2010年第3回定例会一般質問 質問者 中江秀夫
区の老人福祉費は23区最低!
開発優先から区民本位の区政に転換を



【目次】
1、経済対策について・・・「インパクトのある経済対策」を
2、低所得者対策について・・・第2のセーフティーネットの充実を
3、高齢者福祉について・・・介護保険の保険料、利用料の減免、軽減制度を
4、保育について・・・保育園増設で待機児解消を
5、まちづくりについて・・・「奥戸4丁目地区地区計画」は住民の賛否を確認すべき


1、経済対策について・・・「インパクトのある経済対策」を

 日本共産党葛飾区議団を代表して、区政一般質問を行います。
 一昨日、民主党代表選挙が行なわれましたが、全体を通じて、政治的空白が生じ、国民生活との矛盾は一層激しくなり、円高や経済・財政危機をどう打開するのかについて、解決の道筋が見えてこなかったことが第一の特徴でした。
 再選された菅首相は、くり返し「経済成長戦略」を唱えました。それは一握りの輸出大企業の大量生産・大量輸出という経済構造を推進すること、すなわち低賃金、下請単価の引き下げなどコスト削減を図ることで安く製品をつくり、それを輸出することで儲けを増やしていくという前政権と同じ破たんへの道です。いまやるべきことは、輸出に頼ることなく、国内の需要をいかに高めていくかが対策の中心にならなければなりません。
 外交では、「日米合意」にもとづき、米軍普天間基地を辺野古へ移設するという態度で、これも前政権と同じ破たんへの道です。先日の名護市議選で示された民意からも、そのことは明らかです。
 経済でも、外交でも、菅首相は行き詰まった古い政治をすすめる新しい執行者になろうというもので、決して明るい展望を示すことはできません。
 我が党は、この姿勢に正面から対決し、国政でも、区政でも住民の要求に根ざしてその解決のために全力をあげる決意です。

 さて、この菅政権のもとで、区民のくらし・営業をまもるため、まず、区内中小・零細企業への対策についてうかがいます。
 区長は、円高による影響が「区内中小・零細企業に重くのしかかってきている」との認識を示され、今定例会で、区内経済へのテコ入れを図るために中小企業対策として「債務一本化融資の創設」に1200万円ほどの補正予算を提案しています。
 これが、本当に区内経済のテコ入れになるのかが問われていると思います。
 今回の債務一本化融資の詳細は、まだ明らかにされておりませんが、上限額や本人利子負担などメリットがあるようです。すでに実施している新宿区に聞きますと、コンスタントに相談・問合せが来ているとのことですが、実績としては昨年11月から今年6月までで月平均8件になっています。
 毎月の返済額を軽減するための債務の一本化であるならば、利用しやすい制度にすることが必要です。仮に新宿区のように、金融機関の同意が前提になるとすれば、金融機関主導の審査になっていくわけで、融資制度と言っても、形だけのものになってしまいます。
 区内経済のテコ入れをするというならば、融資については、債務一本化融資の創設だけでなく、借換融資についても上限額の引き上げ、本人利子負担の引き下げなどで複数の債務でなくとも負担軽減につなげることも必要です。

 さらに、苦難にあえいでいる区内企業を優先とする入札方式への改善や、公契約における低賃金を前提とした低価格入札防止のための対策を図るべきではありませんか。

 岩手県宮古市では建設業の支援策を具体化するための検討委員会を設置し、「インパクトのある経済対策を」という市長の指示を受け、今年度から「住宅リフォーム促進事業補助金制度」を実施しました。その内容は、総工費20万円以上のリフォームに対し一律10万円を補助するというもので、制度を使いやすいように壁、屋根、障子、襖、タイルなどの改修も助成対象としています。7月16日までのわずか3カ月半で1547件の申請、5000万円の当初予算も、補正で2億5000万円となっているとのことです。
 住宅リフォーム助成については、これまでも何度も提案してきましたが、仕事確保と経済波及効果の面からも実施すべきです。答弁を求めます。

 国内の需要を高めるためには、労働者の賃金をあげることは急務です。すでに地域別最低賃金の審議では、東京は30円アップの821円が答申されました。最低賃金法は「生活保護との整合性に考慮する」としていますが、まだまだ生活保護以下の状況です。
 本区では、貧困と格差を拡大した構造改革路線を率先してすすめ、正規職員から低賃金の非正規職員に切り替え、いまや非正規雇用率は47.2%と2人に1人が非正規職員です。しかも、このことを自慢すらしています。
その非正規職員の時給は一般事務で850円、23区でも下から4番目です。まさに区がワーキングプアを増やし、貧困と格差を拡大する要因をつくってきました。
 非正規雇用を増やし、官制ワーキングプアを拡大していく路線を転換すべきです。さらに、東京の最賃も不十分ではあっても30円アップとなりました。本区でも時給アップをただちに図るべきです。答弁を求めます。

2、低所得者対策について・・・第2のセーフティーネットの充実を

 賃上げとともに低所得対策も力を入れることが求められます。
 厚生労働省の調査では、生活保護基準以下の世帯で生活保護受給はわずか15%となっています。逆に言えば、生活保護受給世帯の5倍以上が生活保護基準以下の生活を余儀なくされていることになります。
 これを機械的に本区に当てはめると、4万人以上が生活保護以下で生活していると推定されます。ここに支援の手をさしのべることが基礎的自治体の役割ではないでしょうか。
 しかし、中期実施計画には、低所得者自立支援として生活保護世帯を対象にしているだけで、“生活保護にいたる前にどうするのか”という施策の位置付けはありません。区として低所得者対策にどう取り組むのか、この意気込みがまったくつたわりません。
 なぜ、そうなってしまうのか。
 最後は生活保護があるから、と安易な考え方を持っているとしたら問題です。
 低所得であっても、健康で文化的な生活ができるような制度の確立・拡充こそ急がなければいけません。

 国においては、生活保護の前に活用できる制度として第2のセーフティネットを実施していますが、貸付け事業が多く、これらの施策利用後に自立できなければ、多額の負債を負うことになり、生活保護に陥ることも予想されます。唯一の給付事業である住宅手当は、要件が厳しく、収入基準も生活保護基準すれすれになっています。
 しかも3年間の時限措置とされています。
 国に対して恒久的な制度とし、要件の緩和も行うよう求めるべきと思いますが、いかがですか。
 さらに生活保護制度には、境界層該当という制度があります。介護保険料の第2段階以上の方で、介護保険料や利用者負担がなければ生活保護受給を避けることができる方を対象にしている制度です。
 しかし、制度そのものが知られていないのが現状です。
 まず、制度の詳細、手続きについて答弁を求めます。そして、現状では対象者はどの程度存在し、適用するには何が課題となっているのか答弁を求めます。

3、高齢者福祉について・・・介護保険の保険料、利用料の減免、軽減制度を

 低所得層の多くは高齢者です。したがって高齢者福祉の在り方は、福祉向上を使命とする自治体の在り方を決定づけます。
 本区の決算に占める老人福祉費は、23区最低になっていることは、これまでも指摘してきました。
 東京都総務局行政部区政課が発行している08年度「特別区決算状況」によれば、葛飾区の高齢者一人当たりの老人福祉費は9万3,000円、その他の22区は、すべて10万円台で、ダントツの最下位であります。23区平均と比べると、本区の場合73%、額にして33,700円も下回っています。
 しかし、これは大変奇妙なことなのです。なぜなら、23区には都区財政調整制度という法人住民税、固定資産税、特別土地保有税を財源とする財政保障の制度があります。それによって23区の行政水準が均衡を保つようになっています。つまり、老人福祉費に関して、これほどかい離が生じていることは、誠に異常なことだと言わなければなりません。
 23区平均の7割しか老人福祉費に使っていないということは、高齢者福祉に背を向け、別の所にお金を使っているということになります。具体的には、33,700円に葛飾区の高齢者人口をかけると約30億円です。この30億円は一体どこに使われているのか、という問題であります。
 しかも単年度だけでなく、2006年度から3年連続であることを考えると、基本計画の開始時期、介護保険第3期事業計画の3年間と重なっています。
23区最低というのは、決して偶然ではなく、葛飾区政の体質から必然的にもたらされた構造的な問題とみるのが自然ではないでしょうか。
 区長は、老人福祉費23区最低という、この事実をどのように認識しているのですか。まず伺います。

 先日、都営住宅に住む高齢者から「足が痛くて、近くのスーパーに行くのにも30分もかかってしまう。風呂に入りたくても足が上がらない。今、困っているのに何もしてくれない。それなのに年金から介護保険料が天引きされるなんて、おかしい」と怒りの声を聞きました。
 認定が厳しく、必要なサービスを受けようとすると実費負担になる、利用できたとしても利用料が高くてサービスが利用できないからです。しかも保険料は天引きされる、怒りの声がでるのは当然です。
 葛飾区には、介護保険料・利用料の独自の軽減制度がありません。お金がないのか、というと決してそんなことはありません。
 なぜなら老人福祉費の36%を占めているのが介護保険への繰り入れですが、本区の高齢者一人当たりの繰入額は34,420円、23区平均は41,223円であり6,803円も低くなっています。23区下から2番目です。これも、老人福祉費を引き下げる要因と言ってよいと思います。
 それだけではなく、介護保険特別会計の基金積立金は、毎年上積みされ、今定例会で審議する決算でも、二億円以上の基金積み立てを行い、今年度末では、10億7千万円に達する見込みです。サービスを利用しにくくしているために保険料が余っているのです。
 渋谷区では、介護保険料は、低所得者に対しては最高2分の1まで減額をする制度がありますし、利用料では、訪問介護、通所介護、小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護など11事業に独自の利用料軽減制度があります。
 本区でも介護保険料および利用料、区独自施策の軽減制度を実施すべきです。答弁を求めます。

 区長は、介護老人保健施設の整備率は、「23区でトップレベル」と自慢されましたが、全国平均を下回っている東京で「トップレベル」と言っても自慢にはなりません。依然として、介護老人保健施設が圧倒的に不足しているではありませんか。
 介護施設はトップレベルなのに、老人福祉費は最低、介護保険料も低い水準に抑えられているということは、在宅介護にしわ寄せしていることを直視すべきです。「介護の社会化」というものの、低所得の高齢者がサービスの利用を手控えるのは、介護保険制度の本来の考えに重大な障害をもたらしている実態であるということを指摘しておきます。

 さて、老人福祉法では市町村は「老人の福祉に関し、必要な情報の把握に努める」と実態把握の責務を明確にしています。
 区長は、さきほどのあいさつで、100歳以上の所在不明者について本区では「いない」と言われましたが、問題は、老人福祉法にてらして、高齢者の実態を行政として把握できているのかどうかが問われています。
 長妻厚生労働大臣は、地域包括支援センターに高齢者個人情報を提供するよう指示しましたが、不明老人問題の解決にはなりません。
 地域包括支援センターは、高齢者の介護の総合的な窓口であり、関係機関との「橋渡し役」ともなる役割をもち、医療、介護、福祉サービスを提供する地域包括ケア体制を構築するためのものです。
 老人福祉法にてらして、実態把握は行政自らが責任をもつべきです。区長、いかがですか。

 世田谷区では、区出張所と地域包括支援センターを合築することによって区と事業者が連携して高齢者の相談窓口の拡充をはかったり、足立区では、25か所の地域包括支援センターがあり、相談件数も本区の2倍になっています。
 本区の地域包括支援センターは、現在7か所です。7つという日常生活圏域が設定されているからですが、この7つの生活圏域の設定は、お金を使わないという安上がりの発想で、高齢者の暮らしの実態にまったくあっていません。
 早急に見直しをして、地域包括支援センターの設置数を増やすべきです。当面、分室などを緊急に設置し、相談窓口を増やして対応することが必要であることは言うまでもありません。答弁を求めます。

4、保育について・・・保育園増設で待機児解消を

 次に保育について質問します。
 厚生労働省は、4月時点での待機児数を発表しましたが、26000人と過去最悪の水準です。不況下で働きに出る人が増えているにも関わらず、保育所の増設が追いついていないことを示しています。
 本区においても、待機児解消は緊急の課題です。
 区長は、待機児解消の取り組みとして、新たに認可保育園は、分園を含めて3カ所、認証保育所3カ所の整備をおこなうことを示されました。計画を前倒しして取り組むことは重要です。
 しかし、緊急整備というなら、今現在の待機児をどう解消していくのか、これを解消できなければ、親は仕事に出ることができません。
 区長は、いつも4月時点での待機児を解消の対象にしていますが、実態をよく見なければなりません。
 なぜなら、本区の今年4月時点での待機児は139名でありますが、7月時点では344名とすでに2倍以上になっているからです。10月時点ではさらに増えるでしょう。
 昨年4月時点では62名でしたが、今年1月には593名にもふくれあがりました。月を追うごとに待機児が増えていくのが実態です。
 それなのに4月時点の待機児をゼロにしようという目標では、本当に待機児を解消することはできません。
 増設の目標は、通年、待機児が解消できるように考え方を改める必要があると思いますが、いかがでしょうか。

 先日、ご主人の転勤で、地方から区内に転勤されてきた方から相談がありました。いままで保育園に通っていた1才の子が葛飾では入園できず、内定している就職先に行けないというのです。
 こうした声にどう答えていくのか。ここにこそ基礎的自治体としての使命があります。
 しかし、9月1日の認可保育園の募集状況を見て、私は、愕然としまし た。0歳と1歳の募集枠は1園もなくすべてゼロです。文字通り、これを解決する緊急な対応が求められています。
 これまでも区長は、「待機児が多く発生している地域での土地の取得や区有財産の有効活用も視野に」いれて取り組む決意を述べられてきました。
 かつて2003年に、立石駅前保育園の設置にあたり、地区センターを活用し、5カ月で開所を目指しました。今度の補正予算案は奥戸地域に土地開発公社の所有地の活用が具体化されています。
 ある社会福祉法人理事者のお話では、認可保育所の分園の開設は、施設基準をクリアできれば、開設にそれほどの時間はかからないと話しています。
 区内のあらゆる公共施設の活用をはじめ、民間施設も含め、緊急対策として、0歳、1歳、2歳児の分園をだだちに開設すべきと思いますが、いかがですか。答弁を求めます。

 また水元地域での土地取得による保育園建設も急ぐべきです。現状では、開設を2012年度以降としています。
 緊急対応が必要となっている今、スピード感ある保育園増設こそ必要です。答弁を求めます。

 保育所を増やすとともに、保育の質を高めることは父母の切実な要求でもあります。ところが民主党政権が地域主権改革の名ですすめようとしている保育制度改革は、いっそう保育制度の市場化をすすめようとするもので看過できません。
 この「子ども・子育て新システム=子ども園」構想は、目的も内容も全く異なる幼稚園と保育園を一体化させ、2013年には完全実施させようというものです。
 これだけ重大なことを参議院選挙直前の今年6月に、少子化社会対策会議決定、つまり事実上の閣議決定をし、国の大方針として進めようとしています。
 たとえば、すべてが個人の選択に基づく自己責任になります。親は、自治体から保育の必要度の認定を受け、その認定で入れる保育園を自分で探し、直接契約することになります。認定範囲内の利用料は、補助金が出るものの、それ以外は自己負担になります。介護保険制度の保育版です。
自治体の公的責任がなくなるために待機児童を把握できなくなってしまいます。
 悪質な施設が出てきても、公的責任がない自治体では対策もとれない、すべてが親の自己責任となり、生まれた瞬間から親の経済力による格差が子どもにもたらされてしまいます。
 ある社会福祉法人関係者は、「民主党政権がすすめる保育制度改革では先が見えず、恐ろしいので安易に施設を増やすことはできない」と語っていました。
 この制度改革は、日本の子育てを壊滅状態にする最悪の方向であり、長年にわたる本区の子育て支援施策と社会福祉法人の保育関係者の努力を大本から破壊する保育つぶしに他なりません。しかも、待機児解消に水をさし、ブレーキをかけています。こうした流れにくみすることは絶対に許されません。
 区長はこの「子ども・子育て新システム=子ども園」構想について、どのような認識をお持ちですか。答弁を求めます。
 なお、こうした保育所問題も、先に述べた中小企業支援、低所得者対策も、今定例会で審議する〇九年度決算の剰余金80億円余の一部を使えば実現できることを申し添えておきます。

5、まちづくりについて・・・「奥戸四丁目地区地区計画」は住民の賛否を確認すべき

 次に、まちづくりについて質問します。
 本定例会に「地区計画及び防災街区整備地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」案とともに、「奥戸四丁目地区、地区計画の見直しに関する請願」が議長宛に提出されています。
 先の第二回定例会一般質問で我が党三小田議員が、「奥戸四丁目地区地区計画は、改めて住民の意見をよく聞くべき」と質問しましたが、都市整備部長は、「当地区の地区計画決定に当たり、地域住民のご意見を取り入れ、周知を十分図ってきたと考えております」と答弁しました。
 ところが、実際の中身はどうでしょうか。
 街づくり説明会が3回開催されています。対象地域の住民が2970名、地権者数1150名のもと、第1回の説明会には、115名の住民が出席し、土地区画整理事業はやめて「更地にして道路や建物をつくりなおすようなことはしません」と区は説明し、いま問題になっている地区計画の内容には全く触れないものでした。住民にとっては区画整理がなくなったと安心させる内容のものでした。 
 ところが、地区計画の内容について示すその後の説明会では、出席者が26名とか5名とか、地区計画の素案説明会、原案説明会も含め7回行ったというのですがいずれも小人数しか参加していないのです。
 この出席者の延べ人数を合計しても、対象地域住民の7%にすぎません。街づくりに関するアンケートを実施したと言いますが、これは地区計画を発表する前のアンケートで、回収率も14.1%にすぎません。
 街づくりニュースを7回配布したとも言いますが、議長宛請願署名を集めた「地区計画を見直す会」のニュースでは、地区計画の内容について「はじめて知った」という方がほとんどだった、と紹介しています。
 だからこそ、今回の請願署名は、440筆、世帯数で210=約18%の住民が見直しを求めているのです。ちなみにこの署名数は区の7回におよぶ住民説明会出席者数の約二倍です。
 区は、地区計画について住民への「周知を十分図っ」たと主張していますが、周知が理解されていないから意義を唱える住民が急増しているのではありませんか。事実に反するのではありませんか。答弁を求めます。
 特に重視すべきは、地区計画の具体的計画内容を決め、住民の権利を制約する段階になってからおこなわれた地区計画素案説明会および地区計画原案説明会における住民の参加人数の少なさです。
 素案説明会は2回、原案説明会も2回おこなわれましたが、出席した住民は述べ62名で、対象住民のわずか2%です。09年9月13日におこなわれた第一回目の地区計画素案説明会は出席者19名でしたが、区の説明会記録には「反対意見はなく、制限内容については、了解を得たといえる」とまとめられています。
 対象住民の1%にも満たない住民の出席をもって地域住民全体から了解をえたというのは、無理があるのではないでしょうか。区長、いかがですか。
 奥戸四丁目地区地区計画の内容について住民が特に問題にしているのが「隣地境界からの50センチ壁面後退」です。
 そもそも、なぜ奥戸四丁目地区地区計画に全戸一律50センチの壁面後退が必要なのでしょうか。
 区は何回もの説明会で一度もまともに説明をしていません。説明会記録の中に「隣地境界から50センチ壁面を離す決まりは、狭い土地ではまともな家が建たなくなってしまう」との住民の意見に、「よほど不整形な土地でなければ建物が建てられないことはない」とこたえています。
 「よほど不定形な土地」などということ自身、住民に失礼なこたえなのですが、まともな区の説明はこれ一回だけです。あとは、道路との境界に緑を増やすことが強調されていますが、これは住民が問題にしていることとは違う性格の問題です。

 区内でおこなわれた地区計画は、それまで12箇所におよびますが、そのうち隣地境界から一律壁面後退が盛り込まれた地区計画は1箇所だけです。それは土地区画整理事業による全面換地と連動したまちづくりが計画された南水元のケースです。これを除くと既成市街地の住宅に、こうした制限をかけるというのはこの奥戸四丁目が最初のケースということになります。
 この地区計画にかかるすべての住民の権利・資産にかかわる問題を実施するのですから、本来ならばこのことだけでも賛否を問うべき性質の問題なのに、なぜそうしなかったのですか。
 本区では、奥戸四丁目地区と同様の地区計画が、今後いくつも予定されています。
 現に、東四つ木地区では木造密集市街地整備事業の終了にともない、地区計画による隣地境界からの壁面後退がしめされ、ここでも問題になりつつあります。
 つまり、奥戸四丁目地区地区計画は、単に奥戸地域だけの問題ではないのです。葛飾区全体の、今後のまちづくりにかかわる大問題なのです。だからこそ奥戸地域で明らかになった住民の合意と納得を得る上でのやり方の問題点を、いまあらためなければならないのではないでしょうか。
 そこで伺います。
 本区の「区民参加によるまちづくり推進条例」では、住民からの地区計画の提案について「区域内の土地の所有者その他政令で定める利害関係を有する者の過半数の賛同を得ている」ことを条件にしていますが、区提案については条例上の規定はありません。
 これは、住民の自主的な発露で実施しようという地区計画には、過半数の賛成がなければ実施することができませんが、区が実施しようとする地区計画は、形式上説明をしたという実績さえつくれば何でもできる、つまり、権力の乱用となるのではありませんか。
 まちづくりの主人公は住民です。住民の権利を制約する計画をつくるにあたって、住民参加が不十分な事態を放置したまま、反対意見がでなかったから了解されたという形で都市計画決定手続きにまですすんでしまうやり方は、住民が主人公という地方自治体本来の精神を破壊するものと言わなければなりません。少なくとも住民の権利が制約される内容を含む地区計画の決定にあたっては、単なる説明会や都市計画決定手続きでなく、住民一人ひとりの賛否を確認するようあらためるべきと思いますがいかがですか。答弁を求めます。
 以上、地区計画であれ、市街地再開発であれ、まちづくりは住民合意のもとにすすめるという原則にしっかりと立ち、これまでの住民不在のまちづくりを根本から転換するよう強く求めて私の質問を終わります。