●第3回定例会 中村しんご区議の一般質問  2009
自治体のこころをとりもどそう・・・16年間の現区政を問う


【目次】
1、慈恵医大青戸病院の放射線がん治療について
2、青木区政の16年間について
 @福祉施策について
 A民営化路線について
 B区政における不透明な支出について
 C葛飾の教育について
1、慈恵医大青戸病院の放射線がん治療について
 私は、日本共産党葛飾区議会議員団を代表して、区政一般質問を行います。
はじめに慈恵医大青戸病院の建替えについて質問します。
 7月26日、慈恵医大青戸病院の建替え問題についての地元説明会が行われました。席上、病院側が質問に答えて、新病院では放射線治療を計画をしていない旨をのべた上で、「患者さんについては、整備の整った本院に行っていただくことがベストだと考えています」と答弁しました。
 昨年5月2日、区長名で「区内唯一のがん放射線治療病院であ」り、「区民のがん死亡率が高い現状から、その存続を強く願う」と要望書を出しました。それに対して、慈恵医大が、まったく回答をしていないまま着工をするなら、あまりにも葛飾区を軽んじていると言わざをえません。
 また、このまま推移すれば、葛飾区は放射線がん治療の空白区になってしまいます。
 慈恵医大青戸病院の建替えは、区の公園用地を利用しておこなうものです。この土地は、1995年3月、葛飾区が、12億円をかけて東京タングステンから買収した後、区は14年間、公園にすることなく、空き地にしてきました。
 そこまでしているのですから、道義的にも区を無視して着工など許されません。
 区長は、「放射線ガン治療を残す会」にたいし、「再度、話しあってる」と回答しましたが、いよいよ、慈恵医大側の態度が明確になりつつある今、改めて話あうべきと思いますが、いかがでしょうか。答弁を求めます。

2、青木区政の16年間について
 さて、8月30日の総選挙の結果は、ご承知のとおりであります。
 小泉内閣以来の構造改革路線は、とりわけ国民に深刻な被害をもたらしました。
 派遣労働者などの非正規雇用の労働者は、労働者全体の3分の1を占めるようになりました。また年収200万円以下の労働者は、この10年で、200 万人以上も増加し、1000万人を超えています。失業の増大も深刻です。
 02年以来毎年、2200億円の社会保障費の削減をすすめ、年金制度の改悪、生活保護の母子加算廃止、障害者自立支援法、後期高齢者制度など社会保障の連続改悪がすすめられてきました。
 こうした国民いじめの政治を何としても終わらせたいという思いが、国民の審判として下されたものと思います。まさに新自由主義路線を拒否する国民の審判であると思います。
 区長はこの結果をどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。今度の選挙の結果は、決して区政運営と無関係ではありません。
 何故なら、青木区政の16年は、新自由主義的行政運営だったからであります。今年二月の本会議で、わが党の質問に答えて新自由主義路線を賛美いたしました。
 改めて、その時の議事録をみてみますと、区長は、「新自由主義と申しますのは、公共サービスの民営化、規制緩和による競争の促進など、イギリスやアメリカにおいて発展をした考え方であり、我が国においても、平成12年に行政改革大綱を閣議決定するなど、強力に推進。本区においても、民間活力を最大限活用する取り組みを進める。」などといっています。
 これを反省すべきではありませんか。区長がなすべきことは、自治体の心をとりもどし、区民本位の区政を再構築することであります。

 そこで私は、四つの問題で質問をいたします。

@福祉施策について
 第1は、切り捨ててきた福祉を復活することです。
 まず施設建設が焦眉の課題になっています。
 無届老人ホーム「たまゆら」の10人にものぼる死亡事故は、介護保険の欠陥性を改めて浮き彫りにしました。特別養護老人ホームの不足が原因とすることは厚生労働省でさえ認めているところであります。
 ところが、今年6月の第2回定例会で、特別養護老人ホームの建設計画は、「実情にあっている」と答えました。しかしわが区の待機者は6月1日現在で、1713人にのぼります。介護保険がはじまった2000年の9月の待機者は、327人でありますから、実に、5倍以上です。高齢者人口は、71,085人から93,691人、1.3倍です。特養老人ホームの待機者の伸びが際立っているではありませんか。
 それで、どうして「実情にあっている」と言えるでしょうか。あっているのは、厚生労働省の机上の基準だけではありませんか。
 区民の実情から出発するよう改めるつもりはありませんか。同時にショートスティの増床をふくめ計画を練り直すべきであります。

 もうひとつは、経済的給付です。
 区長は、2000年介護保険導入前後の「福祉再構築」計画以来、経済的給付を削減してきました。
 福祉電話、老人福祉手当の廃止、出張理美容の有料化、紙おむつの所得制限などであります。
 ねたきりの高齢者に対する紙おむつ支給は、さらに2004年には、支給対象者を要介護4・5で非課税という過酷な条件にし、その結果、受給者を5分の1にまで激減させてしまいました。
 都の制度改悪を契機とするものですが、おなじ条件下でも、江戸川区では課税者も対象にしていますし、足立区では、要介護3以上も支給をしています。おむつ支給の所得制限を緩和すべきです。
 老人福祉手当の廃止は、直接、介護をする家庭の破壊を促進しました。
 さらに施設での食費負担やホテルコストの導入によって、介護地獄を過酷なものにしています。
 江戸川区では、熟年者激励手当事業によって、要介護4・5の在宅のかたに月に2万5千円を支給しています。
 また葛飾は敬老金を廃止しましたが、足立区では、生きがい奨励金として、70歳以上に4千円を今も支給しています。
 何故、葛飾だけ、こんなに冷たいのでしょうか。
 今年10月からは、住民税の年金天引きがはじまります。介護保険料、後期高齢者医療制度、国保料の天引きに引き続くもので、窓口は高齢者からの苦情で大変な事になるでしょう。
 高齢者が安心して老後を過ごせるよう、老人福祉手当、敬老金など経済的給付の復活が必要です。
 障害者の皆さんの福祉タクシーは、4年前、大幅に改悪され、金額、年齢要件、所得制限など総合的に見て23区で最低となりました。 さすがに、区民の運動によって、一定の改善をしましたが、最低ラインであることには変わりありません。 所得制限と年齢要件を撤廃すべきであります。
 低所得者対策では、基本計画に計画事業が何もないという事態になっています。
 入浴券、入学準備金、赤ちゃんの栄養補給など、わずかに存在をした施策もいまでは跡形もなくなってしまいました。
 生活保護の、老齢加算、母子加算も廃止しましたが、冷酷さの悪のりと言わなければなりません。
 格差と貧困を解消するには、税や社会保障による所得再分配によって低所得者への生活を底上げすることが欠かせません。
 経済的給付を復活させることを求めるものであります。
 こう言う話をすると、必ず出てくるのが、財源論であります。
 わが区の積立金は、今年度末で、782億円にも達します。
 生活難に苦しむ区民を尻目に、施策を削り、必要な対策をさぼって財源を余らせてきた結果です。
 何を優先するのか、自治体の姿勢が問われます。
 この積立金の一部でも取り崩して、区民生活にまわすことを求めます。

A民営化路線について
 第2に、「民にできるものは民に」を合言葉にした民営化路線から決別することです。
 民営化路線というのは、一言でいって公の責任を放棄するものです。その結果、まず、子どもなど、弱者にしわ寄せがおきているではありませんか。
 たとえば、父母の反対を押し切って保育園4園、単独学童保育クラブの民営化を強行してきました。堀切地域の公設民営の保育園では、利益優先のため職員の賃金が低く保育士が長続きしない状況となっています。保育士が安定しないのは子どもにとってもマイナスです。
 学童保育クラブでは、100人以上の大規模学童が出現しました。子どもたちはおやつの時間もゆったりとできない、けがも増えるなどの問題が広がっています。
 こうした問題があるのに、区は保育所等については「可能な限り民間に任せる」としています。
 自治体がやるべきことは、保育園の待機児解消、そして学童保育クラブの大規模解消に全力をあげることではないでしょうか。
 区長は、先ほどのあいさつで、待機児については足立区や江戸川区と比較して少ないと言われました。待機児を他区と比較してみますと、確かに4月現在では少なかったかもしれませんが、7月1日現在、本区の待機児は253人にすでになっていることを直視すべきであります。
 また学童保育クラブでは、国のガイドラインで示された70人以下にすることが当然であります。しかし、そこにとどまることは許されません。区長は、「児童の安全」「親が安心して預けられる」環境づくりを強調しましたが、それならば一人当たりの面積を明確にし、それに見合った計画が必要ではありませんか。  
 保育園の待機児解消、学童保育クラブの大規模化解消のためには、民間への支援だけでなく区が責任をもって施設を増設すべきと思いますが、答弁を求めます。
 第2に、民営化路線の下で、官製ワーキングプアが増大していることです。
 区は、10年間で940人の正規職員を削減したことを行革の成果と自慢しました。さらに「改革パワーアッププラン」では、「官の業務の中に民の力を取り入れ」、さらなる民営化で人員削減を推進することを掲げました。
 貧困と格差が広がる中、民営化路線に突き進み、区自身が官製ワーキングプアを拡大していることは、暮らしを守る最も身近な自治体として、その責任を放棄していると言わなければなりません。
 第3に、民営化によって行政に求められる透明性を急速にうしなっているという問題であります。
 公共施設の管理運営を委託する指定管理者制度では、入札がゆがめられました。1位指名が辞退した場合、2位指名が1位にならずに突然区がルール変更をして追加公募を行いました。マスコミからも「不可解な行為」と報道されました。
 また、指定管理者決定後に、委託料の追加という便宜を図っています。文化会館には7000万円、テクノプラザには6600万円です。しかし、どういう事業にいくら使ったのかという決算については企業会計を理由に秘密になったままです。スポーツセンターには1億5,750万円でトラック競技場の人口芝化の工事をしました。いずれも公募段階ではなかったものです。
 この3つの施設は、制度導入前には、予決算や事業内容などを検討する評議員会等があり、議会も参加していました。
 公共施設は区民の大事な財産です。事業内容や予決算に透明性があって当然です。しかし、公共施設を使って企業に儲けさせるために、あえて指定管理者制度を導入し、評議員会等をなくして非公開にしたために、行政に求められている透明性がなくなってしまったではありませんか。まさに区民参加を否定する行政運営そのものであります。
 保健所と立石図書館の建て替えについては、民営化の手法として位置付けていたPFI事業は失敗しました。
 区は、このPFI事業を実施するため4,464万円もの委託費をかけて調査報告書をつくり、PFI事業をバラ色に描きましたが、無駄となりました。そのことについての反省は未だに聞かれません。
 PFI事業は、大手ゼネコンが中心となるものです。あえてこの事業に固執することは、区内中小企業を区自身が排除することにつながるのではありませんか。
 自治体としての責任・役割を果たしていくためにも、「民にできるものは民に」、この路線から決別することが強く求められています。
 
B区政における不透明な支出について
 第三に、無定見な住民に説明のつかない、理解不能な税金の使い方が目立ち、とりわけこの四年間は特にひどくなっていることです。
 まず、06年12月に起きたNEC疑惑はその象徴的なものでした。
 もともとこの問題は、税務課の残業代が他の部署に比べて突出していたことからはじまりました。なぜ残業代が突出して増えたのかといえば、
NECが基幹システム開発の委託を受け、区が3億600万円もの代金を支払ったにもかかわらず不具合続きで、さらに改修委託費2850万円かけてもなおらなかったからです。
 わが党は、議会でなおらなかったのになぜ代金を支払ったのか徹底糾明するために百条委員会の設置を求めました。最終的に、区長自身の減給で幕引きをはかりましたが、全容は明らかになっていません。
 こうした事態の背景には、NEC言いなりで、税金投入を行ってきたからにほかなりません。
 二つ目に、大学誘致計画のために、コンサルタント会社に調査委託をした問題です。
 05年度の予算では1575万円、07年度では2094万円、同じコンサルタント会社に委託がされ、「順天堂が葛飾にやってくる」と突如、話が浮上しました。ところが結局、この順天堂大学は進出しませんでした。いったいこの委託料は何に使われたのか、これも未だに不明です。
 この大学誘致に関連して、東京理科大学への53億円の支援も、区民に説明がつき
ません。
 区長は、大学の敷地内にフェンスを設けない、図書館、ホール、カフェについて区民も利用できると「地域貢献策を考慮して53億円は妥当」とくり返し表明してきました。しかし、大学の公募要項には「大学固有の土地及び建築物については支援しない」と明確に示されていました。いったいどこからどこまでが大学固有のものか、到底線が引けるものではありません。
 こうした説明のつかない53億円の支援は、法律上も、条例上も何ら規定がなく、まさに大学を誘致したいがための「思いやり予算」だというべきものであります。
 わが党は、大学誘致に反対しているわけではありません。しかし、大学に来てもらうためには「何でもやってもいいのか」ということなのであります。
 立石駅周辺の再開発も大問題です。
 この再開発には、1999年度から昨年度までの10年間、私の試算によると、事務所を設置しはじめてから維持するのに52,018,999円、アンケートをとったり、地域住民を賛成側に誘導したり、当初計画を変更して超高層ビルをたてる計画にしたりと、調査委託費は139,885,000円、これに人件費を加えれば4億円を超える大金を税金投入しているわけであります。
 「まちづくり」といいながら、賛成派を無理矢理組織し、再開発に反対している住民との対立を激化させ、地域コミュニティーを破壊し、“まち壊し”をしてきたのであります。
 立石駅周辺再開発は白紙に戻し、住民の意見をよく聞くこと、「住民本位のまちづくり」に立ち返るべきです。区長、いかがですか。お答えください。
 また、4年前、6億円もかけてつくった新柴又駅前広場も、典型的なムダ遣いの一つです。
 ターミナルが出来てから2年後に突如バスが入ったかと思ったら、京成バスが20便も減りました。まさに、住民にとってみれば踏んだり蹴ったりではありませんか。
 にもかかわらず、これから立石、四つ木と駅前広場をつくろうというのですから、まったく反省がないとしか言いようがありません。
 この他、葛飾版「カンポの宿」、伊豆高原荘も、設置当時22億円もかけてつくっておきながら、03年に1億7千万円で民間に売却してしまいました。先ほど述べた指定管理者やPFIも同様であります。
 また、亀有再開発における駐車場設置にあたって、イトーヨーカ堂が付置義務をはたさないことを容認し、区が37億円の事実上の肩代わりいたしました。その結果、昨年度から駐車場特別会計に税金投入することを余儀なくされました。まさに、わが党が再三指摘をしてきた通りとなったものです。
 区長、こうしたムダ遣いについて、区民に反省を表明すべきではありませんか。いかがでしょうか。
 そして、もう一つ指摘しておかなければならないのは、同和事業へのムダ遣いです。
 青木区政16年間、一貫して部落解放同盟葛飾支部に特権的扱いで区民の税金をつぎこんできました。
 この15年間で2億円余りに及びます。
予算書や決算書の中では項目を変えたり、コソコソ隠したりしながら事業をすすめてきました。
自治体が部落解放同盟という特定の団体と癒着していることは放置することはできません。自治体の在り方として根本問題だからであります。
 同和事業をただちに廃止すべきです。答弁を求めます。

C葛飾の教育について
 第四は、教育についてです。
 この16年間に教育も大きく変貌しました。
 まず、差別・選別教育と競争原理を強化してきたことです。
 教育振興ビジョンに基づき、学力定着度調査という名の学力テストを実施し、その結果を公表してきました。区内の公立学校に学校間格差が生じているということは、本来教育委員会がその責めを受けるべきなのに、同時に学校選択制を導入し、選択されない学校の校長や教職員にその問題があるかのような、許しがたい責任転嫁に終始してきました。
 教育現場に新自由主義的な競争原理を振りかざし時流に乗っているおつもりなのかもしれませんが、こうしたやり方もほころんできています。
 学力テストについては東京都が廃止しました。国の学力テストもわが党はサンプル調査が妥当だとの主張してきましが、新しい政権与党も同じ主張です。国の学力テストもなくなるのは時間の問題でしょう。こんな一律的な調査よりもその時間を授業時間に充てることの方がよっぽど合理的であり、区の調査も中止し、競争をあおる公表はやめるべきです。
 学校選択制によって、学区外の学校を選択する子どもたちが増えています。その実態はもはや深刻でありPTAや町会など関係者からは地域壊しだと批判の声が上がっているではありませんか。
 例えば、今年度は、中学校24校中、その学区内の中学校を選択した生徒は、60%を切って50パーセント台の学校が14校、50%を切ったのが5校、最低はわずか31パーセントの生徒しか自らの学区域の中学校を選択していないのであります。しかもこれは毎年々々拡大傾向にあります。教育委員会のこの方針が地域の教育力を壊している以外の何物でもありません。23区内でも世田谷区、大田区、中野区、北区は、地域性が希薄になるとして学校選択制を実施せず、都内では台東区など各地で見直しが広がっています。いじめや部活動の選択というためならば指定校の変更で十分対応できます。選択制はただちに中止すべきです。
 
 二つ目に、学校から子どもたちの笑顔を奪ってきたことです。
 夏休みが短縮されて四年目になりました。この短縮によってどれだけの学習効果があったのかと聞いても定かな答えは返っては来ません。
 その一方で、授業時間を確保するために、夏休みを短縮したのに五日間の「仕事」をさせると言い出しました。授業時間を確保するためだと言って、連合行事を廃止したり、中学校ではあだたら高原学園の日数の縮小など、子どもたちの貴重な体験学習を置き去りにしてきました。
 また、子どもたちの笑顔より効率を優先させています。青木区政になってから小学校が6校統廃合されました。統廃合された地域では、地域の拠点としての学校がなくなることによって大きな打撃を受けています。ところが今後、「未来を見据えた学校づくり」として、統廃合計画を作りました。この計画は、わが党がくりえし求めてきた三十人学級に踏み出せば、成り立たない計画です。
 先の総選挙で大勝した政権与党の政策集には、OECD諸国、つまり世界の先進国30ヶ国の平均水準並みの教員配置(教員一人当たり16.2人)をめざし少人数学級を推進すると書かれています。それでも40人学級にしがみつくおつもりですか。少人数学級に踏み出すべきと思いますが答弁を求めます。
 
 三つ目に、教育の機会均等を保障するどころか、奪うことに拍車をかけていることです。
 教育の機会均等という憲法でも高らかに謳っている原則が踏みにじられている現状を改めなければなりません。
 親の年収によって学力の格差が存在していることも広く指摘されています。
 本区では、これに事実上、拍車をかけることが行われました。ちょうど十年前に、就学援助の支給基準を生活保護の支給基準の1.3倍から1.1倍に引き下げたことです。義務教育は無償と憲法で定められており、就学援助は、これを補完する制度です。しかし現実には、中学校では入学時に10万円ほど、その他毎月、約1万円ほどの負担がかかります。この負担は、生保基準の1.1倍程度の家庭や母子家庭にとってどれだけ大変なことかを自覚すべきです。  
 23区内では、ほとんどの区が就学援助の支給基準を生活保護基準の1.2倍以上としています。なぜならそれ以下にすると、公租公課を差し引くと生活保護基準以下になるからです。本区の就学援助の改悪の後、受給率は10パーセント程度まで激減しましたが、その後毎年受給率が上がり現在中学では、現在30パーセントを超える水準になっています。
 深刻な低所得者層の拡大に心が痛みませんか。就学援助の支給基準をただちに生活保護基準の1.3倍と戻すべきです。答弁を求めます。
 また、学校給食費が今年度から引き上げられ、多くの区が公費負担の拡大などで今日の経済的悪化のしわ寄せを避けるために努力しているのに値上げに踏み切った罪は深いと言わなければなりません。
 格差と貧困を解消し、「貧困の連鎖」を断ち切るためには教育の役割は決定的です。ところがそのための高等教育を受ける機会が保障されていません。区内の高校生の現状は都立高校の授業料減免を受けている生徒が本区の場合はきわめて高く、他区の二倍近くになっているのは、親の年収が低いことを表しています。その減免された授業料に事欠く事さえあります。私立高校の授業料の負担に耐えきれず辞めていく悲劇もあります。
 世界に目をむけるとここでも我が国の異常さが見えてきます。
 OECD加盟国なかで高校で授業料を徴収しているのは、日本のほかは韓国、イタリア、ポルトガルだけです。この国々には、すでに、返済不要の奨学金制度があります。
 高校の授業料をなくすことは区ができることではありません。しかし、独自の努力は可能です。8月28日文科省は、来年度予算の概算要求として、はじめて返済不要の奨学金制度を盛り込みました。報道では、受給できる家庭の年収が低く抑えられています。それならば、本区独自で充実してはどうでしょうか。答弁を求めます。

 以上、青木区政の16年を四点に絞って述べました。わが国の政治は大きな変動期にあり、地方政治も大きな転換点にあります。これまでの三位一体の改革であるとか道州制の導入などて言われてきましたが、これらは住民自治を壊す以外の何物でもありません。わが党は「住民こそ主人公」の本来の地方自治を目指して全力をあげる決意を申しあげまして、質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。