2017年第一回定例会 代表質問 質問者 中村しんご

開催日:平成29年 2月23日 

 日本共産党葛飾区議団の代表質問を行います。
 2017年度予算案について伺います。
 わが党は、昨年の決算委員会での質疑を踏まえて、昨年11月に区長に予算要望書を提出し、区民の要求実現に尽くしてきました。
 そして、去年の暮れから区民アンケートを作成し、区民に届け返信用封筒で送っていただいています。今回のアンケートの返信状況は、過去最高と言ってよいほどのスピードで寄せられており、二年前の返信数をすでに上回り、昨日現在、1600通以上となっています。
 その背景には、安倍政権の経済政策の行き詰まりが、区民生活に重くのしかかっていることが伺われます。暮らし向きがどうなったか、という設問には「良くなった」との回答は、わずか2.7%、「苦しくなった」は54%と大半を占めています。
 苦しくなった原因は何かと、問うと、複数回答を可とした集計ですが、トップは医療・介護保険料で37%、医療費25%、公共料金22%、税金19%と続きます。
 この結果は、国や区の社会保障制度の改悪に次ぐ改悪、アベノミクスなる経済対策が多くの区民には、深刻な事態となって表れていることを示しています。
 ところが、安倍内閣の「経済・財政計画改革工程表」はさらに社会保障分野の後退に拍車をかけるものです。
 具体的には、70才以上の高額療養費制度、高額介護合算療養費制度、入院時の居住費・水光熱費負担の見直し、これらは押しなべて容赦のない負担増であり、入院時の水光熱費負担は、これまで徴収をしていなかった低所得者に対する負担増の押しつけとなります。
 さらに、後期高齢者の保険料軽減特例の見直しです。制度導入時に、あまりにも高齢者の不満が高まり、法定7割、5割、2割減免の他、低所得者に減免制度を設けましたが、その減免をはぎとろうとしているからです。高まる批判は、区に押し寄せられるのは免れられません。
 そこで、第一に、区民のくらしを支え守るために区政がどのように対応すべきなのかということです。
 厚労省が今年1月25日に明らかにした「経済・財政計画再生改革工程表」に示された新たな負担増に対する区長の認識を伺います。
 そして、新たな負担増に来年度予算において、どのような配慮がなされたのかご説明いただきたい、答弁を求めます。

 国民健康保険料の大幅値上げへの対応も重要です。
 国保の大幅値上げは深刻な事態を巻き起こすことになります。均等割3300円、所得割との合計で本区の場合、平均6984円の値上げとなり、近年、まれな大幅値上げ案が国保運営協議会で諮問されています。この値上げは、国保の都道府県化を2018年度予定通りすすめることを前提とし、一般財源の繰り入れ割合を縮小することに値上げの原因があります。
 各都道府県の関与の仕組みが作られますが、市区町村は法令に従って決定する「納付金」を収めることになります。したがって、それぞれの市区町村の政治判断で、保険料もそれぞれ決定することができます。
 一方、青木区長も含めて、特別区長会が都知事あてに来年度予算について、昨年8月に要望書を提出しています。これによれば、医療保険制度の充実として「低所得者に配慮した財政支援の強化」を区長会として都知事に要望しました。
 私は、現在、国保運協が示した保険料案では、区長が要望した「低所得者に配慮」は不十分だと思いますが、区長の認識をまず、伺います。
 私は、こういう酷な値上げ案に対して、どう区民の困難解消のために施策を実行するのかがまさに問われていると思います。
 多子世帯への均等割免除をはじめ、保険料軽減の新たな取り組みを実行すべきと思うがどうか。
 また、社会保障制度としての保険制度であり、保険証がないことによる症状の悪化を制度的に招く、資格証の発行はやめるべきです。答弁を求めます。
 国民健康保険制度での差し押さえについて伺います。前年決算では、518件の差し押さえが行われました。
 理事者は、補助金が交付されることを目的として「差し押さえをしているのではない」と答弁しますが、国会でも都議会でもわが党は、この「差し押さえ」問題を質し、現に起こっているゆき過ぎた厳しい取り立ての実態を指摘しましたが、国も都も、こうした実態を十分把握していない事態も明らかになりました。
 滞納に至る経過には、生活だけではなく、メンタルも含めて医療的な側面や、事業者の場合、経営にかかわる困難などその要因は様々です。
 国保料だけではなく、税、保育料なども含め滞納が始まるというのは区民にとって一つのシグナルととらえるべきではないでしょうか。
 滋賀県野洲市の取り組みは、重要だと思います。山仲善彰市長は「生活再建支援で滞納解決」を旗印にして、「生活壊す滞納整理は本末転倒、生活を壊さずに納付してもらうのが原理原則」と話し、債権整理や就労、健康推進課のメンタルヘルスや法律相談など庁内の各課が連携し、その仕組みを保証するために「野洲市債権管理条例」を制定し対策を行っています。山仲市長は、「自立支援を優先することは理想論すぎる、という指摘もあるが、目の前の一人を救えなければ、問題は解決しない」といいます。本区でも、条例制定も含めて検討すべきと思うがどうか。

 昨年の四定で、廃棄物の処理等に関する条例の一部改正があり、結果として事業者に重い負担を押し付け、粗大ごみの処理では、大きさや重さに合理的な根拠がない区民負担の押しつけを来年度から実施するという結論となりました。

 このように来年度予算案は、区民のくらし・福祉・営業に後ろ向きな予算になっているというのが特徴です。

 第2に、積立基金の関する問題です。
 2016年度末の基金残高は、合計1100億円となり過去最高を更新し続けています。庁舎のための基金に毎年、15億円を積まなければならない合理性はありません。
 一方、教育施設整備積立基金について不自然な財政操作が行われています。
 これは、青木克徳区政になってからの一つの特徴だといえると思います。
 区長の前任期から始まったことですが、毎年21億円ほどの教育施設整備積立基金を3年連続で財調算定額の1/4にとどめ、前年度の最終補正で15億円を庁舎整備基金に積み上げるという財政操作でした。「学校の建て替えを後回しにして、庁舎が優先なのか」と批判を受けたのは当然です。
 その後、2016年当初予算までは、財調算定額を教育整備積立基金に計上してきたのですが、来年度予算案では、教育施設整備基金を3億円に削減しています。そして、庁舎整備基金には、これまでどおり、前年最終補正で15億円が計上されています。
 これは、本来、教育施設のための基金を庁舎にすり替えたと批判されても仕方ありません。
 ましてや、学校の建替え、改修の計画が進められているときにこのような財政操作は行うべきではありません。
 2017年度当初予算の教育施設整備積立基金は、財調算定額全額とすべきと思うがどうか、答弁を求めます。

 第3に、公共施設等経営基本方針による公共施設つぶしが計画されている予算になっているのですが、庁舎だけは特別扱いしていることです。
 区民サービスの向上と言いながら、区民にとってなくてはならない公共施設の狙い撃ちが進められてきました。高砂、小菅の両保健センター、新小岩児童館・憩い交流館、葛飾教育資料館などです。
 さらに今後、西新小岩の児童会館、細田児童館、小菅児童館、鎌倉公園プール、新水元学童保育クラブの廃止などです。
 保育園の民営化は新小岩保育園、亀ヶ岡保育園が進行中であり、今後、東立石・半田の民営化が検討されています。
 希望者が多く、進めることができなかった青戸中央、東堀切、東奥戸、梅田各学童保育クラブの廃止も検討されており、このことは、児童館の全廃計画と表裏一体であります。    
 ところが、区役所庁舎だけは特別扱いです。学校は建替えと改修校が決まり進めることは当然ですが、補正予算で教育施設整備基金につんだ30億円は、長寿命化のための対応だと説明を受けました。これは、公共施設を75年間使えるように長寿命化させるためのものです。公共施設を長寿命化させるために必要な経費を支出することは歓迎されるべきことです。
 しかし、区役所庁舎だけは何故、長寿命化の検討が行われないのか。とりわけ、面積の大半を占める新館は、38年であり新館より新しい学校は 校しかなく、不自然極まりありません。
  先ほども紹介したわが党の区民アンケートでは、区役所の建替え問題についても区民の意向を伺いました。
 区役所建替え・移転について、知っているかどうかという設問では、「知っている」と「知らない」はぼ半々でした。
 また、区役所の建替えに賛成は18%あまりで、中止すべき・その他は8割を超えています。ここでも、区民の意見は建替え・移転は歓迎されていません。
 いま、やるべきことは、建替え・移転計画に前のめりになることではありません。
 ところが、すでに巨額の経費をかけて、新庁舎の基本構想をつくり、さらに、今年度は、「新庁舎整備基本計画」を策定するために1200万円が計上されています。
 立石駅北口再開発は、現在、「都市計画決定を行う」というものの決定しているわけでもなく、本組合が作られて権利変換まで実施される保証はありません。それなのに、こうした「計画」をつくること自体が、税金の無駄遣といわなければなりません。答弁を求めます。
 
 第4に、立石駅北口再開発にしがみついていることによって矛盾が噴出していることです。
  わが党が指摘し続けてきたとおり、連続立体交差化事業と再開発は全く異なる事業であり、リンクさせないことを求めてきましたが、稀しくも、わが党の指摘通りとなり、連続立体交差化事業が先行して工事が始まりました。
 
 この再開発を是が非でも進めるために巨大な保留床を区が買い取り区役所を移転させることとしました。
 再開発準備組合が平成22年、2010年に区役所移転を前提とした計画案をとりまとめました。翌年、「総合庁舎整備の在り方検討委員会の取りまとめ」を発表し、現地建替えは240億、立石再開発の保留床を購入した場合、264億と試算し、現庁舎跡地を44億円で売却すれば、220億円と書き、立石駅北口再開発をベストな案と判定しました。
 しかし、平成27年になって西棟と東棟を入れ替えてマンション件数をほぼ倍加するという案が示されました。
 事業費は、平成22年案は総事業費518億円であり、平成27年案は、総事業費が728億円になることが、明らかになりました。
 変更の理由として、原材料費や人件費の高騰などをあげていますから、区役所部分の工事費も上昇しているものと推察されます。
 平成23年には、再開発ビルの床を買って付帯施設の整備に264億円として、判断したのですから、新しい平成27年案は区役所建設移転にいくらかかるのかを説明する義務が区にはあります。その額を、きちんと示していただきたい、答弁を求めます。

 現在の局面で最大の焦点は、再開発のための都市計画決定を強行しようとしていることです。先の定例会の都市基盤整備特別委員会でも、この報告があり、私を含めて、複数の委員から、地権者の合意、法的要件を満たしていないにもかかわらず、都市計画決定を進めることには問題があることが指摘されました。
 再開発の法的要件を満たしていなくても、都市計画決定は可能である旨の姿勢を崩していないことは、容認できるものではありません。
 予算概要の中で、前年、「都市計画の支援」から29年度は、「都市計画決定を予定」とあからさまに宣言していることにも表れています。
 しかし、際限なく巨大化する工事費に疑問を抱く地権者が増えて、昨年、暮れには、6名の地権者が準備組合を脱退しました。準備組合にとどまっている地権者の中にも最終的に立石北口再開発には、同意できないと語っている地権者もいます。
 都市整備特別委員会では、担当課長が6割の同意を得たと答弁しましたが、それは、平成27年案が提案される前の割合であり、現に脱退、準備組合内に反対を表明している地権者もいるのですから、地権者準備組合に対して、最終の728億円の案について、改めて、地権者の意向を調査させる必要があると思うがどうか、答弁を求めます。

 そのため、今年1月17日、都市計画法16条の地区計画原案の住民説明会が行われました。しかし、いま準備されているのは、このエリアの「地区計画」「高度利用地区」「市街地再開発」「都市施設」の4つの都市計画決定を行われなければならないのに、「地区計画原案」のみの素案が縦覧されただけした。なぜ、「高度利用地区」「市街地再開発」「都市施設」の説明会がないのか、市街地再開発や都市施設の説明となれば、立石駅利用者や区役所を利用するすべての区民が対象になるので、説明は地権者に限ると意図的な制限を行うことは不当なものです。
 しかも、都市計画法16条は「公聴会」の開催についても記述されています。また、同法に基づく都市計画運用指針によれば、原則的に開催されるべく公聴会の開催されていません。そもそも、説明会とは、準備組合と行政の側が地権者・住民に説明するものであり、公聴会とは、準備組合や行政の側が、地権者・住民の意見を聞くべき機会です。
 地権者だけではなく区民も対象に十分な周知期間を設けて、地区計画原案、市街地再開発の公聴会をそれぞれ実施すべきと思うがどうか。
 そして、重要な手続きを取らずに、都市計画法17条にもとずく地区計画原案の都市計画決定は絶対にやってはなりません。

 現在、四つ木・青砥駅間連続立体交差化事業の工事が平成27年度(平成28年3月)から始まりました。工事を進めるために、駅舎部分は買収、工事に必要な部分は、借地権を設定して当該土地を土地収用できる手続きが進められ、昨年、8月に住民からの申し立てによって公聴会が開催されました。
 現在、起業者である東京都が土地収用法にもとづく、収用手続きを可能にするための申請を国土交通省に提出し、審理中であります。そうなれば、平成34年度末に連続立体交差化事業は必ず完成させることになるでしょう。
 これまで、再開発事業によって、鉄道予定地と北側の立体化にかかわる道路が設置されることになりますが、全部収用される地権者は、生活再建のため別の地域で生活再建が保障されなければならないのは言うまでもありません。
 一方、一部収用を余儀なくされる地権者は、収用されなかった土地で生活再建しなければなりません。
 しかし、今、区が前のめりになっている再開発のための都市計画決定は、その区域内の建物の建設に様々な制限をかけることになります。
 連続立体交差化事業によって「公共の福祉」というもとで自らの権利を行政によって奪われ、残地で生活再建しようとしたら、その残地が再開発の都市計画決定によって生活再建が阻まれる、こんな不条理は絶対にあってはなりません。
 地権者の犠牲の上に、強権的な都市計画決定は、まさに、行政としての責任放棄、最悪の選択に他ならないと思うが区長の認識を問うものであります。