2018年第一回定例会代表質問 質問者 三小田准一

開催日:平成30年2月26日 

 日本共産党区議団を代表して代表質問を行います。
 16日の区長あいさつでは、「個人消費が持ち直し、景気は緩やかに回復している」「各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続く」と述べられました。
 安倍政権の経済政策の目玉である「アベノミクス」で大企業は史上最大の利益を上げ、内部留保は400兆円を超え、一握りの超富裕層の資産は3倍になりました。その点では政策の効果があったと言えます。
 一方、労働者の実質賃金はどうか。安倍政権の5年間で年額16万円の減少、家計の消費支出は消費税率を8%にした後、ほとんどの月で前年比マイナスです。所得や消費の低迷は明白です。 
 1人親家庭の貧困率も未だ5割を超え、「貧困ライン」は、20年前と比較して27万円も下落しました。
 「貧困ライン」というのは、所得の順に全国民を並べたとき、真ん中にくる人の額を「中央値」とし、その2分の1が「貧困ライン」です。この「貧困ライン」に満たない所得の人の割合を相対的貧困率と言います。
 国民の所得が下がると「中央値」が下がり、それに連動して「貧困ライン」も下がることになります。
 貧困ラインが下がるということは、相対的貧困率が下がり、あたかも貧困が改善したかのように見えますが、実際には、安倍政権の各種政策によって格差と貧困がますます拡大し、国民全体が貧困化しているというのが実態です。
 「個人消費が持ち直し、景気は緩やかに回復している」という経済認識では、区民の生活実態にあった予算編成はできません。
 区長は、貧困の実態について、どう認識しているのか、伺います。

 来年度予算案とともに提出された第4次補正予算案は、総額101億6千万円となっていますが、ほとんどが基金への積み増しとなっています。
 その結果、今年度末の基金積立残高は、1,147億円にもなる見込みです。
 こうした基金の増加に対して、総務大臣は税源の偏在を是正する措置の必要性に言及しているのです。
 確かに法人住民税の国有化、地方消費税交付金の見直しなどは、地方分権を無視するものとして放置できません。今月16日に区長会として、国の税源偏在措置に断固反対する緊急共同声明を発表していますが、議会としても反対の意思を明確にすることが必要だと考えます。
 しかし、地方財源について国の攻撃があるにせよ、区民の暮らしに寄り添った補正予算、来年度予算にしなければなりません。
 来年度予算案では、国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料の値上げ案が示されていますが、本当に区民の生活実態を知っているのか、大変疑問を持ちます。
 貧困が拡大するなか、保険料の値上げなどで区民負担を増やすのではなく、暮らしを応援する予算になるよう抜本的な転換が必要です。

 まず3つの保険料について伺います。
 国民健康保険は来年度から都道府県化となりますが、国保加入者の8割近くが自営業、年金生活、非正規労働など低所得者でありながら、高い保険料になっているという構造的欠陥を正すものではありません。
 逆に、一般会計の法定外繰り入れを解消し、高い保険料を区民に押し付けるものです。
 法定外繰り入れをやめれば、保険料は今年度の1.3倍ほどになることが試算されており、23区区長会では、来年度は、激変緩和として東京都への納付金の6%、本区では9億円ほどになりますが、一般会計からの繰り入れを行うことが確認されています。しかし、これも毎年1%ずつ減額し、7年目にはゼロとなります。
 来年度の基準保険料は3,547円の値上げ、これに介護分が加わることになります。
 23区は、これまで同様、統一保険料方式でいくとのことですが、「各区独自に対応することも可」と16日の区長会総会で確認がされました。その結果、すでに千代田区は値下げ案、江戸川区は値上げ案を出しています。
 これまで統一保険料だから足並みを乱すわけにはいかない、と繰り返してきましたが、今ほど身近な区政の出番はないと言えます。
 実際、保険料率を決定し、保険料を賦課、徴収するのは区であり、保険料をあげるか、下げるかを最終的に判断するのは区自身です。
 都道府県化によって、都の保険料率では値上げになる、納付金は保険料で賄わなければならない、法定外繰り入れは解消しなければならない、などと責任転嫁することはできません。
 地方自治体の最大の使命は、住民福祉の向上であり、区民の命と健康を守る役割があります。
 財源が十分あることは基金積立金をみればはっきりしています。国民健康保険料の値下げのために以下のことを求めるものです。
 第1に、国や都に対し、さらなる財政支援を求めること。第2に、一般会計からの繰入れ額を増額すること。第3に、1世帯年額1万円の現金給付によって保険料の実質軽減につなげること。第4に、収入のない子どもから均等割り保険料の徴収はやめること。以上、区長の答弁を求めます。 

 介護保険料は、基準額で420円の値上げ、月額6,400円が示されています。
 パブリックコメントには、「年金の受取額はほとんど変わらないのに、介護保険料は改定のたびに値上げ、それだけでなく国保料や区民税・都民税も上がっている、今後ますます不安である」「介護保険料がこれ以上高くなるとしたら、もう暮らしていけない」と深刻な意見が寄せられています。
 これに対して区は、「値上げはやむを得ない」と回答していますが、財源は十分あるのになぜやむを得ないのか、まったく理解できません。
 区は、介護保険準備基金約18億円を取り崩したと言っていますが、もともと保険料であり、余った保険料を還元するのは当然です。
 あまりにも高すぎる保険料のため払えず滞納し、利用料の全額実費負担、あるいは3割負担になっている高齢者もいます。
 今、区がやるべきことは独自の保険料減免を実施することです。
 一般財源での保険料減免は、国が「適当でない」と言っている、と逃げの答弁をいつもしますが、実際には、一般財源を活用しての減免を実施している自治体はあります。学校給食費も食材は実費負担との法律があっても、政策判断で一部無償化に踏み出しているではありませんか。
 介護保険料の独自の減免制度を実施するかどうかは、区民の福祉向上に対するやる気が問われる問題です。区長の答弁を求めます。

 後期高齢者医療保険料は、先月31日の都広域連合議会で平均保険料が年額97,127円となり1,635円の値上げが決まりました。
 都広域連合の4項目の特別対策と所得割の独自軽減は継続しますが、国の所得割2割軽減の廃止、元被扶養者の均等割り7割軽減を5割軽減に引き下げる改悪が実施されるため、均等割りで900円増、所得割は―0.27%となります。
 その結果、年金収入217万円以上の高齢者は保険料が下がりますが、それ以下の7割近い高齢者の保険料は値上げとなり、特に法定減免の対象にならない低所得者ほど負担が重くなってしまいます。
 財政安定化基金の残高211億円の一部を活用すれば値下げは可能でしたが、都広域連合が実施しないというのであれば、区が独自に対策を講じ保険料の値下げを行うべきです。区長の答弁を求めます。

 次に、生活保護の問題について伺います。
 政府は、10月から生活扶助基準の最大5%の引き下げを決めていますが、その理由として「生活保護を利用していない低所得世帯の生活水準が下がったからそれに合わせる」としています。
 政府の言う低所得世帯は、全世帯の収入を10段階に分けて、一番低い区分の世帯、第一・十分位区分を指しています。この第一・十分位区分には、派遣労働者やパート労働者など非正規労働で、最低賃金すれすれの収入で暮らす不安定労働者など、生活保護制度を利用できる水準の人たちが数多く存在しています。
 生活苦を強いられている層と比較すること自体問題ですが、低所得者の生活水準が下がったのであれば、生活向上のための支援を強めることこそ必要です。そうならないのは、貧困に対する認識、経済状況に対する認識があまりにも生活実態とかけ離れているからに他なりません。
 今月1日、NHKクローズアップ現代で「思いがけない退去通知、あなたも住宅を追われる」というタイトルの特集があり、区内で生活保護を利用している高齢者の姿を映し出していました。
 この方は、食費をギリギリまで切り詰め、一円玉を毎日コツコツ貯めているといいます。それだけでも苦しい生活実態がわかります。さらに現在、立ち退きを迫られ途方に暮れていました。「すぐ出ろなんて言われたら、本当に行くところがない。知人が『ブルーシートくださいと言えば、いくらでも貸してくれる』というけど、そこまでは。長生きしたのが悪かったかなと、つくづく思っちゃう」と語っていました。
 住宅の確保は、生存権を保障する上で欠かせませんが、区が十分対応できていないことも番組で浮き彫りなっていました。
 生活保護利用者の生活は、本当に深刻だという一例です。

 今回の引き下げが実施されれば、生活保護利用者の67%で支給が減り、子育て世帯では4割が減額、1人親世帯の母子加算の2割カット、児童手当にあたる児童養育加算も一部減額されます。
 生活保護費は、5年前に最大10%削減され、続いて冬季加算、住宅扶助が削減されました。
 現在、生活保護基準引き下げ違憲訴訟には、1月末現在で29都道府県、965人の原告による裁判が闘われています。その結果を待たずして、生活扶助費を削減しようとすることはとんでもありません。
 生活保護は、憲法25条に明記された国民の生存権を保障する、最後のセーフティーネットです。その削減は、住民税、保育料、介護保険料、就学援助、最低賃金など、国民全体の暮らしに影響を与え、特に低所得世帯の生活悪化に連動し、「貧困の悪循環」をもたらすことになってしまいます。
 暮らしを守るためにも、生活扶助基準の引き下げにきっぱり反対すべきと思いますが、区長の答弁を求めます。

 5年前の削減の時には、区は、就学援助に影響がでないように支給基準などを改善しましたが、それでも100%救済には至りませんでした。
 今回の5%削減による影響について、来年度予算案では、どう対応していくのか、その考え方は反映されていません。
 厚生労働省は、先月下旬に生活保護費の削減を実施すれば、低所得者向けの国の47制度で影響がでることを明らかにしています。
 ただちに調査をし、どういう制度にどのような影響がでるのかシミレーションも行い、制度改正などで影響がでないよう予算に反映すべきと思いますが、区長の答弁を求めます。
 区は、生活保護を補う法外援護事業、具体的には、入浴券、中学卒業者の自立支援、修学旅行の支度金、出産祝い品、夏冬見舞金など実施していましたが、ことごとく廃止してきました。現在、都制度しかありません。
 23区の中では入浴券を継続している区もあり、来年度予算の中で拡大を検討している区もあると聞き及んでいます。
 国の制度改悪に対して、生活保護利用者の暮らしを守るためにも、区独自の法外援護事業の再構築を行うべきと思いますが、区長の答弁を求めます。

 次に、子育て支援についてです。
 区長は、あいさつの中で「子育て支援の充実を区政の最重要課題に位置付ける」と述べられましたが、これは歓迎できるものです。子どもの施設の充実を含め、「最重要課題」にふさわしく、大胆な予算編成、特に、経済的負担の軽減を盛り込むことを求めるものです。
 たとえば、文京区では、高校進学前に経済的困難を抱える中学3年生に私立10万円、公立6万円の返済なしの入学支度金を創設するとのことです。滋賀県米原市では、大学生に対する月額3万円の給付型奨学金制度の創設、神奈川県相模原市では、「子どもの貧困が世代を超えて連鎖することがないよう」として高校生向けの年額10万円の給付型奨学金制度を創設し、来年度入学する生徒から適用するとしています。
 本区においても高校生向けの給付型奨学金制度を創設してはどうでしょうか。
 また学校給食費の完全無償化や18歳までの医療費無料化の実現に踏み出す予算にすべきです。
 就学援助の新入学準備金の支給時期、支給額の改善は評価できますが、支給額の増額や小学校の支給時期を来年度実施にしていることは問題です。補正予算で対応し、今年の3月から直ちに実施すべきです。それぞれ区長の答弁を求めます。

 次に、基金のあり方について伺います。
 本区の基金積立金総額は、23区中6位、区民1人当たりでは8位と上位の位置となっています。特別区債残高は、2015年度と16年度を比較すると57億円ほど減りました。
 家計にたとえれば貯金が増え、借金が減ることは大変良いことですが、自治体の場合、やるべきことをやってきたのか、やっているのか、が問われます。
 本区の老人福祉費は、23区中17位です。23区の行政サービスに格差がでな
 いよう税収が少ない区には多く、税収が多い区には少なく財源を配分する財政調整交付金は、本区では、23区の中で4番目に多く、それだけ独自財源が少ない、いわば低所得層が多いということになります。
 そうであるのに基金積立金は23区のトップクラスに、老人福祉費は本当に貧弱です。
 多くの区民が、高齢化に伴う将来不安を抱えています。子どもから高齢者まで安心して暮らしていくためにも、税金の使い方を改めていくことが強く求められていることを指摘しなければなりません。

 来年度末の基金残高見込みを見ると、総合庁舎整備基金は、124億円となっており、200億円まで積み増しをする計画があります。
 まちづくりのための基金は、今年度、基金を取り崩した分を積み増しするとして30億円を超える積立となっています。
 一方、学校建替えについては、財調措置される40億円ほどの金額を積むルールを一方的に反故にして当初予算に積立てをしなくなったのは問題です。建替えのみならず改修・長寿命化まで考えるなら、来年度当初予算で40億円以上の基金積立があってもいいはずですが、わずか3億円で、いくら積立てていくのかの計画もありません。公共施設の整備基金も同様です。
 区役所の建て替えには、200億円まで積立てる、まちづくりは取り崩した分を積み増す、しかし学校や地域の公共施設は、そういう考え方がありません。
 区役所本館より古いのに改築・改修の対象に未だなっていない学校もありますが、区民にとって身近な学校こそ、安心・安全な施設にするための計画を、資金とともに明確にすべきです。答弁を求めます。

 さて、総合庁舎の建替えを推進するのか、それとも立ち止まって見直すのか、これは区政のあり方の焦点となっています。
 総合庁舎を含め、公共施設は区民の財産です。大切に長く使う、これを基本にすべきです。
 ところが、総合庁舎だけは特別扱いで、地域の公共施設は廃止・縮小、特に子ども達の大切な施設については、その姿勢が露骨に現れています。
 たとえば、先月14日に新小岩北地域複合施設の説明会が行われ、参加者の半数を超える方が児童会館の存続を求めましたが、区は、「専用のスペースは考えていない」と聞く耳を持たない態度に終始しました。
 鎌倉公園プールについて、区長は、選挙前の区民と区長の意見交換会で「結論が出ているわけではありませんので、皆さんのご意見をお聞きしながら進める」と回答しましたが、選挙後の「検討会」にはプール廃止の改修案がだされています。

 公共施設のあり方は、区民参加で検討していかなければなりません。総合庁舎についても同様です。
 東日本大震災の教訓からも、総合庁舎は、一極集中がいいのか、それとも身近な所で区民サービスが受けられる支所型がいいのか、これは大事な視点であり、区政のあり方の問題として、区民的な議論が必要です。
 しかし、こうした議論は一切されないどころか、立石駅北口再開発ビルへの移転・建替え先にありきになっていることが問題なのです。
 この間の3回の区長選挙でも区長はほとんど庁舎建替えについて語らず、選挙が終わったら、それを推進する立場を取り続けています。

 区長は、先の第4回定例会で区長選挙の結果について問われ、「対立候補の2倍を超える支援があり、今後とも庁舎建替えについて区の考え方を説明する」と答弁をしていました。
 しかし、対立候補の得票数は、前回の1.3倍、なぜ反対票が増えたのか。それは、区民の暮らしが本当に大変な時に、なぜ区役所の建て替えが優先なのか、この声が広がっているからに他なりません。
 区民不在で進んでいることと合わせ、莫大な税金投入になることも明らかになってきています。
 区役所の移転・建替え先としている立石駅北口再開発事業の総事業費は、当初の518億円から728億円と1.4倍になっています。これに伴って保留床を購入する区役所の移転・建替え費用が増大していくことは想定できることです。
 そして未だに移転・建替えに一体いくらかかるのか、わかりません。
 再開発事業による保留床の価格は、安定しておらず、結果として際限のない税金投入につながり、区民の暮らしを直撃することになってしまいます。だから反対票が増えてきているのです。
 しかも立石駅北口再開発事業は、まだまだ地権者の合意が得られず、本組合設立の展望も未だなく、事業そのものは進んでいません。それでも強引に進めようとすることは、地権者の財産や権利を一方的に侵害することになり、多くの区民の理解は得られません。
 再開発事業による保留床の購入という方式での区役所の移転・建替えはきっぱり中止すべきです。区長の答弁を求めます。

 以上で質問を終わりますが、答弁いかんによっては再質問することを表明いたします。ご清聴ありがとうございました。