2013年第1回定例会 代表質問 質問者 中村しんご
弱者切り捨ての自公民政治から区民の生活守る予算に


【目次】
  1. 来年度予算について
  2. 基本計画の11のプロジェクトについて
  3. 葛飾の教育を大津市の第三者調査委員会調査報告書にてらして

1、 来年度予算について

 日本共産党葛飾区議会議員団の代表質問を行います。
 まず、はじめに北朝鮮による核実験についてです。
 葛飾区議会としても先の19日の本会議で「決議」として団体意思を明確に示しましたが、改めてこれに対し、断固たる抗議を表明します。
 いま、北朝鮮の暴挙に対し、軍事的な対応をあおる勢力がいますが、核廃絶を追求する立場から、あくまでも外交によって、この危機を乗り越えることを強調します。
 第一に、国連が決議した制裁を、北朝鮮を対話のテーブルにつかせるために実効あるものにしなくてはなりません。
 これまで北朝鮮が核兵器の放棄という合意を繰り返し裏切ってきましたが、制裁のための制裁でなく、北朝鮮を対話のテーブルにつかせ核兵器を放棄させるために、中国を含む国際社会が一致して制裁を実効あるものにしていくことが大事です。
 第二に、国際社会が核兵器のない世界を本気で目指すことが大事です。「私たちは核をもう捨てるんだ、だからあなたも捨てなさい。」これが北朝鮮に対して一番強い立場に立てます。
 本区としても1983年に非核平和都市宣言区として平和事業を推進しています。こうした立場から、核廃絶を求める事業を推進していくべきです。
 
さて、来年度予算について質問いたします。
 来年度予算案には、耐震対策 補助額と補助率の改善、不況対策資金融資の限度額アップ、学校給食の一部無料化の導入などは、区民から歓迎されるものです。わが党としてもいずれも、繰り返し要求してきたものです。
 区長は所信表明で、このところ続いている株価の上昇や円安について言及していますが、本格的な景気回復とは断言できません。それどころか、すでに急激な円安により燃料の高騰などで国民生活への影響が広まってきています。
 わが党区議団は、全戸配布したものを郵送で返却していただく方式で区民アンケートに取り組んでいますが、本日現在ですでに、1300通以上回答がありました。
 最大の特徴は、暮らしが厳しくなったという声の多さであり、マスコミの世論調査と同じく、「消費税増税に反対」が多数を占めていることです。自由に現状を書き込める欄には、たとえば「年金生活者。生活は大変苦しくほぼ一日一食です。楽になりたい。」「子ども手当があるからと扶養控除が見直しになり、結局、税金を納めることに矛盾を感じます。40代女性」など切実な叫びとなって表れています。
 
 わが国経済の最大の問題点は、長期にわたって国民の所得が減り続け、経済が停滞・後退するという、世界でもまれな「経済成長しない国」としてしまっていることによるものです。ですから、働く人々の収入を上げることが何よりも求められています。
 国会でわが党議員は、首相自身が経済界に賃金アップを要請するべきとの指摘を受けたのち、経済三団体の代表に要請したことがニュースになりましたが、経済界の反応は、鈍いどころか、昨年打ち出した電気産業を中心とした13万人にも及ぶ大リストラ計画を実行中であり、人権無視の不当行為がまかり通っているのが現実です。     
 
 区長は所信表明で「政府の対策を注視」すると述べましたが、「区として何ができるかという」積極策を打ち出すべきではないでしょうか。ですから、区政として区民のくらしをどのように応援していくかが問われます。
 
 しかし、政府の動向は、これに反する動きがあります。人工的なインフレ計画の足を引っ張る公務員賃金のさらなるカット、生活保護費の削減計画です。
 区民生活への直接的な問題として第一に、生活保護費の削減は、生活保護世帯への影響にとどまらず、最低賃金への影響や就学援助、これまでの非課税世帯に及ぶ新たな影響など国民生活に多大な影響を及ぼすものです。
 ここで区長に伺いますが、政府の計画している生活保護費の削減計画に対して、区民生活に与える影響を鑑み、反対の意思を表明すべきではありませんか。また非課税世帯や現在の就学援助受給世帯に影響が及ぶことのないように政府に対して求めるとともに、区の制度の充実によって影響が出ないようにするべきと思うがどうか。

 第二に、中小企業を守るどうするべきかという問題です。本区でも、現行の金融円滑化法によってなんとか経営を維持している企業も少なくありません。しかし、今年、三月末でこの金融円滑化法が期限切れとなります。東京商工会議所が行った金融機関に対するアンケートでは、円滑化法終了後には44%が代位弁済、保証協会に一括請求する、37%の金融機関が金利の引き上げをあげました。また、三年後には、全国で50万の中小・零細企業が消えてなくなると指摘するアナリストもいます。
 ですから、3月末を期限とされている金融円滑化法の再延長を区長としても求めるべきと思いますが、区長の答弁を求めます。
 
 次に、国民健康保険についてです。
 国保料値上げは、毎年繰り返され、保険料を払うことができない区民が増え続け、収納率も低下する一方です。この保険料の値上げは、区民の景況感を引っ張るものです。
 他区から来年度の国保料についての様々な情報が数々寄せられていますが、これまで情報提供すら一切ないというのは、どういうことなのでしょうか。
 側聞したところによれば、均等割保険料は1200円値上げ、保険料の計算方式の変更に伴う激変緩和策は、わが党としても繰り返し延長を求めていたにもかかわらず廃止する。こんな無慈悲なことを行えば、保険料算定時期の都議選、参院選のころには、激しい怨嗟の声が、区役所に電話で、また、直接、来庁して響き渡ることになるでしょう。
 あらたに、非課税世帯にたいする対策として25年度はただし書き所得から50%、26年度は25%を減額して保険料を算定し軽減策を検討していると聞いていますが、一般会計の繰り入れをおさえるため、高額療養費を賦課総額に参入すると聞いています。その結果、所得割の低い世帯を中心に大幅な負担増が見込まれることになってしまいます。    
 ここで、質問いたしますが、区長は、国民健康保険料の改定等について、区長会でどういう立場で臨み、どういう発言をしてきたのか、そして、来年度国民健康保険料の改定や制度の検討内容を明らかにしていただきたい。
 また、来年度の国民健康保険料が新たな区民負担が生じることのないように、独自の軽減策で、負担増にならないよう軽減策を講じるべきと思うがどうか、答弁を求めます。

 しかし、こうした努力をしても、消費税増税を強行すれば、3%から5%に上げた時以上の深刻かつ最悪の事態を招くことになると警告しておかなければなりません。

2、基本計画の11のプロジェクトについて

 次に、予算案と11プロジェクトとの関係についてです。新基本計画では11プロジェクトを目玉として押し出しつつ、前期実施計画案で具体化された数値目標を具体化しています。
 前定例会でも実施計画素案に基づき、言及しましたが、122の計画事業の中身は、総事業費で912億円、まちづくり関連は78.7%を占めているのにたいし、医療・健康・福祉の分野はわずか、5.7%と目を疑うような数字であり、あまりに冷たい計画で、とりわけ低所得者対策としての計画事業がないではないかというわが党の質問に対して、「低所得者対策は計画事業としてなじまない」とこれまた耳を疑うような答弁でした。
 
 その根源は、11のプロジェクトのなかの「庁舎建替え」と「公共施設の統廃合・リストラ」という二つの異常が突出しているからであり、区民が願う区民サービス向上とは決して相容れない矛盾があるからです。
 まず第一に、小中学校の建替について伺います。
 24年度一般会計の第四次補正予算では、庁舎建替基金には、新たに15億円の積立を行い48億まで拡大、その一方で教育施設基金は、ルールに基づく積立を三年も行わず財調算定額の1/4しか積み立ていません。
 庁舎だけ建て替計画を先行させ、教育施設を後回しでいいのかと批判があがり、「葛飾区立学校の改築にむけた指針」(案)が、作成されました。
 しかし、具体的な計画案を作成したというのに、教育施設の積立基金をひきつづきルールに基づいて行わないのは、学校より庁舎の建て替えが優先という基本姿勢の批判はまぬがれません。
 しかも、庁舎は60年が限界だと強調するのですが、学校施設は、建替えのタイムラグを考慮し、メンテナンスを強化して長寿命化、75年間長持ちさせるというではありませんか。
 また、少子化が進行し、子どもの数が減ることを前提に「20年後、30年後の適正規模化を避けなければなりません。」とこの指針には書かれています。
 それでは一体どこが20年後、30年後適正規模化の対象となるのか、つまるところ、現在、小規模とされている学校を統廃合するための準備を今、準備をしようということではありませんか。
 しかし、教育委員会自身が学校選択制で、どの学校が多くなるか少なくなるか予想がつかない不安定要素を自身がつくっています。
 この指針の資料では、40人学級と35人学級ではおのずと適正規模の人数が異なり、小さくなります。すでに、十数年前の40人学級を前提とした適正規模が通用しなくなっているのです。
 欧米主要な先進国では、一学級はさらに少人数になっており、より充実した学校教育を真剣に模索するなら、さらなる少人数化に進むことは自明のことであります。
 そして、少子化社会を改善するために様々な取り組みで改善していこう、そうしなければ、日本社会の活力が低下するのではと懸念されています。しかし、どうしても学校を統廃合したいがために、子どもの数が減るのだということを大前提にして計画をたてることは矛盾があるのではありませんか。
 いま、やるべきことは、都区財調で算定された教育施設基金の積立をルール通りに積み立てるべきです。
 わが党は、学校の建て替えを促進して、学校教育を充実させることを願い、災害時には、地域の拠点としての機能を発揮できるようにすべきと考えます。こうした立場から、区立学校の建替え指針の抜本的な見直しを求めるものです。それぞれ答弁を求めます。

 第二に、子育て支援施設についてであります。
 子育て支援施設についての区長の現状認識です。
 今月16日に私立保育園連盟の永年表彰式・記念パーティが行われましたが、区長はあいさつで保育所の増設に力を入れてきたことを強調しましたが、増設の努力は我々もよく存じ上げています。しかし、「待機児を4月にゼロにしたい」と繰り返し、強調しました。
 新基本計画の11プロジェクトには、「待機児をゼロ」を掲げました。待機児問題はなんとしても解決しなければならない課題ですけれど、夏以降は、0、1、2歳児の募集枠がきわめて少なく、今年度も募集枠がゼロとなり、ましてや年度後半には何百人という待機児が現実にある状態に背を向けるものです。
 改めて、区長の「待機児ゼロ」という認識を問うものであります。答弁を求めます。
 
 昨年、子ども・子育て新システム関連法が、「税と社会保障一体改革」の一環として成立しました。当初、民主党政権が、認可保育所の区市町村の「保育実施義務」の完全な解体を狙っていましたが、自公民の修正協議のなかで、現状の区市町村が実施義務守られたことは、関係者の強い願いが反映したものだといえます。
 しかし、保育に対する公的な責任の後退は様々な形で表れ、認可保育所の施設整備に対する国の補助金の扱いが後退しました。これまでの児童福祉法では、私立認可保育所の新設・修理などに対して、国が二分の一、区市町村四分の一の割合で補助してきました。これが新増設の最大の力になっていたのが、「新システム」では、施設型給付費などのなかに含めて給付することとなり、新法実施後の財源の保証はありません。

 前定例会の保健福祉委員会で「子育て支援施設の整備方針の策定について」という庶務報告がありましたが、官民の役割分担の在り方を見直すとして、拠点施設以外の公立保育所や児童館、学童保育クラブは民営化するとの方向が示されました。
 そのさい、効率的な施設更新等の実施として国等の補助制度を活用して施設整備するというのですが、将来、その保証がないことをどのようにお考えですか。
 だからこそ、わが党は、東京都に対して、都独自の公立保育所の建替えの財源保障を求める交渉も行ってきましたが、区も同じ立場に立って、都に働きかけるべきではないか、答弁を求めます。
 そして、国に対しても、公立施設も民間施設にも認可保育所施設整備にかかる補助金の規定を明文化するよう児童福祉法の改正を求めるべきと思うがどうか、答弁を求めます。

 また、「子育て支援施設の整備方針の策定について」では、適正規模の建替えや統廃合を行うとあります。
 子育て支援施設問題の冒頭でも指摘した通り、これだけの待機児が存在し、供給のバランスが全く取れていないのに、統廃合とはいったいどういうことなのでしょうか。今日の社会状況は、ますます、保育需要が高まることは明らかです。この高まる保育需要にどうこたえていくのかが、最大の課題であり、「子育て支援施設の整備方針の策定について」は抜本的な再検討を求めます。
 なお、「子育て新システム」は、戦後、70年近く葛飾の保育を支えてきた社会福祉法人の存立も脅かしかねないものであり、区長がこれを許さない立場を地方から声を上げるべきだということを重ねて指摘しておきます。
 
 第三に、地域コミュニティ施設の問題です。 
 そもそも、地域コミュニティ施設は、交通アクセスの便利さや、他区との区界、本区は河川に囲まれた地形であることから、施設の利用状況に差が生じることは避けられないのは当然です。しかし、これまで、区政として住民の要請に応えてこれら施設整備を行ってきました。利用率が低いから住民に廃止を迫るということは絶対にあってはなりません。利用率が低いのは決して住民の責任ではなく、行政の無策にあることを反省し、利用率を上げる努力こそ行うべきではありませんか。答弁を求めます。
 
 第四に、保健センターの統廃合です。
 区自身の行った保健センターの今後のあり方、現状分析などから、どう考えても統廃合はあり得ません。
 むしろ、立石から青戸に移転したことによって、わが党区議団のアンケートでも、保健所が不便になってしまったという意見が圧倒的です。区長は、区内の行政単位を七つに分けて区民事務所や子育て支援施設の区分を行っていますが、そうであるなら保健センターは現在、六カ所であり、減らすどころか新たな設置こそが求められている課題だと強調しておくものです。

 以上、身近な公共施設の在り方について述べてきました。
 東日本大震災から間もなく二年となりますが、東北三県の被災地では平成の大合併によって基礎的自治体が拡大・広域化し、望まれる支援にばらつきや困難を作り出し、一部孤立化する地域を生じさせました。
 こうした教訓に照らせば、災害発生時には、学校をはじめ身近な公共施設が最大のよりどころとなり、その安全性の確保が最優先させるべきです。
 東京都は、鉄筋コンクリートのメンテナンスの技術向上により都内の橋梁を100年から200年使用できるとしています。
 なぜ庁舎だけは、学校のように75年間長寿命化、さらなる長寿命化の検討がないのか、私には全く理解ができません。ましてや、七階建ての新館は、竣工して現在35年しかたっていない、これまで壊して庁舎建て替えなど絶対に許されるものではありません。

3、葛飾の教育を大津市の第三者調査委員会調査報告書にてらして

 最後に、葛飾の教育について質問いたします。
 現在、教育振興計画の策定中ですが、これまでの施策の方向性に一部変更の兆しがみてとれます。学校選択制についても現状のままでは、解決できない諸問題がおこり、夏休みの縮減についても、検証できないなど問題点を掘り下げようというのは当然のこととして受け止めています。

 いま、教育の現場では、相次ぐいじめによる自殺事件や大阪市立桜宮高校での教師による体罰・暴行で自殺に追い込まれた事例など痛ましい事件が相次いでいます。
 なかでも大津市立中学校でのいじめ自殺事件では、自殺した中学生に対してのいじめの事実を解明するために同市が設置した第三者調査委員会が調査報告書をまとめ市長と教育委員会に要請を行いました。この調査報告書には、自殺に至る経過、教員、学校側の問題点について様々に角度から明らかにしています。

 まず、教育長は、大津市のいじめ自殺事件の第三者調査委員会の調査報告書について、どのようなご認識を持っているのか、答弁を求めます。
 
 私は、大津市中学校の事例が特別、特殊な事情で発生したものでは決してなく、どこでも起こりうる可能性があると思います。なぜなら、第三者調査委員会という組織を立ち上げて真摯に生徒、教員、保護者と真正面から向き合い、問題点を明らかにしたこの調査報告書から読み取れるのは、本区の教育現場にも存在する問題点があると思うからです。

 以下、私の持っている問題意識から四点の質問をしたいと思います。
 まず、教員間の情報の共有化がおこなわれなかったのは、職員会議で意見交換が活発に行われていないという問題点があげられています。
 近年、ことさら校長の学校経営という観点から、職員会議はもっぱら上意下達の会議として位置付け、教員間の意見交換ができていない、意見交換しないという事の改善が求められると思いますが、どうでしょうか。
 
 二つ目に、教員がいじめの認知に消極的になる原因は複雑に絡み合っているが、一つには、学校全体にいじめの存在が学校のマイナスイメージにつながっている意識の問題です。いじめが進行し、重大な結果をもたらすことを未然に防ぐためには、いじめを早期に発見し有効な対策をとる学校と教員こそが積極的に評価されるべきであると指摘しています。
 大津市もわが区と同様に、学校選択制を行っていますが、選択の評価にさらされる学校がいじめの存在やその他さまざまな問題点を隠ぺいしようとする、こうしたシステムそのものに、問題の解決を遅らせる制度的欠陥となると思うがどうか。
 
 三つ目に、教員の多忙化も一つの原因としてあげられています。
 文科省の統計によれば、この10年間に精神疾患で休職した教員は、2.5倍に増加しました。この調査報告書は、文科省に対しても、多忙化する教員をそれから開放すべく具体的に考案、実施すべき、と提案しています。
 区内の小中学校教育現場でも夜間に至る指導の準備や教員間、生徒、保護者との関係で多忙を極めている多くの教員が存在していますが、その解決のためにどうすべきだとお考えでしょうか。
 
 四つ目に、講師身分の固定化についてです。
 大津市の場合、学校現場で昇給のないままの臨時教員が、12.6%を占めていることを指摘したうえで、そうした臨時教員を正当な評価の下に正教員として採用し、身分と地位を保証して、十分に能力を発揮するようにすべきと指摘しています。
 本区中学校では、臨時教員とその他、非正規の学校職員の割合は21%となっており、制度は異なっていますが、非正規の職員の割合は、大津市を上回っているのです。
 そうであるなら、本区では、安易に非正規職員を無制限に拡大してきたが、待遇の改善を図るべきと思いますがいかがでしようか。
 
 この調査報告書の問題点のまとめには、今や社会的には、学校・教育委員会による事実の隠ぺい、あるいは事実の歪曲と言われているが、いずれにしても事実の究明、その真摯な検討を怠ってきた責任は重いと指摘しています。
 今月12日付朝日新聞では、住友剛・京都精華大学準教授が、「学校選択制や競争主義を問い直す時」と指摘しています。これらを踏まえて答弁を求めるものです。