着衣泳と夏休みこそ学校プールを 三小田准一(令和4年11月29日本会議質問より)

学校プールについて質問します。

学校プールの廃止がいかに道理がないか、そのことは第3回定例会の教育長人事案に、与党議員を含む10名が反対したことに現れました。かつてない事態です。また、今年、教育施設のための基金500億円を他の基金と統合したことが、本来、教育施設に使われる予算を見えにくくし、プール廃止を加速させています。

学校外プール、特に民間プールを使った水泳授業は、企業が撤退すれば教育が止まる危険と隣り合わせです。

今年、西小菅小学校、東綾瀬小学校が利用した綾瀬駅前の民間施設は12月末で営業終了を発表ました。水泳授業を民間に委ね、そこが撤退した場合、義務教育が提供できない危険性について、教育長はどう考えているのか、伺います。

水泳授業は、海や川での水難事故から命を守る教育です。

その水難事故を想定した着衣泳について、学校外プールでは実施されませんでした。

着衣泳を実施するかしないかは各学校の判断とされていますが、世界的な気候危機による海水面の上昇、度重なる超大型台風と、東部低地帯で暮らす我々は水災害と隣り合わせです。津波・洪水・不慮の事故から命を守るための教育や実習に、真剣に取り組むべきです。

和光大学の制野俊弘准教授は、宮城県東松島市での中学校教師時代に、「進む」こと中心ではなく「呼吸」に中心をおいたドル平という泳法の指導に力を入れました。教え子の一人は東日本大震災の津波で川に流されましたが、ドル平で九死に一生を得ました。制野さんは「水泳の授業で自分の命を守る力を子どもたちにつけることは、公教育の最低限の使命」だと語っています。

国土の大半がデルタ地帯にあり雨季には何度も洪水に見舞われるバングラデシュでは、水の事故から子どもの命を守るために、2015年から水泳を必修化し、泳ぎ方と同時に救命術も教えています。2014年の韓国セウォル号事故や、2020年香川県与島沖フェリー沈没事故を見ても、水泳授業と着衣泳の重要性がわかります。

学校外プールで着衣泳の指導ができないのであれば、学校内のプールで実施すべきです。着衣泳の実施は、学校の判断ではなく、区教委の水泳教育として位置付け、命を守る力をつけさせるべきです。答弁を求めます。

学校外プールでは、夏季休業中の水泳指導も実施していません。

児童生徒一人ひとりの泳力の到達度は違います。それだけに夏季休業中の水泳指導は重要です。ところが、学校外プールでは夏季休業中の水泳指導をとりやめています。学校プールの廃止方針が夏季休業中の水泳指導をやらない理由になっています。

ある保護者は「学校にプールが無いせいか授業回数が少なく、長男も次男も泳げないままです。夏休みの水泳教室は少人数で教師が丁寧に教えてくれ、私はそこで泳げるようになった。民間の水泳教室はお金が高く負担できない家庭もある」と述べています。経済格差が命を守る教育の格差を生み出しています。

水泳指導の民間委託によって、夏季休業中の水泳指導が中止となる現実は、明らかに水泳指導の後退です。夏季休業中の水泳指導の公平性をどう保つのか、答弁を求めます。

学校プールの廃止方針は、教育予算の配分にも矛盾が生じています。

区教委は、学校プールは、建設費や維持費で1校当たり年平均770万円、民間プールは年507万円で安く済むと試算していましたが、想定以上の費用がかかりました。

学校外プールの利用で、教育効果を上げようとすれば費用がかさみ、費用を抑えようとすれば教育効果がしぼむという相反関係が浮き彫りになっています。

学校プールを廃止するために、前期実施計画にあわてて金町公園プールの改修を位置付けながら、突然撤回しました。いかに計画性のない思いつきだったかは明瞭です。

当初の計画では、金町公園プールの改修費用は9億円、あと1か所の新設で合計2か所で18億円でした。

区教委の方針では、学校内に屋内温水プールを作った場合、1か所6億円と試算しており、同じ18億円を使うのならば、工事が始まっている、あるいはこれから始まる、水元・道上・二上の3校に屋内温水プールを作った方が、子どもたちや区民から歓迎されます。

先月、中央区立城東小学校の学校内温水プールを視察ました。中央区では区立小学校4校を屋内温水プールにし、授業以外の時間は区民に開放しています。

学校内に屋内温水プールを作り、地元住民にも開放する方向に転換すべきと思うがどうか。

学校から移動を求められる水泳指導には、たくさんの問題があります。

水泳のある日は時間に追われ、朝の会や給食、昼休みの時間が削られ、前後の授業や子どもたちの集中力にも影響がでる。プールでは先生がすべての生徒を見ていられないので成績や細かな評価ができない。教室やプール、バスに置き去りが無いか、行き帰りの確認にも神経を使わなければならない。教師の負担軽減の名で水泳指導の民間委託をしても、学校外プールを利用することが、教師や子供たちに新たな負担を生んでいます。こうした負担をどう解消していくのか、答弁を求めます。

いくつかの学校で実施したアンケートは、区に好都合な回答を誘導するような内容になっており、意味がありません。

まずは今年12校で実施した結果の検証が必要です。それをせずに、実施校を拡大することはあってはなりません。検証し、その結果を公表すべきです。答弁を求めます。

学校プールに日よけを設けて全面的に暑さ対応をしている区は、23区中4区あります。現場を視察して本区も全面的に取り組むべきと思うがどうか。

学校プールの維持は、学校ではなく自治体、すなわち教育委員会が設置と施設管理に責任を持つのがルールです。学校プールの廃止という間違った判断をし、水泳指導の後退を学校の責任にすることは許されません。

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