
区役所移転について質問します。
10月11日、11月16日に「総合庁舎整備事業について」区議会議員協議会が行われました。
2回とも本会議場傍聴席に傍聴者が入りきれず、委員会室を急きょ提供し、審議に聞き入るという、これまでにない事態となりました。区役所の移転は、破たんした立石駅北口再開発を救済する事を目的としたものに他ならず、これに異議を唱える地権者と区民世論を反映したものと言えます。
2回の全員協議会は、「区役所の位置を定める条例」を議決するための地ならしでしたが、その根拠がことごとく失われた結果となりました。
その第一は、区役所移転に区民合意がないからです。
地方自治法第4条では区役所の位置を定める条例は、3分の2以上の同意が必要としています。なぜ3分の2なのかと言えば、区役所というのは、住民の利害に関する点が特に大きく、その決定にあたっては住民合意が熟していなければならないということを意味しているからです。
この間、そうした努力もせず、あたかも区役所移転が決まったかのように広報を使って宣伝し、説明したとは言えない会議の回数と参加人数まで引用するのは、区民を欺くものと言わなければなりません。
同じく再開発ビルに区役所を移転した豊島区では、区役所移転に特化した説明会を12地区ごとに進捗状況にあわせて各三回、都合36回の他、反対する区民団体のところにも要請があれば出かけて行って80回、計116回もの区役所移転のための説明会を行っています。
こうした事実を示しても、「今後、変更も説明会も行わない」と答弁するなど、反省がありません。
区長は、4回の区長選挙で一度も区役所移転を公約せず、区民の信を問うたことはありません。むしろ区役所も公共施設の一つといって言い訳をしていました。再開発ビルに移転するかしないかも含めたアンケートや説明会を実施すべきと思うがどうか。
第二に、再開発エリアの地権者の合意もないからです。
全協では、都市計画法でも存在しない「想定同意率」なる造語で同意が進んでいるかの印象操作の報告をしていました。しかし、未だに話し合いすらできていない地権者や借家人がいることがわかりました。
「まちづくり」は、そこに住む人々が主人公となって進めるべき課題であり、行政が都合のいいようにコントロールしてはならないものです。
再開発エリア内で登記されていない物件、登記されていてもまた貸しのまた貸し物件の数はいくつなのか。根抵当付の物件が21件と報告されましたが、その根抵当にはいくつの金融機関が存在し、不動産物件の権利変換価格を上回る根抵当がついている物件はいくつなのか、こうした事実にもとづく調査が行われると権利者の分母が膨らみます。そうなれば「想定同意率」も本当の同意率も低下するのではないか。それぞれ答弁を求めます。
ましてや借家人の20%にあたる40世帯は、移転先すら決まっていません。
六本木ヒルズも豊島区役所も最終的には権利変換同意率は100%、直近の東金町一丁目西地区も事実上100%の同意でした。全協では、1人でも多くとは言うものの「同意率は目標ではない」と強弁しています。
同意しない権利者に対し、行政代執行するつもりなのですか、答弁を求めます。
第三に、区役所が再開発ビルの一区分所有者では、「住民自治の砦」としてふさわしくないからです。
再開発ビルのなかにできた豊島区役所では、多くの区分所有者の合意が得られず、区独自の垂れ幕の設置は禁じられ、非核都市宣言の銘板の設置も管理組合での協議事項となりました。
他の区分所有者の反対があり区役所前で集会やビラまきもできないという問題も起きています。「地方自治は民主主義の学校」と言われますが、再開発ビルに区役所を移転するデメリットを想定していなかったのではありませんか。
商業用の床は、事業者が増える可能性があります。なぜなら売買は、区分所有者の当然の権利だからです。そうなれば、将来の世代に、この再開発ビルの建て替えの時に難題を押し付けることになりませんか。答弁を求めます。
第四に、際限のない税金投入になるからです。
昨年の選挙では、660億円かかる区役所移転と指摘しましたが、一年経った現在、保留床価格の上昇をはじめ、新たにバンケットホールの設置、本館の取り壊し、新館の改修工事が精査され約100億円もの費用が増えました。
物価高騰は今も続いており、権利床をえた地権者でも最終的な清算で新たな負担が予測されます。商業用の床は100%うまっているとの報告でしたが、清算で新たな負担に耐えられない場合は、別の場所で生業を再建しなければならず、床が空いてしまいます。
こうした時に区は、亀有リリオ7階の活用、金町南口の3階保留床の買い取りなどの肩代わりをしてきました。
そうならない担保はありますか。答弁を求めます。
第五に、民間事業である再開発と公共事業である区役所移転との関係を都合よく使い分けているからです。
全協では、「位置条例」の提案は、権利変換の認可申請のために区役所移転を担保するものとして、再開発と区役所移転を一体に描き、一方、再開発の補助金382億円は、区役所が移転しなくても再開発としておりる補助金だと主張し、再開発と区役所移転は関係ないように描いています。
再開発は民間事業であり、立石再開発をどう進めるかは関係住民の問題です。一方、区役所建設は公共事業であり、46万区民の問題です。したがって権利変換計画の認可と区役所移転のための位置条例は切り離して進めるべきと思うがどうか。答弁を求めます。
最後に、区役所移転より区民の暮らしを優先すべきだからです。
コロナ禍と物価高騰で区民の暮らしは大変です。その対応が求められています。区役所本館より古い学校は7校、新館より古い学校は64校です。避難所となる学校の建て替えこそ優先すべきではありませんか。
この12年間、区役所移転のために毎年、15億円もの大金を基金として積み立て、現在約200億円になっています。年間15億円もの財源があれば何ができるのか。
学校の温水プール化は、一ケ所6億円、学校改築時には屋内温水プールを子どもたちにプレゼントできるではありませんか。待機児を多く出しスシヅメ状態の学童保育クラブは、一カ所増設するのに2,500万円、国民健康保険の未就学児の保険料をゼロ円にするには4,000万円、ガン検診の無料化は3100万円です。新型コロナや物価高騰対策は待ったなしです。
税金の使い方は、区役所移転より区民の暮らしこそ最優先にすべきです。
以上の理由から、今定例会に提出している「区役所の位置を定める条例」は撤回すべきと思うがどうか。区長の答弁を求めます。