2019年第一回定例会一般質問 質問者 おりかさ明実

開催日:平成31年2月27日 

 日本共産党葛飾区議会議員団を代表して区政一般質問を行います。

 はじめに、公共交通網整備方針について伺います。
 まず、バス路線についてです。
 今年度策定される公共交通網整備方針(素案)の2章、区内の交通に関する現状では、「区内の路線バスは、現在、6社のバス事業者により、約60路線が運行されており、バス路線網はおおむね充足されつつあります」としています。そして、新たな水準により「評価地域」を指定し、調査を行いましたが、「『評価地域』の内外で路線バスの利用頻度の差はない」と結論づけています。
 この方針には、すべての区民が生活を営むために等しく移動する権利を保障するという視点がありません。だからこうした結論が出てくるのではないでしょうか。
 まず、「バス路線網はおおむね充足」という認識が違っているといわなければなりません。
 私たちが行った区民アンケートには、公共交通に対してたくさんの要望が寄せられています。その一部を紹介します。
 「新しい路線ができましたが、本数が少なすぎます。」
 「長い距離を歩いてバス停に行かなければならず、大変です。」
 「早朝、深夜のバスの運行をしてください。朝5時台、深夜23時台後半。」
 「区内を回る小型の安いバスがあったら便利と思います。」
 「昨年から綾瀬・亀有間の本数が減ってしまい、非常に困っています。小さい子どもがいて雨の日に歩かせることが難しく、どうしても出かけなければならない用事があるときに困ります。せめてもとに戻してください。」など、その他にも具体的なたくさんの要望が寄せられています。
 1998年の「葛飾区交通アクセス改善調査報告書」では設定したサービス水準に対し、満たされていない地域を「交通不便地域」という明確な表現を使ってランク付けし、改善すべき地域を指定しました。しかし今回は前回よりシビアな新しい基準を設けたにもかかわらず、「評価地域」をというあいまいでわかりにくい表現を使っています。そして結果も「『評価地域』の内外で路線バスの利用頻度の差はない」としたのです。
 前回の調査で、「交通不便地域」のランク1であった小菅1丁目地域では、区が補助をして、「地域乗り合いタクシーさくら」が運行されるようになりました。同じくランク1の南水元1、2丁目にはアイリスループが走るようになり、一定の改善が図られました。
 しかし、ランク2とされた地域の改善はいまだ行われていません。われわれがおこなった区民アンケートには、「高砂団地に住んでいでます。高砂、鎌倉、細田、どこのバス停も遠いので不便です。」という声が寄せられています。
 まず、方針の基礎となるアンケートのサンプル数が少なすぎます。私たちの行った区民アンケートは、区内全域で14万世帯に配布しましたが、区が実施したアンケートは、区全域で1,527世帯、「評価地域」では281世帯にしかすぎません。
 方針の基礎となるアンケートはサンプル数が少なすぎていて、正しい結果が導き出せていのではないのではないでしょうか。あらためて必要なサンプル数を確保するためにアンケートをやり直すべきと思うがどうか。
 また、「評価地域」を「交通不便地域」とし、改めて解消のための施策を打ち出す必要があると思うがどうか。

 「目指すべき公共交通網を実現するために取り組む施策」として、方針案では16の施策があげられています。この中には評価すべき新しい施策も盛り込まれています。
 我々は、ウェルピアや健康プラザ、区役所、最寄り駅などをめぐる循環バスの実現を求めてきました。来年度予算では、区内循環バス路線の創設を明記していますが、具体的にどのような路線を考えているのでしょうか、答弁を求めます。
 また「運転手確保の支援」とありますが、なぜ運転手が集まらないのか、その原因は明らかです。民間バス会社も、都バスも運転手の非正規化がすすみ、正規職員に比べて低い賃金の上、短期の契約で働かされている実態があり、この改善がなされなければ、今後も運転手不足が続くことは避けられません。
 この事実について認識した上で、「運転手確保の支援」をしなければ意味がありません。方針にあるように「ハローワークやバス事業者、タクシー事業者と協働し、体験面接会を実施」や、「面接会などの取り組みについて、広報活動」を行うことは、無駄とは言いませんが、問題の根本的な解決にはつながりません。
 運転手の労働条件の改善を行うために、賃金補助などの支援をすべきと思うがどうか。
 さらに言えば、利益優先の民間会社に公共交通をゆだねていては、将来必要なバス路線を確保するには限界があります。間接的な支援にとどまらず、区が運営に直接かかわる、コミュニティーバスの創設も検討すべきと思うがどうか。

 この方針では、公共交通網を充実するうえで、一つの重要な視点が欠けています。交通というのは、区内で完結するものではありません。区外へ出ていったり、区内へ戻ってきたりするバス路線もあり、他区や他県に出入りすることを前提として考えなければならないということです。事実、区民の多くが昼間は区外に働きに行ったり、買い物や診療に通ったりしています。
 例えば蔵前通りを走る都バスの路線ですが、平井までの路線は数多くあるのに、葛飾区や江戸川区まで延伸している路線は極端に少ないのが現状です。
 私たちの行ったアンケートでも、「浅草へ行く路線が平日減便になり、月に数回行っていた浅草に行かなくなりました」
 「亀有から南に行く交通手段が欲しいです。亀戸や新木場へ」
 このほかにも、北千住や錦糸町方面へのバスが欲しいという要望がありました。
 区内だけではなく、区外にも出入りすることを前提として公共交通網の充実を行うべきですが、そういう視点がこの方針にはありません。
 メトロセブンを展望しつつも、足立区、江戸川区とを結ぶ環七路線や総武線沿線を接続させる路線の創設で、利便性を確保するための計画を検討すべきと思うがどうか。

 小菅1丁目地域を走る「地域乗り合いタクシーさくら」にシルバーパスを使えるようにする計画が、一向に進みません。路線バスにすることを前提としているからです。他区では独自のパスを発行して高齢者の負担軽減を行っているところもあります。「さくら」にシルバーパスが適用できないのであれば、区独自のパスを発行することを考えるべきと思うがどうか。

 公共交通と関連して、橋梁のバリアフリーについて伺います。
 私は数年前、堀切橋についてのアンケートを行いました。そして地域の人たちと協力して橋の調査も行いました。
 その調査では、堀切橋のたもとの歩道は急な階段になっていて、自転車の通行も大変です。上流側の歩道には自転車が下りられるスロープさえもありません。歩行者も大変ですが、当然のことながら、車いすは通ることができません。橋のバリアフリーを考えるならエレベーターの設置が必要です。
 堀切橋にエレベーターを設置するよう東京都に要望すべきと思うがどうか。

 次に新金貨物線の旅客化に関連して伺います。
 整備方針へ向けての課題のトップが南北の路線とされ、少ないアンケートの結果ではありますが、自由書き込みのトップは163で、新金貨物線の旅客化に肯定的な意見でした。それだけ区民の関心が高いことは明らかです
 現在、金町・新小岩間のバス路線、新金01は休日だけの運行です。新金線旅客化へ向け、今後の需要を増やすためにも、現在休日のみの運行を、平日も運行するようにすべきと思うがどうか。

 次に、「葛飾区子ども・若者計画(素案)」のいくつかの事業について伺います。
 昨今、子どもについては虐待やいじめ、不登校、貧困など、若者にはニートやひきこもりなどが問題となっています。
 すでに、国の「子ども・若者育成支援法」に基づき、東京都の子ども・若者計画が策定されています。法や都の計画の中に提起されている貧困対策を総合的に推進し、教育の機会均等を図るなど、全ての子どもたちが夢と希望をもって成長できる社会を実現するために、切れ目のない支援をめざし、「葛飾区子ども・若者計画」を策定するものだと考えます。
 ところが、昨年の予算委員会で、またもや「ジニ係数」などを持ち出して、我が国の「格差と貧困は縮小している」という驚くべき区の認識が表明されました。根本的な認識がずれており、具体的に打ち出す対策にも多くの疑問を抱かざるを得ません。それどころか、計画のめざす方向からは全く逸脱しているいくつかの問題があり、改善を求めるものです。

 第一は、虐待から子どもを守ることです。
 幼児虐待の事件が相次いで報道されています。千葉県野田市の事件では、教育委員会や児童相談所の対応にも問題があったことが発覚しました。
 なぜ、こうした悲劇が繰り返されるのでしょうか。未然に防ぐためには、まず、個々の事例の問題点を掘り下げることが必要です。同時に「子どもを守る」ための社会的諸条件の改善も必要です。
 たとえば、教員の多忙化、超勤の日常化です。ブラック化とまでいわれている状況は、即刻解決しなければなりません。また、児童相談所の人手不足も深刻で、現在も人員不足のため職員を募集中だということです。さらに我が区の保育園でも、人手不足のため当初の定員を満たすことができないという事態が起きています。
 こうした現状に鑑みれば、虐待から子どもを守るためには、現存するすべての子育て支援施設を活用し、保護者が安心して働き続けられる体制をつくるとともに、子育て支援施設の機能強化こそが必要なのではありませんか、答弁を求めます。

 本区の計画の基本的な視点として、「地域全体で子ども・若者を支える」ことをあげています。ここでいう地域とは何でしょうか。町会や隣近所だけではなく、学校であり、専門の機関としての児童相談所、子ども家庭支援センター、保健所、医療機関でもあります。さらに、子どもたちが過ごす、保育園であり、学童保育クラブであり、児童館でもあります。それなのになぜ、児童館だけは全廃なのでしょうか。
 子どもの変化への気づきや支援は、身近な施設が大きな役割を果たしています。学校には行けないが、児童館や図書館で過ごしている子どもたちもいます。児童館を廃止することは、そういう子どもたちの居場所を奪い、支援の機会を放棄することになります。
 「子育て支援施設の整備方針」で全児童館の廃止を打ち出しました。しかしその後、児童相談所の設置やネウボラ事業に取り組むことになり、すべての児童館を廃止すると不具合が 生じることが明らかになって、「子育て支援拠点施設」を設置すると改めました。
 しかし、「子育て支援拠点施設」には、児童館独自の条例でも設置を求めている図工室や音楽室などはなく、館の都合のよい日だけ使用できるというもので、その運用も施設によってばらばらです。「子育て支援拠点施設」における、児童館機能は大幅に後退し、児童館の代用にならないと思うが、答弁を求めます。
 区内で7カ所に限り子育て支援拠点施設を整備するとしていますが、すべての子どもが使うことはできません。区内7カ所になると、範囲は中学校区の4倍の広さとなり、小学校低学年の子どもが遊びに行ける距離ではありません。
 「子育て支援拠点施設」設置は撤回すべきです。そして児童館全廃計画を直ちに中止し、子ども・若者計画に児童館の役割をきちんと位置付けるべきと思うがどうか。

 第二は、学童保育クラブについてです。
 いくつもの学童保育クラブは超過密になっており、待機児もあふれています。しかし、区立学童保育クラブは全廃の方針であり、増設計画がありません。
 昨年、学童保育クラブの所管を教育委員会に移すという組織改正がおこなわれました。子育て支援課所管の時は、十分ではありませんが計画をたて、毎年増設に取り組んできましたが、教育委員会に所管が移るやいなや、増設を投げ捨ててしまいました。
 後期実施計画には1クラブの増とありますが、これは渋江児童館内の公立学童保育クラブを廃止し、渋江小学校内に私立学童保育クラブを設置するというもので。増設ではありません。
 学童保育クラブは、保育に欠ける児童を親に代わって保育するための施設です。だからこそ、国も定員40名が適正規模としているわけです。ところが本区では、この適正規模が確保できているクラブは、88施設中19施設であり、ほとんど基準が守られていません。なかには三桁の児童を保育している施設もあります。
 こうした超過密という状況なのに、大規模マンションの建設計画がある地域でも増設計画がないのは、重大な責任放棄といわなければなりません。
 学童保育クラブの増設計画を持つべきと思うがどうか。
 また、学童保育クラブ事業は区長部局に戻すべきと思うがどうか。

 第三は、十分な議論も反省もなく「いじめ防止対策推進条例」を策定しようとしている問題です。
 2014年に、区内中学校で、いじめによって生徒が自死するという重大な事件がありました。しかし当初、区も教育委員会もいじめを認めず、2018年6月まで「いじめはなかった」と主張し続けてきました。2016年には第三者委員会まで立ち上げ調査しましたが、それでも区長も教育長も「いじめはなかった」と言い張り記者会見を行いました。
 しかし、その記者会見の後に多くの批判が殺到し、耐えかねたのでしょうか、一転して「いじめがあった」と主張を変えたうえで、あらためて記者会見を行い、初めてお詫びをしたのです。
 いじめがあったことを認めたのは当然の帰結だと思いますが、区長と教育長という2人のリーダーが間違った態度表明を4年間取り続けてきたという、重い十字架を背負っているということを自覚していただきたいと思います。そのうえで、教訓を今後に生かすことが求められていると思います。
 しかし、その後の対策に教訓が生かされているとはとても言えません。
 今回提案されている「いじめ防止対策推進条例」は、第4条で「児童等はいかなる理由があってもいじめを行ってはならない」という条項を盛り込んでいますが、これは全国でこうした条例制定の際、最大の焦点となっている点です。
 大人が、どれだけ声を大にして「いじめはいけない」と叫んでもいじめはなくなりません。いじめが発生することは避けられないが、早期発見し、解決のために心血を注ぐ過程こそが最も大切であるとされています。
 4条の規定は、大人による上から目線の押付け以外の何物でもなく、いじめに対応するためにはかえって有害です。
 わが党は、この条項を削除することを強く求めるものです。答弁を求めます。
 また、なぜ今、それほど急いで条例を策定しなければならないのでしょうか。
 先に申し上げた事件は、部活動の場に指導者がいないときに発生しました。指導者がいれば、悲しい結果が防げた可能性は大きいと思います。こうしたことを防ぐためには、指導教員の確保、指導時間の適正化などが必要です。
 ところが、教員の超勤の実態すらいまだつかまれておらず、部活動の指導教員の勤務の適正化も先送りされています。
 滋賀県大津市のいじめ自殺事件の後、いじめ行動計画策定のメンバーでもあり、「いじめを生む教室」などの著作者である評論家で、NPO法人「ストップいじめナビ」代表の荻原チキ氏は、「いじめのホットスポットは我が国の場合教室だ」といい、「日本の教室は考えられないほど不自由な空間である」と指摘しています。そして、いじめをなくす社会変革はと問われ、「現場にカネ」と言い切っています。つまり人を配置するために予算を投入することだと。
 子どもたちに上から目線で条例をつくるより、もっと緊急にやるべき課題があります。
 本定例会でのこの条例の議決を急ぐのではなく、改めて、区民的な議論を大いに進めるとともに、専門家を招いた講演会やシンポジウムも重ね、慎重に議論すべきと思うがどうか。

 次に、若者対策です。
 新規事業として相談窓口の設置とありますが、これ以外の新たな施策の展開はなく、実施している事業をただ羅列した感が否めません。
 政府は、高等教育に対する新たな支援策として、給付奨学金制度や学費の軽減策の実施を示しました。子ども・若者対策として今必要なのは、こうした施策の充実・強化です。
 これまでも主張してきましたが、区独自の給付奨学金制度や学費の軽減策を実施すべきと思うがどうか。
 また、医療費の支援も切れ目のないものにしなくてはなりません。
 首都大学東京の阿部彩教授の調査では、医療費無料化制度となっている15歳までの受診と比べれば、三割負担となる16歳以上は医療機関への受診が大幅に減少している現実があり、医療費の無料化制度充実の必要性を指摘しています。医療費助成制度を拡大し、18歳まで無料とすべきと思うがどうか。
 さらに、繰り返し要求してきたことですが、働きたいのにその能力を生かせずにいる若者がたくさんいます。若者サポートステーションの設置こそ必要です。現実に区内の若者が他区の施設を利用している実態もこの間紹介してきました。
 区内に若者サポートステーションを設置すべきと思うがどうか。

 次に、水害対策について伺います。
 まず、新小岩公園の高台化です。区は、2015年12月25日付「広報かつしか」でこの事業を全区民に発表し、推進してきました。この事業は、水害対策として高台化をはかろうとする自治体と、大量の残土を発生させる事業者を国がマッチングさせ、双方がコストを削減でき、区の持ち出しはないというものでした。
 当時我々が質したところ、区の理事者は、新小岩周辺の堤防は、200年に一度という国の想定では切れないと答弁していましたが、仮に決壊したと想定しても、新小岩地域では50pしか浸水しません。
 その新小岩公園に、6メートルもの高台化が何故必要なのかと我々は告発し、地域住民からも、「10年間も公園が使用できなくなる」、「6メートルの高台化などはいらない」、「リニアの産廃の捨て場にするな」と、反対の声があがりました。その上、区の募集に事業者が現れず、結局この事業は中止となりました。2月25日の「広報かつしか」で、小さく目立てないように事業の中止に触れていますが、発表は1面トップで取り上げたのですから、重点事業として推進してきた事業を、後期実施計画の重点事業から外し見直すというなら、広報も使って区民にきちんと説明する必要があると思うがどうか、答弁を求めます。

 次に、東京東部低平地帯に位置する江東5区は、昨年8月「江東5区大規模水害ハザードマップ」及び「江東5区大規模水害広域避難計画」を策定しました。1000年に一度という想定のもとで、長いところでは2週間以上の浸水時間が想定されており、5区全体の32%が浸水し、このエリアに住む人口は、合わせて100万人に上るというものでした。
 そして「自主的広域避難情報が発表されたら、すぐに江東5区以外の安全な場所へ避難を開始してください」と呼びかけています。親戚の家や友人宅、ホテルなどへの避難が前提とされていますが、そうかんたんに見つかるものでしょうか。また、本区の場合、茨城県への避難が示されていますが、台風の進路になる可能性のある方向に移動することは、二次被害をもたらすリスクがあります。
 また、避難計画では「自主的広域避難をする住民は、自ら情報を収集し、判断し、各自が確保した親戚、知人宅や宿泊施設等に早めに避難する」としていますが、これでは行政の責任放棄といわれても仕方ありませんか、答弁を求めます。

 私は、これまで営々として続けてきた治水対策は一体何だったのかと、改めて問いたいと思います。この想定をそのまま追認するということは、本区が整備してきた高台も水没し、破壊しないとされるスーパー堤防をも越水することになります。
 どうしたら水害の被害を減らすことができるのかといえば、まず、堤防が決壊しないように補強することが第一であり、科学的な知見に基づいて対策を検討することが行政の役割と思いますが、答弁を求めます。

 世界各地の水とのたたかいは、人類の歴史そのものだといっても過言ではありません。
 優れた経験としてあげられるのは、オランダの水防対策です。国土の1/4が海抜ゼロメートル以下で、最も低いところは海抜マイナス7mにもなる国土をもつオランダも、水とのたたかいの歴史を持っています。このオランダで最も知られた治水構造物建設は、世界の脅威と呼ばれる「デルタ計画」です。これは1953年のオランダの水害の教訓を契機につくられたものであり、大災害の発生は、「4000年に一度程度の確立に抑えられている」と紹介されています。
 独立行政法人理化学研究所の戎崎(えびすざき)主任研究員も、オランダの水害根絶の教訓は、科学への信頼が計画達成を導いたと評価しています。
 こうした科学的知見で問題の解明、解決にアプローチするのではなく、いま本区がやろうとしていることは何でしょう。30ページにもわたる「葛飾水害ハザードマップ」を、区民の税金約4000万円もかけて全戸配布するというのですが、自治体としての水害対策ととても言えるものではありません。危機感だけをあおり、対策は自分で判断して遠くへ避難せよといっているのです。これでいいのでしょうか。
 元国交省近畿地方整備局河川部長の宮本博司氏は、「想定外の洪水でも住民の命を守るというときの住民とは、いま生きている人の命です。いま生きている人たちの命を守ることをやれば、結果的に、100年後、200年後の人に対しても役立つ」としています。
 昨年7月の西日本豪雨の際の岡山県倉敷市真備町での水害による大惨事は、その一年前に護岸整備をする計画を先延ばしにしていた矢先の出来事でした。2015年の茨城県常総市での水害も、堤防の決壊によって多くの犠牲者が生まれたのです。
 「堤防が決壊せず、越水だけなら家は浸水するが、逃げる時間もあり死傷者がでることはほとんどない」とも、宮本氏は明言しています。
 いままでも、堤防の決壊を防ぐための護岸工事が行われてきましたし、危険とされている堀切地区での堤防改良工事も予定されています。
 いま求められているのは、30ページにもわたる「葛飾水害ハザードマップ」の全戸配布ではなく、前述した宮本氏の指摘の通り、決壊を防ぐ護岸工事、越水の危険のある綾瀬川・中川流域の強化対策など、やるべき対策を一つひとつ着実にすすめていくことこそ、行政に求められる責務ではないでしょうか。答弁を求めます。

 答弁いかんによっては再質問することを表明して、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。