2011年度予算案に対する反対討論 発言者 渡辺キヨ子 |
来年度予算案に対する反対討論を行います。 最初に、さる11日発生した東日本大震災は、まさに国難ともいうべき未曾有の大災害となり、この瞬間も現地では、懸命の救援活動が行われ、命がけの原発事故対策が進められています。 お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された方々に心からのお見舞いを申し上げます。そして現地で救援に当たられているすべてのみなさんに敬意を表するものです。 地震は自然災害ですが、原発事故は人災です。自然災害を防ぐことはできずとも、震災を予防することは可能です。今回の災害では、国の政治のあり方、また地方自治体のあり方が同時に問われているのではないでしょうか。 現在、都知事選挙がたたかわれておりますが、安心できる新しい東京をつくっていくために全力をあげるものです。 さて、来年度予算編成に当たっては、震災対策をはじめ区民の命と暮らしを守るという自治体本来の役割を鮮明にした予算とすべきですが、実際には、区民の願いに背を向けたものです。 そこで、あらためて見直しを求めるものです。 第1に、総合庁舎整備基金の18億円を活用し、震災対策の拡充を行うことです。 総合庁舎の建替え問題は、区自身が開催した「区民の意見を聴く会」で圧倒的多数から建替え反対、区民施策を優先すべきと言う意見がありました。本来なら、その区民の意見を聴いて庁舎建替え計画を白紙に戻すべきですが、こともあろうに建替え基金を積み増したことは重大です。 今やるべきことは、区内に3万棟ある旧耐震基準の木造家屋の耐震改修を促進するために助成制度を拡充すること、住宅リフォーム助成を創設すること、災害弱者となる高齢者、障害者、妊婦、子どもたちのために保健センターや図書館など地域の公共施設のバリアフリー化を促進することであり、庁舎建替え優先の予算は修正すべきです。 第2に、災害時に力を発揮するためには、普段から介護や子育て支援の基盤を整備していくことが必要です。 特別養護老人ホームの待機者は2000人を超えているにもかかわらず、その解消にみあった整備計画もなく、地域偏在も解消されていません。施設不足から劣悪な環境の中で行われている宿泊サービスを利用しなければならない状況も広がっています。こうした状況の中で地震が発生したらどうなるのか。区の責任も問われなければなりません。 認可保育園の待機児は増える一方です。70人を超える大規模学童保育クラブも未だ解消できておりません。 基盤整備を民間まかせにしていては、問題を解決することができないことは明瞭です。解消のための整備計画をもち、区の責任で増設をすすめるべきです。 とりわけ保育園・学童保育クラブの増設は待ったなしで、ただちに分園・分室も含めた増設を求めるものです。 第3に、自治体本来の仕事である住民福祉の向上に努めることです。いつまでも一人当たりの老人福祉費が23区最低ということは許されません。 4年連続で23区最低であることを指摘すると、区は「承服できない」と反論をしますが、なぜ承服できないのか、その中身は、まったくありません。 介護保険料・利用料の減免制度の実施、寝たきり高齢者のための紙おむつ支給の制限緩和、非課税世帯における福祉サービス利用料の軽減など、他区では当たり前になっている独自の制度については積極的に取り入れるべきです。 国民健康保険料の算定方式の変更は、福祉向上どころか区民生活を一層深刻にするものです。 この変更で、大幅な値上げとなることが明らかになり、激変緩和措置があっても1.5倍になる世帯も生まれます。 人的控除がなくなっただけでなく、これまで行ってきた高額療養費への一般財源の投入をやめたことも加わり、保険料に跳ね返ってきたというのが、値上げの真相です。 算定方式の変更も高額療養費への一般財源の投入をやめたことも、23区特別区長会という密室協議で決めています。他区では議会に資料を示し、説明をしていますが、本区では、議会には何ら説明もせず、文字通り秘密裏に進めてきたというのが実態です。このこと自体重大だと言わなければなりません。 23区全体の基金積立金の残高は約1兆円であり、一般財源の投入をやめる理由はどこにもなく、むしろ高い保険料は値下げこそすべきものです。 第4に、教育行政に矛盾と破たんが進行していることです。 小P連・中P連から学校選択制の廃止・見直しの要望がだされていることについて真剣に向き合わなければなりません。小中一貫教育は、隣合わせにある小中学校を一緒にすることではなく、カリキュラムの構築こそ急ぐべきです。未来を見据えた学校づくりと称した統廃合計画は、40人学級を前提にしているもので、35人学級の実施とともに破たんしています。 行政の仕事は、教育環境を整えることです。トイレの臭気が強く給食が食べられないということがわかっていながら、トイレ改修予算を計画の6割に削減したことは重大です。就学援助の認定基準を23区の中で最も厳しくしていることは問題であり、改善が必要です。30人学級に独自に踏み出し行き届いた教育を進めるべきです。 第5に、地域コミュニティーをつくっていくためにも、住民が主役のまちづくりに徹することが必要です。 立石駅北口再開発、金町駅南口地区再開発など地権者である住民合意が得られていないにもかかわらず、推進のための予算計上は、地域コミュニティーを作るどころか逆に壊していくものです。 奥戸地域で行った住民不在の地区計画の手法をさらに広げようとしていることも問題です。まちづくりのルールは住民が決めるべきもので、行政が強引にすすめるものではありません。 住民が主役となるまちづくりが地域コミュニティーを強固なものにし、それが災害時のマンパワーともなるものです。住民不在は、根本から転換しなければなりません。 以上、5つの観点から来年度予算案の問題点について指摘をしました。 私ども日本共産党区議団は、18歳までの医療費と75歳からの医療費の無料化、重度高齢者の介護手当、住民税減税などの条例や組替えを提案しました。 不要不急の事業の中止や基金積立金の活用などで財源を生み出し、医療、福祉、教育の充実など区民の暮らしを守るための予算に変えていくことができるということを最後に主張し、反対討論といたします。 |