2025年第4回定例会 一般質問(質問者:片岡ちとせ)

2025年4定 片岡 地域交通政策質問原稿

日本共産党葛飾区議団の片岡ちとせです。本区の公共交通施策について質問をします。

葛飾区の選挙と時期を同じくしてアメリカ、ニューヨーク市では市長選挙が行われました。家賃の高騰や相対的貧困が深刻なニューヨーク市民の生活に直結する3つの公約、「高騰する家賃の凍結」、「市営バスの無料化」、「保育の無償化」を前面に打ち出した新人ゾーラン・マムダニ氏が若年層や労働者層から支持を集めて当選したことは、世界最先端の弱肉強食、新自由主義経済の自治体から、誰もが暮らしていける、やさしい経済へと社会変革を求める新時代の確かな躍動であると言えます。このマムダニ氏の政策で特に注目するのは「バスの無料化」です。住民の移動を「権利」とし、さらに重要な「福祉」として位置付けて保障する政策は、押し付けられてきた受益者負担の考えから、経済的セーフティネットへの転換となります。

他にアメリカ国内では、シアトル市では2022年から18歳以下の全ての子どもが無料で交通機関を利用できるようにし、今現在、シアトルの都市圏では10の交通機関が18歳以下の乗客は無料となっています。

さらに世界を見ると2013年、エストニアの首都タリンは市民に限り公営バスや路面電車、トロリーバスを無料化し、その後2018年に全土で公共交通を無料化しました。同年、フランス北部のダンケルクでも公営バスが無料化されました。ルクセンブルクは2020年に国全体の公共交通を無料化しています。これらの都市では、無料化後にバス利用者が増え、大気汚染の緩和、地域経済の活発化などが見られ、新しい価値が生まれていることは注目に値します。

さて青木区長の選挙公報は「高齢者も外出しやすく」するために、地域公共交通の充実を打ち出しました。そこで取り上げられていたのは新金線旅客化の早期実現ですが、地域公共交通の充実は区内全域で望まれ、全ての年代において重要です。地域公共交通は医療、福祉、教育、経済活動、また余暇活動へのアクセス手段として憲法13条幸福追求権、22条居住・移転および職業選択の自由、25条生存権、など、憲法上保障された基本的権利を実現するものとして高く位置付ける必要があると言えます。そこで質問します。

  • 葛飾区は区民の移動を人権の一つとして積極的に保障していく立場に立つべきと思うが、区長はどう考えるか。
  • 賃金や年金が物価上昇に追いつかない現在において、公共交通を無料化すれば、特に非正規雇用者、高齢者、単身世帯にとっては移動コストの削減となり、重要な生活支援の一部となるがどうか。
  • 新金線事業を安定的に運営するには、沿線地域に活動的な住民が居住していることや、利用頻度の高い施設があることが重要です。地域の活性化を促すために若者向けの公営住宅の整備を都市計画の中に位置付けるべきではないか。

以上、答弁を求めます。

次に葛飾区地域公共交通計画等について質問します。

現在検討を進めている「葛飾区地域公共交通計画素案(案)」では本区の地域公共交通を取り巻く課題の第一に、鉄道駅間をつなぎ、まちづくりを支える南北方向の交通ネットワークの強化が必要とし、その中で「区民の意見はきめ細かなバス路線や定時運行を重視する傾向」とあります。これは南北交通に限らず、区内全域で出される意見ではないでしょうか。

亀有、西亀有、堀切地域を運行していた日立自動車交通「レインボーかつしか」は運賃収入の減少、運転手不足などを理由に路線が休止されました。その代替としてこの秋から実証実験を開始したデマンド交通「かつライド」は、民間タクシーを使い、自宅から指定された降車場所への移動で片道500円の利用料がかかります。210円で利用できた地域のバス路線の休止は、通勤通学を目的とする定期利用者が排除され、通院や買い物といったシニア世代の利用についてもシルバーパスが使えず、大多数の年金生活者には負担が重いものです。

区内ですでに運行している小菅1丁目地域の乗合ワゴン「さくら」や、細田と新小岩を巡る「細田循環」は交通結節点に運ぶ重要なフィーダー交通です。私はこのフィーダー交通を区内移動の解決策として路線の充実を図るべきであると思います。

「葛飾区地域公共交通計画素案(案)」に掲載された区民アンケートでも、今後の公共交通施策の方向性として区民が求める第一位が「バスの運行ルートを検討し、利用できる地域を増やすこと」であり、区の施策でこれまで以上に推進すべきことの第一位は「循環バス導入などの検討」となっています。

葛飾区と人口が似ている大分市では、路線バスの一部ルートが廃止された滝尾地域において、定員9名のジャンボタクシー車両を使い、「たきおコミュニティバス」を路線バスの代替交通として運行しています。このバスの特色は他の路線バスと乗り継ぐ場合に、路線バス初乗り運賃180円を割引、もしくは免除している点にあり、バスを乗り継いで目的地まで行けるよう金銭的負担を軽くしたことで、利用者の利便性を高めていることです。

これからの地域公共交通の充実は、誰が担い手になるかが重要です。区内交通は採算が重要視される民間営利企業が担っており、利益が見込めない地域に新しい取り組みとしてボランティアが行うグリーンスローモビリティが導入されましたが、これは個人に求められる負担が多すぎます。

移動を社会的権利と捉え、同時に交通渋滞や大気汚染の緩和や地域経済の活性化等の社会的効果も考えれば目的による運賃の無料化は道理があり、無料化は営利企業よりも公営事業だからこそ行えるものです。これからの地域交通事業は公共の担い手である葛飾区が事業主体となることは社会的要請ではないでしょうか。そこで以下の質問の答弁を求め、回答いかんによって再質問を行います。

  • 「かつライド」の1日の利用者は15名程度と聞いているが、この利用者数についてどのような評価をしているのか。
  • 「かつライド」の利用料500円は休止したバス路線の代替としては極めて重い負担です。元のバス料金に準じた金額に値下げすべきではないか。
  • 「かつライド」は他の交通機関に接続できる降車ポイントを増やし利便性を高めるべきではないか。
  • 「かつライド」の利用者を堀切8丁目、西亀有1丁目から3丁目住民に限定せず、乗車ポイントからも乗れるように改善すべきではないか。
  • 東金町8丁目や高砂団地、堀切・四つ木地域など、主要交通に接続する手段がなく困っている地域が複数あるが、地域乗合ワゴン事業を拡充し、早期に交通不便地域の解消につなげるべきではないか。
  • 地域公共交通の担い手をグリスロ事業のようにボランティアに求めることは個人の負担増や持続性の観点から限界があると思うがどうか。
  • 民間事業者任せで、利用者が運賃を払う受益者負担の構造が、不採算路線の撤退という結果を招いている現状がある。交通政策基本法第9条において地方公共団体は「地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、実施する責務を有する」としています。また改正地域公共交通活性化再生法第4条では市町村が中心となって地域公共交通政策に取り組むことが示されており、その点からも区役所組織内に交通局を設け、区が事業者となってバスの乗り継ぎができる交通結束点を結ぶ無料のコミュニティバス路線を運行してはどうか。
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