていただきたい。
 また、このほど、要望の強かった北口駅前広場に公共トイレの設置が決まりましたが、広場の整備については、植栽、ベンチ、シンボル的な時計台、郵便ポストの設置などの声が寄せられています。
 住民の声を生かした、快適な新小岩駅北口の環境整備をすすめるべきと思いますが、どうか。
 さらに、地元町会からもわが党のアンケートでも強く要望の出されている新小岩駅南口交差点の歩道橋下に横断歩道を安全とバリアフリーに配慮する形で設置すべきと思うがどうか。

(教育について)
 第3は、教育についてです。
 来年度から、教育委員会の施設計画担当課長が教育計画担当課長に変更される旨の説明を受けました。
 「未来を見据えた学校づくり」の目的は、単に学校施設のあり方だけの問題ではなく、今後の葛飾の教育に踏み込んだものになるのではと言う私どもの危惧が形になってあらわれたものです。
 この方向は、競争と管理教育をいっそう強化するものであり、今日の教育問題を解決するものではありません。
 今起きている矛盾の反映として、教職員の退職問題があります。
 この三年間で、小中学校教職員の退職者数は、定年退職者より定年前に退職する数が上回っているというのです。
 これは、異常なことだといわなければなりません。
 私は、そもそも国と都、加えて区教育委員会からも競争主義、序列主義の教育のなかで、極度のストレスをかかえ、また、事務量の大幅な増加が教職員本来の子どもたちとのふれあい、教職員間の連帯、教材研究の時間さえ奪われている実情のあらわれだと思います。
 教育委員会として、その原因についてどうとらえているのか見解を伺います。
 生涯学習の場としての社会教育館の廃止は、区民にとって重大問題です。
 区は「公共施設見直し計画」の中で、これまで以上に「コミュ二テイ拠点施設」として、区で担うべきサービスを提供、充実していきたいと述べてきました。
 しかし、社会教育館の設置目的も名称も廃止し、社会教育主事を社会教育館から引き上げたことは、教育機関として成り立たないものです。
 引き続き、社会教育館は生涯学習の場として存続すべきであります。答弁を求めます。 

(亀有駅前駐車場への税金投入は問題・指定管理者について)
 第4に、指定管理者制度について質問します。
 区は、指定管理者の運営によって、@利用の促進が図られA利益が上がりBサービスがよくなるとしてなんでも「指定管理者まかせ」という態度です。
 ところが、駐車場事業特別会計において、06年度は、現実にはどうなったでしょうか。数字を正確にするには、決算を待たなければなりませんが、駐車場事業の指定管理者は利益が上げるどころか、予定していた納付金一億円が納入されない見通しとなり、今回の補正予算で7500万円の新たな税金投入が必要になりました。
 指定管理者制度を「バラ色」に描いて大失敗となった典型であります。巨大シッョピングセンターアリオの出店が、リリオ駐車場にも及ぶ事は、区としても当然、予見できたのではありませんか。
 予算の見込みが全く甘かったと言う反省が求められていると思うがどうか、答弁を求めます。
 また、奥戸の温水プールの大規模改修が必要になりました。区民の安全を確保すると言う観点に立てば、当然のことですが、問題は、区が指定管理者に休業補償を行うことです。
 これもまた、指定管理者制度の導入によって、むしろ区の負担が大きくなるのではないでしょうか。
 不測の事態が起きた時の契約の見直しが必要だと思いますが答弁を求めます。

(NECとの契約について)
 最後に、NECとの契約に問題があった事について質問します。
1月15日に発表された「葛飾区行政監査報告書」によって、その後、職員が処分され委託契約について新たな合意を行ったことが、1月29日、2月7日の総務委員会で質疑が行われました。
 わが党議員の質問に、区長は最後まで答弁を拒み、部課長に答弁させる事に終始しました。
 しかも、区長は先般の所信表明でもこの問題には、一言も触れませんでした。
 これだけ重大問題でありながら、あえて反省がない事の現れだと言わなければなりません。
 朝日新聞等によれば、当時NECは中小都市の基幹システムの構築しかできていなかったと報道されました。
 葛飾区は、大都市型の基幹システム開発の実験台とされたのではないか、そうであるならば、3億円の基幹システム構築の委託契約も税務課で生まれた不具合による残業代も、また、問題となった2850万円の税務システムの改修委託契約もNECの責任によるものですべて区に返還させるべきとわが党は主張しました。
 この事件をとおして「官から民へ」というかけ声のもとで、葛飾区が地方自治体としての主体性をなくし特定企業まかせにした姿が明らかになりました。
 そして現実に税務課で業務が混迷し、年度末になってNECが「年度末にはできません」といっているのに無理矢理2850万円の税務システムの改修委託契約を結び、前代未聞の事件となり、三名の職員が処分されました。
 事件は偶然起きたものではありません。
 契約の額からいっても、一課長が契約できる金額を遥かに上回るもので、この契約はいったい誰がゴーサインをだしたのか、わが党は疑問をもっています。
 税務システムの不具合で残業が急増しているさなかに、区長自身が、雑誌にも登場し、自治体として最先端のITシステムを採用していると自慢していました。
 一昨年の区長選挙の際には、「電子自治体としては23区中2位」と書かれたビラまで配布していたのです。
 その責任は、担当課長などの処分だけでは済まされるものではなく、区長自身にあるのではないのか。責任ある答弁を求めます。

 わが党は、資料要求や参考人招致などの観点から、百条委員会の設置が問題点の解明に絶対必要である事を重ねて強調しまして、質問を終わります。
 答弁いかんによっては、再質問を行います。