2015年第一回定例会代表質問 質問者 中村しんご

開催日:平成27年 2月26日 

 日本共産党葛飾区議会議員団の代表質問を行います。

 ISと名乗る過激派武装組織によって邦人2名が殺害されました。被害に遭われたご本人や家族の皆様に心からお悔やみを申し上げます。何よりも、この卑劣なテロ行為を厳しく糾弾しなければなりません。相手が野蛮で無法な組織であるからこそ、国際社会が国連を中心に、国際法、国際人道法を厳格に守って行動することが何よりも重要であり、テロを追いつめる一番の力になるものであります。この事件がなぜ起きたのか、冷静な検証が求められているのに、この間の国会質疑で安倍首相は、テロに屈するの一言で異論を封じていますが、こうした態度は冷静さが欠けていると言わなければなりません。それどころか、首相は米軍の空爆に対する日本の支援も憲法上可能だと発言し、この事件を機に海外で戦争する国づくりは絶対に許されません。日本共産党は、憲法9条の精神で平和外交を推進するよう求めてまいります。
 まず、区民が置かれている経済的な状況について、区長の認識を問いたいと思います。
 先日の所信表明では、我が国の経済は、雇用・所得環境の改善傾向が続くなど、緩やかな回復基調が続いていると述べられましたが、現状認識が事実に基づいていないのではありませんか。ずれた現状認識では、おのずとずれた予算編成が行われることになると心配をするものであります。所信表明では、「消費税引き上げに伴う駆け込み需要の反動や円安の影響に伴う輸入物価の上昇などから個人消費などに弱さが見られる」と続くわけですが、これもリアルではありません。
 内閣府が発表した2014年10月から12月期のGDP速報値は、実質で前年比0.6ポイント増と、民間予測を大きく下回る低い伸びにとどまりました。雇用者報酬でも実質では0.5%の減となり、賃上げが物価上昇に追いついていません。消費税増税の落ち込みを回復できていないことを示しています。IMFも同年7から9月期に、日本経済は事実上、景気後退局面に入ったと断定していることも直視すべきであります。アベノミクスの破綻は明瞭です。アベノミクスは、大企業、富裕層の利益が上がれば、やがて全体に循環するというトリクルダウンの理論に基づく政策ですが、OECDが昨年12月に発表した報告書では、格差拡大政策では経済成長はできないと断じ、トリクルダウンは誤りだと結論づけました。フランスの経済学者ピケティ氏も論文で提唱しているのは、これと共通しているものであります。
 現在、我が党区議団は、区民アンケートに取り組み、ほぼ1カ月で1,300通の返信がありました。暮らしがよくなったという回答はわずか2%であるのに対し、苦しくなったは何と74%にも上ります。その原因を尋ねると、支出増が多くを占めており、何の支出が増大したのかという回答では、公共料金、健康保険・介護保険料、税金がトップスリーでありました。つまり行政の対応が問われているのではないでしょうか。それなのに、来年度予算は介護保険・国民健康保険料の新たな負担増を求めています。
 区長は、景気回復を期待し、動向を注視すると表明されましたが、これは経済がよくなっているという現状認識から来るものであり、区民生活の深刻さを実感しておられるでしょうか。また、消費税増税による区民生活への深刻な影響について、どのような認識を持っているのか、答弁を求めます。
 次に、2015年度予算案とこれに関連する今年度補正予算案について伺います。
 2015年度予算案の大きな特徴の一つは、8%になった消費税交付金の平年度化によって29億円以上の大幅な税収増になったことであります。区民の暮らし、営業は消費税増税によって大きな困難を強いられているという認識に立つならば、その税収増の部分は、全て区民の暮らし、営業応援のために役立たせるのが当然だと思います。
 しかし、第4次補正予算案では、懲りずに総合庁舎整備基金に15億円が積み増しされました。ですから、消費税増税による交付金の増が29億円、庁舎基金に15億円、これは誰が見ても消費税増税の半分は、庁舎のためにため込まれたという批判は免れません。
 それどころか、介護保険料は前年比約10億円、国民健康保険料は加入者12万
 7,000人分の前年度比で約2億5,000万円の負担増になり、今でも高額な負担が大変になっている保険料のさらなる値上げとなります。
 政府は、消費税増税が社会保障の安定化のためだと説明してきましたが、安定化どころか、介護保険だけを見ても、介護報酬の引き下げ、要支援者の意図的な介護外し、施設入所の補足給付も後退、相部屋の部屋代徴収、一定の所得のある方からは1割から2割負担へと制度改悪のオンパレードであります。医療でも入院時の食事代の負担増の計画が進められており、新たに打ち出されているのは負担増ばかりであります。生活保護費の削減も今後規定どおり、さらに住宅扶助の削減なども行われようとしております。
 そこで、区長に伺いますが、2015年度からの国の社会保障制度が後退しているこの現状認識について、答弁を求めるものであります。
 以下、分野別に問うものであります。
 第1に、子ども・子育て支援新法への対応と子供の貧困対策についてであります。
 子ども・子育て支援新法の施行に当たり、本区でも、子ども・子育て支援事業計画の策定が進められています。基本計画でも保育待機ゼロがプロジュクトの一つにされており、本区にとっても重要課題であるというのが共通の認識であると思います。新事業計画では、平成27年から29年の3年間で認可園601名分の増設、小規模保育事業は644名分増設するとしています。
 来年度予算案では、2016年度から保育が実施されるのは金町4丁目保育園の60名分だけであり、小規模保育事業も青戸三丁目に10名から15名程度となっています。認可園と小規模事業で毎年400人分の増設が必要と見込まれますが、これで達成できるのでありましょうか。事業計画の数値目標では、当初の3年間で目標達成しようということですから、そのために今後どのように取り組んでいくのか、答弁を求めます。
 厚生労働省は、去る1月14日、各自治体に来年度待機児童数の調査依頼の中で、新たな待機児童の定義を示しました。これは保育所待機児を見せかけで減らすために、例えば育休中の場合は待機児童数に含めないことができるであるだとか、待機に含めなかった幼稚園で預かり保育中や一時預かりに入所している場合は、除外対象施設にしてもよいとするものであります。こうした新基準が乱用されるならば正確な把握ができなくなるだけで、現在、認可施設に入所したいという父母の願いに背き、新たな混乱をもたらすだけであります。
 この新基準は、実際にどう定義するかは自治体の裁量にかかわるものであり、本区では現基準と新基準とではどのように対応をするのか、答弁を求めます。
 保育料については、7%の保護者が負担増になるという試算でありますが、負担増とならない対策を実施すべきと思うがどうか、答弁を求めます。
 さて、格差と貧困の広がりが我が国の大問題になっています。昨年7月20日のOECD発表記者会見では、日本の相対的貧困率がOECD加盟国中、第2位になったと発表がありました。いまや相対的貧困率は16%以上に達し、とりわけ親1人の世帯では、相対的貧困率が50%を超え、事態を深刻にしています。
 こうした現状から、子どもの貧困対策推進法が2014年1月に成立し、同年8月には子どもの貧困対策大綱を閣議決定しました。
 足立区の2015年度当初予算発表の冊子を見せていただきましたが、23ページのうち17ページが貧困の連鎖を断つためにと題し、来年度を子供貧困対策元年にするとし、政策経営部内に子どもの貧困対策担当部と担当課を設置し、全庁を挙げて子供の貧困対策関連事業を実施・強化すると宣言しています。
 私もこの法律と大綱を読みましたが、地方自治体としての責務も明瞭に示されており、極めて具体的な提起が行われていると思います。確かに国や都が果たすべき役割が大きいと思いますが、足立区のような決意のもとで事業が推進されるならば、必ず成果をかち取ることができると思います。
 そこで、子どもの貧困対策大綱に示されている地方自治体としての責務に照らし、今後、何を実施するかが問題であります。私は、区内の子供の実態把握のためには、調査研究が出発点だと考えます。国の大綱がそう示しているので、まずは区内の状況を調査する必要があると思うが、どうか。
 そして、足立区が先行して設置した子どもの貧困対策本部を全庁的体制で施策を検討できるように本区でも設置を検討すべきと思うがどうか。
 第2に、小規模企業への支援についてであります。
 昨年の通常国会で、小規模企業振興基本法が全会一致で可決されました。経済産業省はこの基本法に基づく基本計画を10月に策定しました。小規模企業とは、いわゆる中小企業よりも小さい、製造業では20名以下、サービス業では5名以下の事業所を指します。1999年に中堅企業やベンチャー企業への支援にシフトした中小企業振興基本法の抜本改定が行われたことについて、我が党は批判をしてまいりました。しかし、最新の中小企業白書には小規模基本法の制定は抜本的なパラダイムシフト、つまり価値観を変えたということであります。同法の基本計画には、その冒頭から、全国385万の中小企業、中でもその9割を占める334万の小規模企業の事業活動が重要な存在であり、我が国経済の活力の源泉だと強調しています。しかし、国内外の競争激化や構造変化によって、小規模企業がとりわけ厳しい立場に置かれていることを強調し、小規模企業施策の抜本的な見直しと強化について、4つの目標と10の重点施策を打ち出しました。
 本区では、産業活性化プランは2006年から2015年を最終年として策定され、今日に至っています。来年度は最終年度に当たるため、その後の総合的な計画が今求められております。ですから、産業活性化プランに続く葛飾区の小規模企業活性化のための計画策定は当然の流れだと思いますが、答弁を求めるものであります。
 同法の具体策である国の緊急経済対策として、本区も2014年度第5次補正予算で、プレミアム付商品券発行を区長が表明しました。これまで我が党は繰り返し実施を求めてきましたので、区民は歓迎するものと思います。プレミアム付商品券は1回発行すればノウハウが蓄積されるものであります。区の施策として定期的に発行すべきだと思いますが、答弁を求めます。
 去る2月12日に東京国際フォーラムで行われた葛飾発信町工場見本市に、私も会場へ参りまして、出展者のご意見を聞いてまいりました。我が党は、見本市の開催を求めてまいりましたので、素直に歓迎したいと思います。現場では、商談や、その後も問い合わせがあったなど、仕事確保に効果があったと喜びの声も伺っています。今後、現場の声に基づいて発展させていただきたいと思います。
 第3に、地方自治体のあり方とコンサルタント会社について質問いたします。
 区の仕事をコンサルタント会社任せ、自主性が問われていることに警鐘を鳴らさなければなりません。2010年から3年間、区役所改革支援業務委託費として、行革方針のさらなる展開が必要だ。民間の発想でという理由で、コンサルタント会社に約2億円もの支出が問題になりました。
 先日、2月16日の金町北口まちづくり勉強会でも、区の職員は開会、閉会の挨拶だけで、勉強会の運営は全てコンサルタント会社の方がなさっていたとのことであります。東四つ木の密集整備事業も、かつては区の職員が地域の拡幅道路にかかる区民の所へ繰り返し出かけていって交渉が行われ、整備が進められてきました。
 しかし、今、地区計画に移行する時期に、区内、地域内の全戸配布やアンケートの取りまとめ、計画に対する新たな立案が建築士事務所などに丸投げされるようになってきています。これは各地の地区計画のこの間の特徴であります。旧松上小学校への医療機関を誘致する計画の正当性をまとめた、2013年3月の区内医療環境充実のための調査等委託報告書がまとめられました。しかし8,500万円も費やし、報告書が必要だったのか。新小岩・奥戸地域には現実に救急搬送可能な医療機関がないことから、区が医療機関を誘致することは新たな理由づけが必要であったとは思えません。そして、学校の建てかえについて、コンサルタント会社の活用が行われることがわかりました。先行した中青戸小学校の建てかえについては、このような方式では行わず、教育委員会が建てかえについて建築会社とともに住民に説明を行い、建てかえ期間中の生徒の教育活動に問題がないように努力したことは当然であります。
 しかし、来年度から実施する東金町小学校と小松中学校の全面建てかえ、本田中学校の一部建てかえについて、コンサルタント業務を含め、建設事業についてプロポーザルを実施しています。住民とのトラブルも、教育活動への影響を緩和するための活動も、全て民間会社に対応させるおつもりなのでしょうか。予算案の随所に、とりわけ総務費企画調整費と都市整備費のまちづくりの項にコンサルタント委託が目立ち、全体的に急増しているのが特徴であります。地区計画や学校建てかえ、調査報告書などの業務は、基本的には区が実施すべきものであり、安易にコンサルタント会社に委託するべきではないと思いますが、答弁を求めます。
 第4に、まちづくりについて伺います。
 来年度予算案は、区役所の建てかえに固執した予算であります。そのために立石駅北口の再開発を進めることを前提に、立石駅北口地区市街地再開発事業経費助成として当初予算で約2,700万円が計上されております。2014年度予算でも当初予算で同額を計上していますが、第4次補正で事業が進まないからという理由で減額補正がされております。金町南口再開発関連事業も同じで、1億3,400万円もの巨額の財政操作が行われています。しかし、こんな財政操作を毎年なぜ繰り返しているのでしょうか。立石も金町も、何と5年間同じことを繰り返していることに違和感がないのでしょうか。予算がないとよく一般的に言いますが、これらを合わせて1億6,000万円あれば、区民の要求に応えるさまざまな事業を実施することは可能であります。見通しの立っていない事業に当初予算を計上するのは間違いであると言わなければなりません。
 各地のまちづくりも、地区計画の悪用というほかない乱暴な手法であります。本来の地区計画とは、住民がみずからの意志、発案によって自主規制したり、乱開発からみずからを守るものとして始まったものです。ところが、行政側の拡幅道路の指定や建築物の規制をつくり、都市計画決定し、条例化しているのが現状であります。したがって、住民の理解を得て進めるのではなく、結果として、いざ建てかえとなると建築条件が変わっているという問題を先送りしているにすぎません。
 今年度進めようとしている四つ木一・二丁目地区についても、住民への周知が不徹底であり、都市計画決定は急ぐべきではありません。まずは都市計画決定を延期し、説明責任を果たすことを求めます。答弁を求めます。
 高砂南地区や東新小岩二丁目の計画も問題点は共通しております。スケジュール先にありきではなく、まず拡幅道路の指定や土地利用の変更について、全ての住民の理解を得て実施すべき事業であります。そのために、地区計画を街区ごとに細かく分け、住民参加で街区ごとの地区計画に変更すベきと思いますが、いかがでしょうか。答弁を求めます。
 最後に、学校教育について質問します。なお、教育委員会制度については、区長に問うものであります。
 まず、塩沢教育長の就任後、教育委員会の変化は大変重要であると思いますし、全てではありませんが、我が党が主張し続けたこともありますし、注目をしております。夏休みの短縮を中止したのに続いて、来年度、学校選択制も廃止し、2016年度から基本的には学区による入学手続が行われることになりました。
 さらに、さきの文教委員会の質疑では、小中一貫教育校の設置計画を新小岩学園、高砂けやき学園についての検証の結果、残りの3校については事実上凍結をする宣言をされました。国と都の学力テストについては、平均点を公表せず、子供たちの学習の到達度を客観的に評価し、何に問題があり、どの点が以前と比べて変化しているのかという評価方法に変えました。
 教育施設整備積立基金の不正常なルール変更で積み立てが行われてきませんでしたが、
 2014年度第4次補正予算案と来年度予算案において、いわゆる都区財調で算定されたルールどおりの積み立てを計上したことは当然のことですが、これも重要な変化だと認識をしております。
 小中連携教育の今後のあり方について、グランドデザインを策定するという報告も行われましたが、これも当然であり、これを後回しにして、小中一貫教育校を設置したことが大問題だと言わなければなりません。学力の向上についても、自己肯定感についても効果がなかったという検証結果に基づき、予定していた3つの一貫校を行わないと言うなら、全区で等しくグランドデザインのもとで教育活動を実施するのが筋であると思います。したがって、現行の小中一貫教育校は、存廃も含めて検討すべきだと思いますが、答弁を求めます。
 また、新宿六丁目地区が2016年度から児童が急増する対策として、原田小学校と東金町小学校のどちらかを建てかえると表明しておきながら、昨年、東金町小学校を先に建てかえるという結論になりました。むしろ原田小学校の方が古いのに、いつまでも後回しは許されません。原田小学校の建てかえを何年から着手するのか明確にすべきであります。答弁を求めます。
 次に、新たな教育委員会制度について、区長の見解を問うものです。
 マスコミ報道では、昨年12月に千葉県野田市の根本崇市長が、市の教育指針づくりを市教育委員会の考え方を基本に進める意向を明らかにしました。教育への政治関与を強めようとする国に対し、異議を唱える動きとして注目されています。現行の教育委員長と教育長を統合した新教育長は区長が任命権を持つことになり、教育指針づくりの場として新設される総合教育会議も区長が招集できるようになる制度改定であります。本区の場合、現教育長の任期が2016年10月までなので、新制度への移行は1年8カ月後ということになりますが、区長の任期は2017年12月までですので、新制度をどのように移行するのかが問われる問題だと考えます。野田市長が首長の関与を抑制する判断をしたことについて、区長の見解を問うものであります。答弁を求めます。
 なお、答弁いかんでは再質問させていただきますことを表明いたしまして、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。