2020年第一回定例会代表質問 質問者 三小田准一

開催日:令和2年 2月26日 

 日本共産党区議団を代表して代表質問を行います。
 新型コロナウイルス対策について、政府が基本方針を発表しましたが、患者や国民、医療機関にはさまざまな要請をする一方で、そのために必要となる資金面での具体化はありません。特に軽症者に対して自宅待機を過度に強調しすぎると重症化を見逃す危険があります。
 不安を抱えている人がきちんと相談ができるような体制、感染者の広がりや重症者の対応に必要な体制をとるためにも、財政的な支援の抜本的な強化を政府に強く求めて、質問に入ります。

 まず区長の経済認識についてです。
 内閣府が17日に発表した10〜12月期のGDPは、年率換算6.3%減と大幅に落ち込み、景気動向指数もリーマンショック以来の長期悪化を示し、総務省の家計調査では1世帯当たりの消費支出が31・9万円下落しました。スーパーマーケットの倒産、中小企業全体の「休廃業」も7年ぶりに増加に転じました。
 わが党は、お花茶屋商店街の調査を行いましたが、「8%になった時から苦しく、10%になったことで閉店を決めた」など、増税から1か月後の11月末に3店舗が閉店を決めていました。
 まさに安倍政権の大失政、消費税10%への増税で新たな大不況が始まっています。
 区長は、来年度予算案概要で、「経済は緩やかな回復が期待される」としていますが、どの指標を見れば、そのような認識になるのでしょうか。
 消費税増税によって区民生活、営業はどうなっていると認識しているのか、区長の答弁を求めます。

 間違った経済認識から、第4次補正予算案では、区民合意のない区役所建替えのための基金をはじめ91億円もの基金への積み増しをおこなう一方で、来年度は、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の値上げを区民に押し付けるだけでなく、2年前の税制改正による社会保障事業への影響への対策もありません。
 今後、金町駅周辺、立石駅周辺、新小岩駅周辺の開発事業には、惜しみなく税金投入をするだけでなく、金町駅南口での3階フロア―を突然11億円で購入すると言い出し、駅周辺の開発ビルにどんな公共サービスを提供するかを後回しにして、購入だけを先に決めるなど、異常な開発優先の姿勢が現れています。
 しかも金町でも立石でも都市計画決定後にエリアマネジメントで検討など、逆さまです。
 立石駅南口東地区の都市計画決定をしながら、事業協力者が撤退したいと準備組合に申し出る事態が生じました。この事態をどう認識していますか。また都市計画決定が時期尚早だったのではないか。区長の答弁を求めます。

 今やるべきことは暮らし応援することであり、以下の事を求めるものです。
 1、国民健康保険料は、収入のない子どもからも保険料を徴収しますが、ただちに免除すべきです。
 2、来年度は、後期高齢者医療保険料の2年に一度の改定の時期ですが、所得割を値下げし、均等割り値上げしたため、年金収入の多い人は値下げに、低年金の人は値上げになります。独自に値下げを実施すべきです。また特例軽減制度をもとに戻すには、財政安定化基金を繰り入れれば可能です。東京都広域連合に強く求めるべきです。
 3、生活保護利用者は、保護費削減と増税で最低限度の生活そのものが脅かされています。入浴券、中学卒業者の自立支援援助金、夏冬見舞金、修学旅行支度金、エアコン設置など、法外援護事業を実施すべきです。
 4、子どもの医療費無料化を18歳まで拡大すべきです。
 5、保育士不足から保育園の定員通りの受け入れができない、介護士不足のために特別養護老人ホームの開設時期が遅れてしまうという事態が本区でも起きています。保育士や介護士への人件費補助の拡大を実施すべきです。

 次に、自治体のあり方について質問します。
 新基本構想、基本計画などは、職員の英知を集め、区民とともに作り上げていくものですが、コンサルタント任せになっています。しかも、今年度当初予算では新基本計画に対する業務支援委託の予算を、議決後に新基本構想を潜り込ませるという姑息なやり方で、議会を愚弄しました。
 行政をチェックする議会の役割を否定することになりませんか。

 新小岩駅東南地区における地下機械式自転車駐輪場整備には、約6億円が必要とされています。しかし、その負担の仕方は、区と事業者が先に協定を結び、区が支払う仕組みを作っており、議決案件にならず、議会は関与できません。
 税金の使い方を区と事業者だけで決めてしまうのは、自治体のあり方として異常だと言わなければなりません。

 リリオ亀有のける絵本劇場、まちの台所、図書サービスカウンターは、株式会社トレックによる運営及び委託によって事業が進められており、その費用も協定にもとづき区が運営者に支払っています。
 ところがまちの台所は、すでに店名もメニューも代わり、別の事業者に代わっています。当初、レストランの売りの一つに葛飾産元気野菜を使ったメニューがあるとしていましたが、すでになくなっています。
 協定があっても民間事業者の都合で税金を自由に使っているいい例です。
 国保年金課の業務委託は、どんな業務が民間にできるか、できない業務は何かの調査を民間事業者が行い、調査したその事業者が業務を受託しました。結局、事業者の言うがままに業務を委託したという事になりました。
 国保年金課の業務は、区民の暮らしに直結する業務です。民間委託はなじみません。

 新小岩公園再整備に向けた検討会や意見交換会が行われていますが、はじめからコンサル丸投げでした。フィ−ドワークではコンサルが指示を出し、区職員はただ後ろを歩いていたという状況です。
 会議の流れを説明するのもコンサル、昨年の台風19号直後の会議では、区の台風19号への対応を説明したのもコンサルでした。参加者からは、「これからの新小岩公園をどうするのか、その重要な事業をコンサル任せにして、区役所とはいったい何なのか、落胆した」と語っていました。
 区長が掲げる「区民との協働」には程遠いと言わなければなりません。

 1月21日、保健福祉委員会に「ひとり親家庭の福祉資金利用者向け家計相談及び貸付金償還勧奨業務委託」の庶務報告がされました。福祉資金等の返済が滞っている利用者を訪問し、相談に応じながら償還に結び付けるというものでした。
 ひとり親家庭の貧困率は50.8%です。滞納そのものが暮らしの深刻さのSOSととらえ相談に応じることは重要です。ただ民間委託ではなく、区が親身に対応することが必要です。
 翌日、事業者の募集が区のホームページに掲載されました。
 しかし、この事業を委託するとなれば個人情報を提供しなければなりません。そこで、1月31日に、「個人情報保護委員会」に意見を聞くために区長から諮問がされました。
 個人情報保護委員会から答申を受ける前に事業者を募集していることは、委員会を形骸化するもので、当然、この日は承認されず継続となり、事業者募集は中止となりました。
 私は、個人情報保護委員会開催に先立って委員会の担当者、事業を所管する担当者から説明を受けましたが、その時に事業内容の以前の問題として、事業者募集を先に始めているのに諮問することは、順番が逆であり、ありえないと指摘をしましたが、あえて区長は諮問をしました。知っていて諮問したことは間違いありません。
 なぜこのようなことが起きるのかと言えば、民間にできるものは民間に、区長のこうした安易な姿勢が、必要な手続きさえ無視しても構わないという、自治体の変質を作っていったのではありませんか。

 そこで区長に質問します。
 1、コンサルタント依存の区政運営を見直すこと。
 2、新小岩駅東南地区における地下機械式自転車駐輪場整備は、協定を見直すこと。
 3、リリオ亀有における絵本劇場、図書サービスカウンターは、区直営で運営すること。
 4、「ひとり親家庭の福祉資金利用者向け家計相談及び貸付金償還勧奨業務」は、家計相談事業に重きを置き、ただちに区直営で実施すること。
 5、先ほど述べた、ひとり親家庭の償還勧奨業務委託について、事業者を募集していたことを知っていながら、1月31日の個人情報保護委員会に諮問したことは重大です。区長はどのように責任を感じているのか。
 以上、区長の答弁を求めます。

 次に基本構想について質問します。
 わが党は、この間開催された策定委員会を傍聴してきました。全体としては、基本構想のそもそも論がなく、個別課題に集中する傾向にありました。そのため、先月の総務委員会でだされた基本構想の構成イメージでは、いったいどんなまちをつくるのかがなく、具体的なことがズラズラと書かれてあります。これは基本計画という個別課題に議論が集中したことによるものです。
 わが党は、基本構想を検討するのであれば、憲法を生かすことや住民福祉の向上という自治体の使命を鮮明にすべきだと提案してきましたが、それも反映されていません。
 やはり基本計画を同時に策定するというやり方には無理があります。
 改めて現基本構想の基本的方向を読み返してみますと、今後も耐えられる内容になっていることがわかります。

 現に区長は、そういう答弁をしてきたではありませんか。
 平成23年第3回定例会では、「基本構想は長期的視点に立った行政運営の指針として策定されており、その内容は普遍的なものが多く、その目指すべき方向性については、現在においても大きな祖語はない」と答弁し、基本計画についても「現在の課題や今後見込まれる課題へ的確に対応する計画として策定することができる」と述べています。
 現基本構想の精神を生かし、基本計画、実施計画、さまざまな方針を作ることは可能だということです。
 それでもあえて新基本構想を作るというなら、それは新基本構想が必要なのではなく、来年の区長選挙のために利用したいという事ではありませんか。

 区長は、あいさつの最初にSDGsについて触れました。SDGsには、健康と福祉、貧困と飢餓、気候変動、ジェンダー平等、平和と公正、産業と経済など、17の目標があり、人類にとって必ず達成させなければならない目標です。
 これを基本計画の理念に位置付けるのであれば、新基本構想は必要ないのではありませんか。区長の答弁を求めます。

 次に、策定する基本計画をはじめ、いくつかの計画と取り組みについて、SDGsの目標を念頭において質問します。
 第1に、SDGsには気候変動に具体的な対策を、の目標があります。
 昨年12月に開催されたCOP25では、パリ協定の運用ルールの合意が先送りされ、世界の人々に失望を与えました。しかし、多くの若者が気候危機への対策の強化を訴えたことは大きな希望です。
 日本は、温室効果ガスの総排出量は減少していますが、それは太陽光や風力発電の増加、省エネや暖冬などが要因であり、日本政府が努力した結果とは言い難いものです。逆にいえば、努力次第で大幅削減が可能だということでもあります。
 それなのにCOP25では、小泉環境大臣は、脱石炭も約束できず、削減目標の引き上げにも言及しませんでした。こうした後ろ向きの姿勢に化石賞が贈られるという不名誉な事態が生じています。
 昨年前半にはアルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル南部大洪水が発生し、パリでは観測史上最高の42.6℃を記録しました。今年、オーストラリアでは大規模な森林火災の後、大洪水が起きました。
 日本も例外ではなく、昨年の台風15号、19号と大型台風、その後の豪雨と続きました。こうした異常気象・災害が気候変動にかかわっていることは明らかであり、気候変動被害も深刻になってきています。
 今や、気候変動ではなく気候危機とも言うべき事態が進行しています。
 「パリ協定」の目標を実現するには、2050年までに温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にする必要があり、ここ数年での取り組みが重要になっています。
 こうした中、区長が「ゼロエミッションかつしか宣言」をし、2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにする宣言をしましたが、重要なのはその中身です。
 「宣言」を実りあるものにするために、以下のことを求めます。
 1、2030年度までの本区の削減目標28%を引き上げること。
 2、政府に対して削減目標26%の大幅引き上げを求めること。
 3、石炭火力発電所の運転、開発を推進している政府に対して逆行したエネルギー政策を転換するよう声をあげること。
 4、「宣言」前に策定した地球温暖化対策実行計画も見直しが必要です。第3次環境基本計画と合わせ、「宣言」にふさわしい内容にするために、区民参加で策定し、本区で実施している地球温暖化対策事業を抜本的に拡充し、各事業を年度ごとに数値目標をもって促進すること。
 5、気候変動問題を学校教育に位置付け、未来に責任を持つ若者を育てることや、若者中心の(仮称)ゼロエミッション委員会を作り、学習会やシンポジウムの開催、企業への提言など、若者自身に「宣言」を具体化してもらってはどうか。

 第2に、ジェンダー平等社会を目指すことについてです。
 世界経済フォーラムが公表したジェンダーギャップ指数は、153の国の内、日本は121位とジェンダー平等後進国です。とくに政治、経済分野での男女格差は大きなものがあります。
 OECDの調査では、正社員の男性の賃金を100とすれば、女性は75.5%と格差があります。それを是正するには、企業の賃金実態の公開を義務付けることが必要ですが、安倍政権は経団連の意向から、これを先送りしています。
 本区の正規職員の男女比は女性が55%となっていますが、正規職員より賃金が低い会計年度任用職員においては女性比がさらに多くなることが想定され、改善が求められます。
 安倍政権の下で「LGBTには生産性がない」、「セクハラ罪という罪はない」、選択的夫婦別姓を求めた国会質問に対して「結婚しなければいい」などの暴言が繰り返されるのは、男尊女卑の戦前の思想が根底にあるからに他なりません。
 全国家庭動向調査によると「同性カップルにも何らかの法的保障が認められるべきだ」が75.1%と当然の世論となっています。
 一昨年第2回定例区議会では、パートナーシップ制度の検討を求める請願が採択されました。すでに全国では34自治体、23区では5区がパートナーシップ制度を実施しています。
 本区では、改定される人権推進指針で「性の多様性への理解を深め、性自認・性的指向を理由とする差別や偏見をなくす」ことを明記したことは評価できます。当然、上位計画である基本計画にも明記すべきです。
 「指針」における具体化の中身は不十分です。肝心な相談窓口については、東京都の窓口を紹介する、と後ろ向きです。
 人権推進指針に、多様な性に対する相談窓口、同性パートナーシップ証明書の発行、区営住宅への同性の入居、区職員や教員への研修と学校教育への位置づけ、中学校における制服の選択化など、具体化を図るべきと思うがどうか。
 第3に、産業と技術革新の基礎をつくる目標があります。
 本区は中小企業のまちです。その振興なしに発展はありません。
 これまでも提起してきた中小企業・小規模企業の悉皆調査を実施し、振興基本計画を策定し、持続可能な支援策を具体化してはどうか。
 「SDGsかつしかピンバッジ」を作成するとしていますが、SDGsの理念を基本計画に位置付けるといいながら、海外の発注はあり得ません。地産地消を拡大する方向に転換すべきです。
 区内企業に呼びかけ、文字通り葛飾製ピンバッジを区内の企業の力で作っていく努力をすべきと思うがどうか。

 地元企業の育成、仕事確保、賃金などの労働環境の向上という点では、区が発注する工事や委託なども含め公契約条例は有効です。
 実施している自治体を視察しますと、中小零細企業にとって負担になるのではないか、などの心配もあったとのことですが、実際には、実施後は、工事金額をあげていく自治体や指定管理者まで適用する自治体もあり、労働環境の向上につながっていることは間違いありません。
 区が発注する工事や委託については、働く人の賃金、生活を保障するためにも新基本計画待ちにならずに公契約条例を制定すべきです。
 以上、SDGsの目標を念頭においた区長の答弁を求めます。

 次に、水害時の広域避難について質問します。
 東部低地帯への水害対策は極めて重要です。
 全戸配布予定のハザードマップでは、1000年に一度の江東5区大規模水害が想定されています。その降雨量の前提は、荒川流域3日間で632mm、中川・綾瀬川流域2日間で596mm、利根川・江戸川流域3日間で491mmとなっています。
 気候変動のもとで絶対ないとはいえませんが、この大規模水害によって江東5区の低地帯がほとんど浸水するとされ、広域避難を促しています。
 しかし、先の台風19号は、大型台風でしたが、自主的広域避難情報の発表も広域避難勧告の発令もされませんでした。
 その理由について、昨年12月20日、江東5区長の共同コメントンとして1、広域避難の発令基準のズレ、2、公共交通の計画運休による移動手段の確保の問題、3、避難先を示すことの難しさ、が発表され、今後、国や都と連携し広域避難のあり方を議論することや各区の垂直避難など実行性のある避難の検討を進めるとしています。
 ハザードマップにも広域避難の場合の避難先の受け入れは協議中となっており、無責任としか言いようがありません。避難先の自治体の人口を超える受け入れをする可能性もあり、そうなれば人格権を保障した避難所環境を整えることは不可能です。要するに非現実的だという事です。
 それを知っていながら、広域避難を促すハザードマップを全戸配布していることに矛盾を感じませんか。区長の答弁を求めます。

 ハザードマップの説明会を4月から19カ所で開催するとしていますが、気候
 変動による大規模水害への備えを理解してもらうとともに、台風19号への対応に対する区民の不安や不満、すなわち避難所環境や要配慮者への対応など、こうした問題を解消することを最優先に位置づけるべきと思うがどうか。区長の答弁を求めます。
 私の質問は以上ですが、答弁いかんによっては再質問を行うことを表明して終わります。ご清聴ありがとうございました。