2025年第一回定例会代表質問 (質問者:片岡ちとせ)     

日本共産党葛飾区議団を代表して質問を行います。

まず、昨年日本被団協がノーベル平和賞を受賞し、確実に世界的平和への声が高まっているにも関わらず、アメリカのトランプ大統領はパレスチナ「ガザ地区」を所有すると、国際条約違反の発言をしました。パレスチナ住民の主権を奪い、力ずくで排除するイスラエルのジェノサイドとそれを後押しするトランプ大統領のきわめて暴力的な政治姿勢、そしてそれをとがめることもしない石破総理に日本共産党葛飾区議団として厳しく糾弾し、ガザの時限的停戦だけでなく、恒久的なパレスチナの開放を求めます。

さて青木区長は、来年度「予算編成に当たって」の冒頭と本会議初日の所信表明において、日本経済の現状認識について、「雇用・所得環境の改善、日本経済は緩やかな回復傾向」と表現しました。

しかし、賃上げは一部企業にとどまり、物価高が賃上げを上回り、実質賃金は低下しています。コメの価格は、2020年比で、1.7倍にも達し、備蓄米の放出をしても深刻な事態です。ガソリン価格も過去最高水準を更新し、エネルギー価格の更新が、全ての物価を引き上げています。帝国データバンクの定期調査によれば、昨年11月の調査で、すでに2025年度の値上げ品目は前年を上回り、今後の物価高騰が区民のくらし・営業を直撃し、より一層深刻になることは明らかです。

勤労世帯の「103万円の壁」は引き上げられる様子ですが、ここで指摘しなければならないのは、これにより、区民の実収入が増えるのに、区長は、区民税の減収を不安定要素としていることです。自治体のトップとして区民の収入増になる政策は、歓迎すべきであり、国の予算、法律の改定によって区が税収減にならないように国に手当てをするよう区長が要求すべきではないでしょうか、答弁を求めます。

次に、六号補正と2025年度予算についてです。

来年度予算に盛り込まれた、修学旅行等の無償化等、がん検診の無償化、補聴器購入助成の増額と対象者の拡充などは、区民の切実な願いであり、わが党もくりかえし要求し、実現したことは歓迎すべきことです。

しかし、部分的な改善が進んだ一方で、大きく深刻な問題が存在しています。それは区民の暮らしと福祉の増進のために使われるべき財源を、庁舎移転のための積立や基金の積立へ、必要以上に上積みしていることです。これは将来世代にまで禍根を残す可能性のある重大な問題です。

歳入増の要素として、特別区民税の増を上げていますが、その最大の要因は、定額減税が最大の要因です。地方消費税交付金の増も実態は、物価高騰による消費税負担増であり多くの労働者の実質賃金が上がらないもとで、区民の痛みになっています。さらに、インボイス制度が導入され、以前の非課税業者から消費税の負担を強制したからにほかなりません。

過去最大の予算編成が本当に区民生活の幸福に直結していると区長は認識しているのか、答弁を求めます。

そこで、第六号補正予算と2025年度の当初予算の歳入、歳出について、また、財政操作と、区民の切実な願いにこたえる財源について指摘します。

 2024年度六号補正予算では、財調基金等へ31億円の減額補正が計上されていますが、あえて補正で減額する必要があるのか。ましてや、四号補正、物価高騰緊急対策支援金に14億円、五号補正、非課税世帯等給付金で30億円を財調基金から支出済みとなっていますが、事業途中でもあり、総額が定まっていません。

同時に、この四号、五号補正予算の財調基金支出済み額は44億円となりますが、制度上、2024年決算が報告されるまで未確定の金額となります。ですから、財調基金の減額補正分と四号、五号補正予算の支出済み額の合計は、75億円となります。

六号補正の歳出も問題山積で、再開発事業の庁舎保留床の増額におびえてか、5億円を積み増し、また、財政管理費に約52億円を積み増しました。これらを合計すると、132億円もの財源が現にあることになります。

加えて、2025年度当初予算では、当初予算の積立額は公共施設等整備基金、教育施設を除くと約6億円、減債基金14億円、庁舎基金15億円で、必要のない基金の積立金35億円を区民要求実現の財源にできます。 

さらに、区民合意もないプール建設13億円、今こそ見直しを必要とする庁舎保留床購入計画の前提となる立石駅周辺再開発関連予算に37億円支出を削除により、都合217億円もの財源を生み出すことができます。

この財源を生かし、つぎの三つの分野で区民から切実に求められている要求の実現、改革を求めます。

第1に、くらしと営業の応援についてです。

まず、物価高騰に苦しむ区民への支援策として、新たな給付金支給を、対象を拡大して実施してはどうか。また、中小企業への物価高騰緊急対策支援金は、次年度に額を拡大して早期に実施してはどうか、答弁を求めます。

つぎに住居の確保についてです。

杉並区では、区営住宅の抽選に外れた区民に、家賃を支給する制度を来年から実施します。「住まいは人権」という視点で、家賃負担に窮する区民への支援策が必要です。そこで新たな区営住宅を建設し供給すべきではないか、また、家賃助成制度を新設し実施するなど、検討すべきと思うが、答弁を求めます。

さらに義務教育の完全な無償化についてです。

品川区は修学旅行のほか、中学校制服の無償化を表明しました。本区ではどのように考えるか答弁を求めます。

義務教育の完全無償化を加速するためには、区・区教委としてどうしていく考えか、答弁を求めます。   

そして子どもへの支援についてです。

東京都が、ゼロ才から二才児の第一子の保育料の無償化を今年9月から実施します。ならば区独自で4月から8月までを無償化できるようにしてはどうか、答弁を求めます。

 国民健康保険だけが未就学児からも保険料を徴収しています。この不公平を解消するために区独自で全額補助してはどうか。答弁を求めます。

保育料無償化の次は、学童保育クラブ使用料の無償化に向かって区として検討すべきではないでしょうか。答弁を求めます。

第2に、区がかかわる雇用の抜本的な改革です。

 日本の労働者の実質賃金は、ピーク時の1996年から年収で平均74万円も減少し、さらに非正規雇用者はこの20年で約1・4倍、620万人も増加し2124万人に達しています。低賃金で不安定な労働者を生み出してきた背景に、葛飾区という区内最大の事業者が、事業を過剰に合理化し、会計年度任用職員制度を悪用して正規雇用を減らし、非正規公務員を都合よく使ってきたことがあるのは明らかです。

ひとつめに、会計年度任用職員の問題です。

本区で働く職員約5600人のうち、会計年度任用職員は約44%の2454人で、そのうち女性がおよそ2000人です。本区の区政運営の多くを会計年度任用職員が支えており、そのほとんどが女性であると言えます。特に福祉部・子育て支援部・教育委員会で雇用される会計年度任用職員は子どもの育ちや区民の健康を支える高度で重要な業務の担い手です。安定的な事業の運営は安定的な人材の確保が欠かせません。

女性労働者への間接差別を解消し格差是正につなげるためにも、会計年度任用職員の全職種での大幅な賃上げと待遇の改善を行うべきではありませんか。また鳥取県は会計年度任用職員を正規雇用にすると話題になっています。本区でも正規雇用に転換する制度を検討していくべきではないのか、答弁を求めます。

2つ目に、公契約条例による賃金の底上げです。

葛飾区は中小企業の街だと誇りに思うならば、葛飾区公契約条例で価格や労働条件を具体的に示し、末端の労働者の暮らしを守る実効性のある条例に変えていくべきです。

令和7年1月、世田谷区は公契約条例の労働報酬の下限額を引き上げました。国土交通省定義の51職種技能労働者に該当しない労働者に対して時間額1460円以上、工事請負契約以外の契約や委託などに対しても1460円以上となるように改定を行いました。これについて公契約適正委員会が世田谷区のみならず近隣地域及び全国へ賃金引上げの効果が波及していくことも念頭においた改定であると述べています。この姿勢に学び、葛飾区でも公契約条例に賃金条項を明記すべきではないでしょうか。

福岡県直方市の公契約条例は工事だけでなく指定管理者の賃金にも適用しています。指定管理者となった法人で働く人の労働条件が公務として本当に守られているのかが問われています。労働法制の保護のもとにおかれない指定管理者の業務請負を根絶するため、改善が進まない指定管理者への業務委託を、直営で事業実施するように検討すべきと思うがどうか。答弁を求めます。

3つ目に介護などのケア労働者支援についてです。

 令和6年度から介護保険の報酬のマイナス改定が影響し、訪問介護事業者の倒産は全国で過去最高の174件、東京都が最多の22件となっています。マイナス改定に加え、コロナ禍に調達した借入金の返済が開始されたために資金繰りが悪化し、経営的体力のない小さな事業所の継続が危ぶまれます。

今後、ヘルパー自身の高齢化など、在宅介護を希望する高齢者に必要なサービスを提供できなくなる、そのために子が介護離職をせざるを得ないという、介護崩壊を生む可能性が大いにあります。区は在宅介護を宣伝していますが、介護を支えるケア労働者の質と量をどう担保するのか、答弁を求めます。

 介護関係9団体の調査によると正規の介護職員の賃上げは物価上昇率に届かず、春闘相場を大きく下回ります。続く物価高の中で、全産業平均より月額7万円も低い賃金が介護職の人材不足を加速させていることを直視し、区として対策を講じるべきです。流山市で行う独自の賃金補助を参考にして、区独自に介護職への直接の賃金補助を行うべきではないか。答弁を求めます。

4つ目に、シルバー人材センターで働くシニアへの支援です。

2025年の公的年金額の改定は物価上昇より0.8ポイント低い1.9%の増にとどまり、年金の実質削減が続く中で、シルバー人材センターからの収入が、低年金での暮らしの支えだと言う会員はたくさんいます。

インボイス制度が始まったために、センター会員がこの先の法改正や収入に対し不安をいだいています。シルバー人材センターへの発注金額は毎年の最低賃金を超え、インボイス制度による課税分以上に発注金額を設定するべきではないでしょうか。

さらにシルバー人材センターで働くシニアはフリーランス扱いをやめ、センターで直接雇用する労働者とすべきではないか、答弁を求めます。

第3に、大型開発計画の抜本的な見直しです。

 一つ目は、区役所庁舎移転計画についてです。

物価高の影響により資金計画が破たんし、各地の「再開発計画」は見直しが行われています。明らかに、再開発の潮目の変化が起きているのにもかかわらず、本区の立石駅北口再開発は、庁舎保留床にいくらかかるかわからない状態のまま、今年3月に、庁舎保留床の譲渡に関する協定の改定案を締結しようとしています。そして、それを前提に5月には再開発組合が、本体工事の入札を予定しています。

昨年、10月に240億円余とされていた庁舎保留床は、380億円と推計しましたが、その数字は青天井の勢いで膨らむ可能性があります。東棟を建築する特定業務代行者から提案された「特約案」は、再開発組合からさえも高いとまだ合意されていません。「庁舎保留床の譲渡に関する協定」の改定そのものが「どれだけ上昇するかわからない」価格で、区が購入することを約束させる、血税投入の仕掛けづくりになっています。

 民間事業者同士の「スライド制度」が、区の保留床購入に導入される合理性なく、「庁舎保留床の譲渡に関する協定」の改定に応じられる段階ではないと思うがどうか。

物価高騰で区民も区も困難な状況であり、今後の大規模開発計画全体のあり方が問われる局面にもかかわらず、青天井の税金投入になりかねない前提で、6号補正と来年度予算で大金を基金にため込もうとしています。

そもそも、再開発により保留床を取得して庁舎建設をするという手法をとったことが時勢に合わせて計画内容を再検討できない矛盾を生んでおり、突き進むだけの立石駅北口再開発事業を救済するものです。今必要なのは大胆な「見直し」に着手することだと思うがどうか。

 

2つ目に、東新小岩運動場のスタジアム構想です。

この運動場を都市計画公園として都市計画決定するための手続きを進めるために、今年、3月に、調査の概要の説明会が計画されています。しかし、その調査結果の概要は、都市計画公園としての「都市計画決定」という単純なものではなく、まさに、スタジアムをどう建設するかという「スタジアム先にありき」の構想です。しかも、来年度中に、都市計画決定まで進み、その後、事業認可へと進むスケジュールです。

 2024年の「子ども世論調査」で、増やしてほしい施設の第一位は、「公園」です。スタジアム建設は、区民合意の上に立ったものではなく、区長の号令で、関係部局が準備しているものにほかなりません。

公園PFI事業は、都市計画公園内50%以下とする建物面積制限を弱めるものであり、この事業でスタジアム化すれば、公園内の建物面積が緩和され都市計画公園の機能を損なうのではないでしょうか。

 このまま、国、都、財界関係者の言いなりで開発ベースのスタジアム建設となれば、区の財政的破たんを招きかねず、無責任な計画になることは断じて許されません。改めて都市計画公園としてどうあるべきか、区民全体へのアンケート調査や世論調査を行い、区民の意見を集約すべきと思うがどうか。答弁を求めます。

 最後に、安心と安全のインフラ整備についてです。

八潮市の道路陥没事故は、どこでもありうる大問題であり、事故後、様々な調査が行われています。昨年だけでも都内で350件の陥没事故が起きており、事件後も各地で道路の陥没が報道されています。

 今回、八潮市で起きた下水管と同レベル 晴天時一日30万トンで直径2メートルの下水管は、都内でも19キロあるといわれており、日常のインフラ整備を怠ってはならないことへの警鐘を鳴らす事件にもなっています。八潮市の陥没事故を教訓に、上下水道の配管や上部道路の調査や早期の補修を、東京都と連携して行うべきではないか、答弁を求めます。

 そもそも、上下水道は公共財であり商品ではありません。

しかし新自由化路線が進められてきた世界各地では、水道事業の民営化が進み、利益を出すために料金の大幅値上げを行い、当該地域住民に大打撃を与えているとレポートされています。

 上下水道事業は東京都の事業ですが、水道局の民営化が進み、料金未払い世帯へ血も涙もない断水に追い込むやり方に批判が上がっています。その一方で、お台場に世界一の噴水を建設する構想を小池知事が表明し、「水」の供給先が間違っているとの批判が上がっています。料金未払いの場合すぐに給水停止とせず、訪問や相談を行い、生活再建につながる人道的対応を行うべきと、東京都に進言すべきではないか、答弁を求めます。

集中した地域だけに建物も建設費も高くなる再開発よりも、どこでも安心して暮らせるインフラ整備を最優先にしたまちづくりこそ求められていると指摘をして、質問を終わります。

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