2012年第1回定例会代表質問 質問者 中村しんご |
防災・区民のくらし・福祉・営業を守るために 基本計画と予算案のあり方を問う 【目次】 1、防災対策について 2、区民のくらし・福祉について 3、商店・中小企業の営業を守るために |
1、防災対策について 日本共産党葛飾区議団を代表して質問いたします。 昨年3月11日の東日本大震災による大災害、福島原発の事故によってこれまでの常識が一変してしまいました。 しかも、東京大地震研究所は、首都圏でM7級の直下型地震が4年以内に70%の確率で起きる可能性があるとの計算結果公表し、その後50%としましたが、危険性が高いのは違いありません。 区長は、先の所信表明で、このような状況の下で編成された来年度予算について、冒頭で防災対策についての取り組みをるる述べました。しかし、率直に申し上げて、災害から区民を守るために何を新たに展開していくのかというメッセージが伝わってはこない、本当に震災から区民のいのちを守ることが最優先になのか、この点をまず指摘しなければなりません。 また、野田内閣の税と社会保障の一体改革で消費税の引き上げ、年金給付の引き下げなどを狙っていますが、これに輪をかけて来年度予算は、国保、介護保険、後期高齢者医療制度など、その他公共料金の値上げなど、住民負担をいっそう増大させる計画であります。 本区には特殊な事情もあります。それは、前年度の普通会計決算の比較資料が昨年12月に公表されましたが、なんと、五年連続で一人あたりの老人福祉費の金額が、23 区で最低となりました。 今、求められることは、こうした区民負担をいかに軽減するか、どう支援するのかが問われるのですが、こうした点にも有効な手立てが取られていないということが問題です。 そこでまず、防災対策、災害から区民の命と財産を守るためにはどうすべきなのか。 来年度予算の金額では最大の上積みとなったのは、防災無線であり4億円ほど、そして、耐震補強工事等の1億円ほどの事業を拡大したとのことですが、これで、本区としての災害対策が盤石なのでしょうか。 東大地震研の大地震の可能性からすれば、待ったなしの課題としてスピード感のある対策が求められています。 先の大震災で大津波に対して、岩手県釜石市では、漁港付近の多大な犠牲の一方で、小中学校で一人の犠牲者も出しませんでした。「地震の後は津波が来る。高台に逃げる」という防災訓練、教育の徹底という「公助」があったからこそ、自助、共助が発揮されたのではないでしょうか。この公助についての役割を後景におき、「自助、共助に対する意識の高揚」という考えは無責任であるとともに有害でさえあると思います。 こうした問題意識のもとで、いくつかの提案を申し上げたいと思います。 まず、避難の在り方です。これまでの定例会でも指摘されてきましたが、震災発生後の避難民の予測は最大18万人のうち学校などの避難所に収容できるスペースは11万人であり、残り7万人分の避難所がないとされています。この質問にたいする答弁は「その他の公共施設で対応する」というのですが、その後の具体化が明らかにされていません。今必要なことは、7万人分の公共施設がどこであるのかを、具体的に明らかにして、その公共施設に、少なくとも学校並みの備蓄品を用意することなのではないでしょうか。 80ケ所以上の火災、死者700名以上という被害想定そのものを減少させるために「減災目標」を掲げていますが、来年度予算の執行において、本当に半減できるのでしょうか。 阪神大震災の教訓でも低所得者の住居が耐震性が低く、建物の倒壊による圧死が圧倒的であったことは周知の事実であります。また、今日、都内やその近郊でも貧困ビジネスが横行しており、災害が起きた場合、逃げ遅れかねない劣悪な居住条件である、また、健常者のように自助では逃げられない障害者や高齢者ほど危険にさらされていることになります。 これらの実態を把握するための防災弱者悉皆調査を実施し、血の通った、思い切った対策が必要です。 また、高齢者のガスコンロの火による事故が多発していますが、ガスによる火災を防止するのには、家庭用電磁調理器の普及も欠くことはできません。現在、この助成が行われていますが、対象はきわめて限定されています。 したがって、防災弱者に対する悉皆調査の実施を求めます。そしてその結果に応じて、家具・家電の転倒防止器具の給付、電磁調理器の助成の改善など、大規模に実施すべきと思うがどうか、答弁を求めます。 23区内の耐震補強工事助成制度は、震災直後の2011年4月の時点では、葛飾区は、80万円を上限とし2分の1を助成するという内容でした。しかし、他区では制度の充実のスピードが速く、新宿区では上限300万円など100万円以上の補助をしている区がほとんどであります。しかも、本区より低い額としていたのは2区のみ、補助率にしても千代田区・世田谷区の10分10補助をはじめ、おとなりの墨田区が6分の5など、3分の2以上としている区が圧倒的に多くなっています。 この制度を、震災後に一斉に各区が改善しています。たとえば、本区よりも下回っていた豊島区では、補助額を一気に150万円に引き上げ、補助率を6分の5にまで引き上げました。 本区でも、震災後、木造住宅の耐震工事を120万円までの補助で補助率を二分の一としましたが、すでに多くの区が本区を上回る補助金額、補助率としているのが現状であります。本区より低い補助金額、同率の補助率としているのは数区だけですから、補助額を引き上げたとはいっても、現在きわめて低い位置にあります。しかも、本区では、この制度と引き換えに修築資金制度を廃止してしまいましたが、耐震補助制度と修築資金や区独自の住宅ローン制度をセットで実施している区も8区もあります。 被害想定では、死者数も避難者も23区で最大になると予測されている本区の対策は、あまりにもお寒い限りではありませんか。 耐震補強工事補助の増額と補助率のアップが必要だと思うがどうか。答弁を求めます。 この耐震補強の強化は、いうまでもなく、これまでの延長線上であり、建築士による検証が求められる方法です。 同時に求められるのは、簡易補強も認め、耐震補強のメニューを広げることが急務であります。 中野区や墨田区のように、区内工務店に一定の研修を受けていただき、区が認定した登録業者として、簡易な耐震補強として工事を助成する方法もあります。 品川区のような新タイプのシェルター設置事業もあります。本区で採用している鉄骨のシェルターとは異なり、材木による補強なので、地元の工務店でも実施可能な方法であり、仕事確保にもつながります。 この他、繰り返し要求してきた簡易補強にも役に立つ住宅リフォーム助成を実施している区も13区へと拡大されています。本区でも実施すべきと思いますが、それぞれ答弁を求めます。 大地震の後、火災から身を守ることが必要です。そのためにも「燃えにくい街づくり」と「逃げられる対策」が求められます。東京都が作成した、東京危険度マップでは、本区の場合、東四つ木、四つ木、堀切などその他にも指摘されていますが、そのなかでも東四つ木、四つ木地区は、現在、木造密集地域対策が進められています。この事業は、これまで、自主的にセットバックして道路幅を広げる、有効な空地をつくるなどの努力を重ねてきました。東四つ木では、京成線の南側道路の完成にメドが立っており、防災性が一定向上したといえます。この事業の進捗のために、関係各課職員が、ひざ詰めで地権者との話し合い、交渉を重ねた成果だと思います。しかし、この事業はあらかじめ年限が限られていることから、この密集事業が終了した後も、拡幅を計画している道路が現実に残されるということから「地区計画」によって、いわば、地権者の権利を制限して、強制的な街づくりの手法を目指していることは、看過できません。 この「地区計画」の在り方を根本から見直すべきであります。そもそも地区計画とは、住民・地権者からの自発的意思にもとづいて自らの街の景観や安全性を向上させるために決定する手法です。行政が上から住民にまともな説明もなく、権利制限を押し付けることなどは絶対あってはなりません。 いま必要なことは自発性にもとづく整備を図れるように支援メニューを広げることです。墨田区では、準耐火構造の木造建築物を耐火構造に建て替えるのに独自の補助制度をつくり奨励しています。また、木造密集地域の区北部を対象に「耐火ボード」設置費用補助を実施すると伝えられています。23区では初めての取り組みです。 同区の一寺言問地区のように住民による防災性を向上させるためには、自らの街をどうしていくべきか。例えば、前述した燃えにくい家づくりとともに行き止まりの塀に、「逃げ道」となる門扉を設置するなど地域コミュニティのなかで自発的な努力がつづけられています。 木造密集地域での防災性を向上させるには、行政が上から地区計画を押し付けるのではなく、住民の自発性にもとづいてそれを支援する方法に改善すべきと思うがどうか。答弁を求めます。 木密地域対策の道路の拡幅によって確かに一定の防災性を確保できるかもしれませんが、それは絶対的なものではありません。なぜならば、災害時には車両そのものが通行の障害になる危険もありますし、消防車が必ず到着し、消火活動を実行できるかどうかはわからないからです。「逃げて命を守る」「可能なかぎりの消火活動」の自助、共助を保証するのが公助であり、そのためには、消防団や市民消火隊の育成・強化のために、区として果たす役割について答弁を求めたいと思います。また、わが党も要求してきた「スタンドパイプ」が来年度予算で初めて導入されますが、今後、どの地域にどのようなペースで設置していくのか具体的に答弁を求めます。 防災対策の最後ですが、多額の財政支出によって危険を増大させる事業は抜本的に見直す必要があります。それは、人工の高台であり、地震では被害を拡大させかねないものだからです。 阪神でも中越でも東日本大震災でも、人工の高台の被害には目を覆いたくなるような被害が続出いたしました。これは、スーパー堤防も例外ではありません。 新宿六丁目公園及について水害に有効だとして人工の高台を設置しましたが、震災後には、避難すべき公園として機能すべきところが地すべりなどによって利用できないという事態にもなりかねません。水害時は人口の高台よりも公共施設、民間の施設も協定をむすぶことによって水害から身を守ることが現実的な対応策であります。 地域防災計画に突如としてくわえられた「高台づくり」という一行の削除によって、人工の被害はくい止めることができます。同時に今後の多額の支出も食い止めることもできます。 人工の高台づくりという危険な計画は、今後抜本的に見直すべきと思うがどうか。 2、区民のくらし・福祉について 次に、区民のくらしや営業などを守るという立場から、来年度予算案の問題点について質問します。 わが国は経済性成長のない、出口の見えない深刻な状態、収入の下落が止まらない状態が続いています。 来年度予算からも見える区民生活の厳しさは、特別区税の推移からもうかがえます。なぜなら、税制の改定がなければ、税収の10億円ほどの減が見込まれていましたが、で幼年者扶養控除の廃止によってほぼ同額が増税となりました。しかも、その子ども手当が減額にされたのですから、子育て世代には、重い負担だけがのしかかったといえます。 また、国保と後期高齢者医療制度も値上げで、介護保険料は35%もの大幅値上げの案が提案されています。 さらに、野田内閣の「税と社会保障の一体改革」によって区民生活にはどのような影響が及んでいくのでしょうか。 75歳以上の夫婦、年金月額合計で18万円の世帯をモデルケースといたします。今年は、6月からの年金減額が6000円、介護保険料と後期高齢者医療保険の増額が10月から16000円の増であり、都合22000円の負担増となります。すでに決定している年金給付額の引き下げ、マイナス2.5%の減額の合計が72000円となり、加えて、消費税10%による負担増は、80000円。したがって、消費税10%を完結させようとしている2015年と昨年の可処分所得と比較いたしますと、なんとマイナス175000円にもなる。つまり、1か月分の年金がまるまる吹き飛んでしまうことになります。 こんな暮らし破壊を放置すれば、消費不況に一層の拍車がかかり、国の財政をささえるどころか国民生活との共倒れになりかねない、これに異を唱えることが必要なのではありませんか。 加えて、本区の特別の事情です。先ほども申し上げましたが普通会計決算の1人当たり老人福祉費が、5年連続、23区で最下位となっていることであります。わが党は、国保料、介護保険料、後期高齢者医療制度の保険料決定のシステムを変えることを求めるとともに、区として一般財源を直接投入することによってその痛みを和らげることが急務であると考えています。そうしてこそ、高齢者に対する施策が最低になっている事態を打開できるのではないでしょうか。答弁を求めます。 子育て世代に及ぼしたいわれなき負担増に対しては、区としての独自策として学校給食費を全額補助して無料にしてはどうでしょうか。小学校の低学年では、子ども手当の減額分に近い額になるからです。また、子育て支援策の新たな展開として、医療費の無料化を18歳にまで補助すること求めます。すでに23区内でも広がりつつあり、子育てに力を入れている本区でこそ実施すべきと思うがどうか。答弁を求めます。 さて、税と社会保障の一体改革との関係で、今後の保育園の在り方についてのべておきます。来年度予算では、新たに株式会社による保育園の新設とあります。 これまで保育に対して、様々な市場原理を持ち込もうとする攻撃がありましたが、自治体による実施義務、これが守られてきました。野田内閣が、税と社会保障の一体改革で目指しているのは、この保育分野に市場原理主義を持ち込むことにあり、自治体の実施義務を解体しようという危険なものであります。 新たに株式会社に参入させようとするのは、区長も野田首相と同じように、今の保育制度を解体すべきだとお考えなのでしょうか。そうでないなら、何が目的なのでしょうか。 この株式会社方式の利点は、園舎の建設に1円も特定財源の投入の必要がないというのですが、本当にこれが合理的なのでしょうか。 そのからくりは、この企業がホームページ上であけすけに述べています。保育園で土地の有効活用を求めているのです。つまり、保育への公費の投入を前提として、企業と地主の利益のために資産運用として保育を利用する、こんなことを許していていいのでしょうか。 現実に、野田政権の目指していることは、現行保育システムを破壊しようとしているのであって、そうなれば採算の取れない株式会社方式の保育所は撤退することになるでしょう。 しかし、保育は子どもを育てるという福祉事業であり、株式会社の事業がつまずいたら、保育が中断するなどということは絶対にあってはなりません。 それでいいのだというなら、長年努力してきた区内の社会福祉法人の保育を否定することにもつながりかねません。 保育は、福祉であり、戦後、区と社会福祉法人の営々たる努力によって築かれてきた歴史でした。これを根本から否定するものは認められません。 保育の株式会社化は、保育という福祉事業を「営利」目的に変質させるものであり撤回すべきであると思うがどうか。答弁を求めます。 3、商店・中小企業の営業を守るために 次に、日々深刻な中小企業や区内商店の営業をどう支えるか、という点についてです。 区内商業活性化のためにプレミアム商品券の発行をあらためて提案します。 昨年の本会議で、区の答弁は、「区商店街振興会が多額の財政負担がかかる、商店街の手間を考慮すると、慎重な結論が必要」と消極的です。 しかし、とんでもない思い違いをされているようであります。たとえば、中央区のプレミアム商品券は、区自身が発行しているものであって、その商品券の換金は、商店街振興会がまとめるのではなく、それぞれの個店が地元の金融機関で換金するので、商店街の手間など一切ありません。問題なのは、こうした有効な振興策に税の投入をしようという考えが全くない、こうした態度です。 しかも、この区が直接・間接的にプレミアム商品券事業に取り組んでいる実績がないのは、都心の千代田区と新宿区を除きますと葛飾区だけなのです。都庁がかつてあった、また現在ある両区は、ある意味で特別な存在の都心区ですので、実質、プレミアム商品券事業を実施していないのは、葛飾区だけなのです。 その遅れを真摯に認め、実施することを改めて求めますが、答弁を求めます。 本区の入札でも一部にきわめて深刻な低入札の事例がみられます。一層、本区内の事業者を育成していくという観点からあわせて、入札制度の改善で区内業者に仕事の確保をするための改善を図るべきと思うがどうか。 低入札は「丸投げ」や下請け業者にいわれのない低賃金を横行させる温床ともなるものです。いま広がっている公契約条例を葛飾区でこそ23区に先駆けて実現し、区内業者を大切にする、そして育成するという観点で改善すべきです。それぞれ答弁を求めます。 被害想定が都内で最大だというのに防災対策もきわめて遅れている、老人福祉費も23区で最低、プレミアム商品券事業もないという、ないないづくしではありませんか。このように区民のための事業にはきわめて劣悪なのに、区民が求めていないところに莫大な税金を投入しようとしている、ここが大問題です。 現在、新「基本計画」を策定中であります。行政が基本計画に記載していることは、それなりの重みをもっています。 「学校トイレ」の改修の遅れは、区の姿勢を如実に表していると思います。2006年からの基本計画では、今年度は15系統なのに、中期実施計画では10系統に削減しました。しかも、この中期実施計画からも削減し、今年も、来年も6系統のみの実施ということになっています。一系統約5000万円といわれていますから、4系統の削減は2億円です。補正予算で42億円積立ておいて、財源がないという言い訳は成り立ちません。 基本計画は、区民に対する公約であります。区長や教育長のさじ加減で勝手に変えていいのか、学校関係者や子どもたちにどう説明するつもりなのか、私は行政の根本問題にかかわるものと認識しております。 確かに、基本計画に数値目標を記載しても住民合意が得られず進まないものもあります。それなのに、立石駅周辺再開発に固執することは、はもはや四つ木・青戸間の連続立体交差化の障害にさえなりつつあります。ましてやこの再開発を促進するために庁舎を再開発ビルの中に移転をしようとするのであれば、区政の許しがたい私物化だと言わなければなりません。 庁舎問題では庁舎整備基金積立の15億円を強引にねん出するために、学校施設整備基金のルールにもとづく積立を先送りしてしまいました。学校施設は震災など災害の時には、住民が直接避難する重要な拠点です。 それを、学校よりも庁舎を優先することは、「震災から区民を守るという姿勢が本当にあるのか」、このことが問われることになります。 このほか、明日の一般質問では、放射能問題、介護保険問題、バス路線問題について質問いたしますが、今日の提案も踏まえて、日本共産党区議会議員団として六つの議員提出議案を提案させていただきました。それにかかる区長提案の一般会計予算案に対する組み換え動議も提出する予定であります。ぜひとも提案の趣旨に賛同していただきますよう訴えまして、質問を終わります。ありがとうございました。 |